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なぞりのつぼ −140字の小説集−

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読めば読むほど、どんどんツボにハマってく!? ナゾリの息抜き的140字小説を多数収録! ※全編フィクションです。 ※無断利用および転載は原則禁止です。
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2022年12月の記事一覧

140字小説【ハードでスウィートなパイセン】

140字小説【ハードでスウィートなパイセン】

「ナメてんじゃねえぞコラ!」
「叩き割ってやろうか!」

 そう言っていつも脅してくる、学校で一番怖い先輩。

 だけど先輩はこうも言ってくれた。「最後までかじりつけ。そうすりゃ見えてくるものもあるだろう」と。

 ありがとう先輩。確かに最後までかじりついたら、飴の中央からゼリーが出てきたよ。

140字小説【カゴの中のトリ】

140字小説【カゴの中のトリ】

 ついに訪れた、脱獄決行の日。しかしあと一歩のところで看守たちに見つかり、塀まで追い込まれちまった。

「お前らは先に行け! 俺がオトリになる!」
「わかった! じゃあ俺たちは自由なトリになる!」
「えっ!? ちょっ……」

 こうして仲間たちは皆、何の躊躇もなく塀の外へと羽ばたいていった。

140字小説【月の陰に】

140字小説【月の陰に】

「うわ〜っ、見ろよ! 月が真っ赤!!」
「これがテレビで言ってた《惑星食》か……確か天王星まで隠れていて、地球上では今まで四千年以上なかったんだよね」
「スゴいよな、月が地球の影に隠れるだけでも相当レアなのに。どうせなら俺の赤点の答案用紙も隠してくれないかな」
「いずれ明るみに出るよ」

140字小説【歴史の1ページ】

140字小説【歴史の1ページ】

「よし、決めた! 俺、明日から動画配信者になるわ!」
「やめとけよ。どうせまた三日坊主で終わるに決まってるって」
「そんなのやってみなきゃわからないだろ! いいか、これが俺の新たな歴史の1ページだ!!」

 と、豪語していた彼だったが。結局長続きなどせず。
 彼の歴史は1ページで終わった。

140字小説【お熱】

140字小説【お熱】

「ごめん、今日は朝から熱があるみたいだから会えない」
「何を言ってるんだい、君はいつだって僕にお熱だろ?」
「そう思うなら、今すぐ会いに来てくれる?」
「もちろん! 冷めないうちに、君の熱を貰いにいくよ!」

 一週間後……

「ゴホッ、ゴホッ……ごめん、僕は君にお熱みたいだ……」
「あっそう」

140字小説【五味説教】

140字小説【五味説教】

「甘ったれたこと言ってんじゃないぞ、お前! いいか? 俺だってなぁ、本当はこんな苦々しいこと言いたくないんだ! それを何で日頃から口酸っぱく言ってやってると思う? どんなに給料が渋くて世知辛いからってな、雑に仕事していいって言い訳には――」
「課長、口の中は今《何味》なんですか?」

140字小説【ふぬけ】

140字小説【ふぬけ】

「はひへほ?」
「ん?」
「はひ、へほ?」
「何?」
「はひ! へほ!?」
「だから何? ハッキリ言ってくれなきゃ分かんない!」
「ゴメン、もういい」

 もう、何なのよさっきから。いくら夫婦だからって、何でも通じ合えるわけじゃないのに。
 大体、何で『ふ』だけ取って……

「……太ってないわよ!!」

140字小説【遠足会議】

140字小説【遠足会議】

「え〜、では来月の遠足についてですが……」
「OYT(おやつ)の上限は?」
「各家庭の所得を問わず一律三百円で検討中です」
「ではBNN(バナナ)のOYT加入の件は?」
「別途検討中です」
「しおりの電子化は?」
「そちらも検討中です」
「検討ばっかり。だからPTAから不信任案が出るんですよ」

140字小説【バカと天才は紙一重】

140字小説【バカと天才は紙一重】

「やった! ついに完成した!!」
「さっきから騒がしいね! 一体何してんのよ?」
「母さん、見てよこのミクロ光線銃! これで何でも小さくできるんだ!」
「みくろ? 何それ?」
「例えばこの0点の答案用紙も、ほら! 安全に証拠隠滅できるでしょ!」
「へぇ〜、アンタまた0点取ったのね」
「あっ」

140字小説【我が家の財宝】

140字小説【我が家の財宝】

 明日は学校に自分用の雑巾を持って行かなきゃいけないのに、ママときたら……

「何で名前を縫い付けたんだよ!?」
「失くしたら困るでしょう?」
「だからってハートまでいらないだろ!」
「可愛くていいじゃないの〜」

 恥ずかしい。けど捨ててもバレる。
 だから僕はマイ雑巾を庭に埋めることにした。

140字小説【食の細道】

140字小説【食の細道】

 ズルズルッ……ズズッ!

「美味しそうに食べるね」
「だってこの店のうどん美味しいから。一口食べる?」
「いや、いい。太いの苦手だから」

 ツルッ……ツルルッ……

「そのざる蕎麦、美味しい?」
「うん」

 ツルツル……チュルルッ……

「……何で一本ずつ食べるの?」
「食が細いから」
「細すぎない?」

140字小説【アバウトカレー】

140字小説【アバウトカレー】

「う〜ん、まだひと味足りない気がするなぁ……とりあえずコレも入れて……うわっ、余計変な味になった。じゃあコレも入れて中和して……あれ、今ので何種類入れたっけ? まぁいっか――」

「――というわけで、こちら当店自慢の《大体》百種類のスパイスを使用したカレーでございます」
「大体……?」

140字小説【解釈の不一致】

140字小説【解釈の不一致】

「ティッシュ一枚取って」

 そう頼んだのに、彼はなぜか一組のティッシュをわざわざ二枚に分け、その片割れを渡してきた。確かに『一枚』だけども。

「いっぱい食べていいよ」

 と、晩ごはんをを用意したら。彼はなぜか全てミキサーにかけ、ジョッキに注いで一気に飲み干した。確かに『一杯』だけども。

140字小説【許容範囲外】

140字小説【許容範囲外】

「こないだ米にシチューかけて食べてみたんだけどさ」
「ええっ!? 絶対合わないでしょ!」
「いや、これが意外と合うんだって! お前も一回試してみ?」
「いやいや、私は無理!」
「そう言わずにさ。美味いから!」
「これは『美味いか不味いか』の問題やない! 《許せるか許せないか》の問題や!!」