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なぞりのつぼ −140字の小説集−

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読めば読むほど、どんどんツボにハマってく!? ナゾリの息抜き的140字小説を多数収録! ※全編フィクションです。 ※無断利用および転載は原則禁止です。
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#学校

140字小説【ハードでスウィートなパイセン】

140字小説【ハードでスウィートなパイセン】

「ナメてんじゃねえぞコラ!」
「叩き割ってやろうか!」

 そう言っていつも脅してくる、学校で一番怖い先輩。

 だけど先輩はこうも言ってくれた。「最後までかじりつけ。そうすりゃ見えてくるものもあるだろう」と。

 ありがとう先輩。確かに最後までかじりついたら、飴の中央からゼリーが出てきたよ。

140字小説【我が家の財宝】

140字小説【我が家の財宝】

 明日は学校に自分用の雑巾を持って行かなきゃいけないのに、ママときたら……

「何で名前を縫い付けたんだよ!?」
「失くしたら困るでしょう?」
「だからってハートまでいらないだろ!」
「可愛くていいじゃないの〜」

 恥ずかしい。けど捨ててもバレる。
 だから僕はマイ雑巾を庭に埋めることにした。

140字小説【人生の授業】

140字小説【人生の授業】

「では、授業を始めます。え〜、今日はこちらにお招きしたこの方に特別授業を行っていただきます」
「ヨロシク、オネガイ、シマス。ワタシは、1965年生まれ、中国の――」
「先生、今日は法人税についての授業じゃありませんでした?」
「ええ、ですのでこちらの《ホウ・ジンゼイ》さんについて――」

140字小説【御恩と●●】

140字小説【御恩と●●】

「では、授業を始めます。今日は鎌倉時代から……」
「(はいはい、源頼朝ね。御恩と奉公ね。そんなの塾で習い済みだっつーの)」
「頼朝が……」
「(ヤベェ、もよおした! マジで漏れそう!)」
「さて、この関係を《御恩と何》というか……君に答えてもらおうかな」
「ぼ、膀胱(ぼうこう)っ……!!」

140字小説【タトウ】

140字小説【タトウ】

「俺、ついにタトゥー入れたわ」
「お前マジか!? バレても知らねぇぞ!」
「大丈夫だって! すぐ消せるヤツだから」
「なるほどね。で、どこに入れてんの?」
「袖まくってみ?」
「ん? セルロース、グリコーゲン、アルギン酸……何これ、多糖(たとう)類?」
「これで今日のテスト乗り切ってやるわ」

140字小説【蛇足】

140字小説【蛇足】

「では、ことわざの問題だ。馬の耳に?」
「“か”ねんぶつ(可燃物)!」
「腐っても?」
「“か”たい(硬い)!」
「蛇に睨まれた?」
「蛇に睨まれた“ら”帰る!」
「……お前なぁ、さっきから一文字多いんだよ。わざとやってるのか? ふざけてないで真面目にやれ!」
「そういう先生は一言多いですね」

140字小説【(仮)病】

140字小説【(仮)病】

「ねぇママ、今日は学校休んでもいい?」
「どうしたの? どこか具合悪い?」
「うん……ちょっとお腹が痛いっていうか。あと頭も痛くて、熱もあるっぽくって……」
「わかった、じゃあお休みしましょう。何日くらい休む?」
「えっ?」

 ママは気づいてたんだ、ボクがもう学校に行きたくないってことに。

140字小説【頼れる先生】

140字小説【頼れる先生】

 ひとしきり家事を終え、夕方にのんびりとサスペンスドラマを見ていると、ここで一緒に見ていた小学生の我が子が……

「うわっ! コイツ、人を殺した! わ〜るいんだ〜わるいんだ! 先〜生に〜言ってやろ!」
「さすがに先生も荷が重いんじゃないかな」

 どうやら担任の先生は頼れる大人みたいです。

140字小説【ぜいぜい】

140字小説【ぜいぜい】

 ボクは走った。ぜいぜいと息を切らしながら。
 途中つまずいて転んでも、それでもボクは諦めずに走り続けた。
 そしたら最後には息ではなく、ちゃんとゴールテープを切ることができた。

「はい、ありがとう。実に良い作文だね。先生は君に《税についての作文》を宿題として出したつもりなんだけどね」

140字小説【私の頭の中の黒板消し】

140字小説【私の頭の中の黒板消し】

「そろそろ答え合わせするぞ〜。この問題は、さっきの公式を当てはめれば解けるな。答えは何だ?」
「290です」
「よし、正解だ。じゃあ次の問題を黒板に書く前に、この問題はもう消してもいいか? 消すぞ〜」
「待ってください! 今の問題の答え、何でしたっけ?」
「記憶まで消した覚えはないぞ〜」

140字小説【まさかりかついだ】

140字小説【まさかりかついだ】

「突然ですが、ウラシマ先生がお休みされることになりまして……すみませんが、代わりに授業をお願いできますか?」
「いやぁ、理科はちょっと……」
「大丈夫ですよ、教科書の通りに進めていただければ」
「でも――」

「――え〜、というわけで、まさか理科継いだキンタロウです。よろしくお願いします」

140字小説【よかれと思って】

140字小説【よかれと思って】

「カタカナの部分を漢字で答える問題だな。授業で教えたはずだが……それなのに何だこの答えは? “よ”って」
「分からなかったので、とりあえず埋めとこうと……」
「だとしても他にマシな答え方があっただろ! あとこれも何だ“れ”って!? せめて漢字で答えてくれよ!」
「“よ”か“れ”と思って」

140字小説【ぶしとり】

140字小説【ぶしとり】

「みんな夏休み何してた? ちなみに僕はカブトムシ捕まえたよ!」
「すごいね! 私はパパに頼んでトクガワイエヤス捕まえてもらったの!」
「ウチはトヨトミヒデヨシやで!」
「お前らショボいんだよ。俺なんか田舎の爺ちゃん家でオダノブナガ捕まえたぜ!」
「いつのまに《武士取り》が流行ってたの?」

140字小説【サムい解答、アツい採点】

140字小説【サムい解答、アツい採点】

 問、次のひらがなを漢字で答えよ。

 《せいこうとうてい》の気圧配置。

 この問題に俺は、遊び半分でわざと《成功童貞》と答えてやった。どうせ嫌いな教師の担当科目だし。
 すると後日、返却された答案用紙には案の定『✔』と、あと赤文字で『おめでとう!』と補足されていた。

 ……いい先生だな。