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小説:コトリの薬草珈琲店(完結)

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小説版<奈良の薬草と薬膳>の第一弾。植物の言葉が分かる主人公・琴音が、時間の荒波の中で見出した“幸せ”とは?奈良の小さな薬草珈琲店で描かれる現代ファンタジー。奈良・歴史・薬草・コ…
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#旅行

小説:コトリの薬草珈琲店 7-3

 薬草教室が終わって、生徒たちは帰り支度を進める。奈良市から来た歯医者の奥様・高橋さんは…

小説:コトリの薬草珈琲店 6-2

 凛と琴音は高校も大学も違う学校に進んだが(ちなみに、琴音は大学では生命科学を、凛はマー…

小説:コトリの薬草珈琲店 6-1

6章 もうひとりの母親 笠原凛は、幼い頃から自分の名前に囚われてきていた。「凛とした美し…

小説:コトリの薬草珈琲店 5-3

 川原君の自動車に乗って、目的地に最も近いコインパーキングまで移動。車を降りてから三人で…

小説:コトリの薬草珈琲店 5-2

 薬草好きで、かつ、奈良の歴史に興味ある人が集まった時に、よく話題に挙がるテーマがある。…

小説:コトリの薬草珈琲店 5-1

5章 施薬院談義 12月の日曜日、16時。デザイナーの川原君から、琴音のスマホにメッセー…

小説:コトリの薬草珈琲店 4-3

 17時、フェスが終了する頃には周囲も薄暗くなりはじめ、肌寒さが増してくる。さて、さっさと片づけて帰ろうと思っていたところ、数人の男性が集まって話をしているのが琴音の目に入った。クラフトビールのオーナー、ジビエ料理のオーナー、そして、県職員の岡本さんだ。同じ奈良県内で活動している人としてSNSではよく見かける顔だったが、リアルでも挨拶しておこう。そう、琴音は考えた。 「真奈美さん、ごめん、ちょっとあちらに挨拶してきます」 「ん?あの人たちね。了解〜。片づけ、進めとくね」 「

小説:コトリの薬草珈琲店 4-2

 開場早々、会場内の一番目立つ場所に設置されている有名シェフのブースには列ができ始めてい…

小説:コトリの薬草珈琲店 4-1

4章 奈良のうまいもの 朝の8時。一部の照明だけをつけた店内で琴音とバイトの佳奈の母、真…

小説:コトリの薬草珈琲店 3-3

 大和西大寺駅の商業施設は「ならファミリー」と呼ばれていて、近鉄百貨店・イオン・専門店街…

小説:コトリの薬草珈琲店 3-2

 四人は垂仁天皇陵から少し離れた場所にある小さな公園へと移動することにした。陵の近くには…

小説:コトリの薬草珈琲店 3-1

3章 田道間守の橘 11月の晴れた日曜日、昼過ぎ。いよいよ冬服が欲しくなるような肌寒い空…

小説:コトリの薬草珈琲店 2-3

 バイトの佳奈と佳奈ママが準備を進めておいてくれたお陰で、なんとか11時の開店に間に合っ…

小説:コトリの薬草珈琲店 2-2

 洞川温泉街(どろがわおんせんがい)は、大峰山をはじめとした山岳で修験者が修業を行うための入り口の宿場町として、1300年前から栄えていた。もっとも温泉が見つかったのは昭和の時代ではあるけれど、綺麗な水が湧き出る場所としても有名でその水は日本名水百選にも選ばれている。愛称は「ごろごろ水」だ。  木造二階建てのお宿が多く、夜には一階と二階に灯された明かりが狭い道の両側から漏れ出てきて、情緒豊かな温泉街の様相を醸し出す。随所に備わっている提灯も、その空気感によく馴染んでいる。夜