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展覧会レポ:ATELIER MUJI「良品には、わけがある。展-無印良品 徳永美由紀の仕事-」

【約2,900文字、写真約20枚】
無印良品銀座店ATELIER MUJIで開催された「良品には、わけがある。展-無印良品 徳永美由紀の仕事-」を鑑賞しました。その感想を書きます。

※この展覧会は既に終了しています。

結論から言うと、少し残念でした。会場には商品とコピーがただ置いてあるだけ。展覧会のアイデアは素晴らしいと思いましたが、実際の展示方法に芸がありませんでした。来場者は、コピーの裏側にある情緒的な部分を知りたかったと思います。

▼過去に訪れたATELIER MUJIの投稿

展覧会名:良品には、わけがある。展-無印良品 徳永美由紀の仕事-
場所:無印良品 銀座 6F ATELIER MUJI GINZA Gallery1
おすすめ度:★★☆☆☆
会話できる度:★★★★☆
混み具合:★★☆☆☆
会期:2024年2月2日(金)ー 3月25日(月)
休館日:無休
開館時間:11:00-21:00
住所:東京都中央区銀座3丁目3番5号
アクセス:銀座駅から徒歩約5分
入場料(一般):無料
展覧所要時間:20分〜30分
展覧撮影:全て撮影可
事前予約:不要
URL:https://atelier.muji.com/jp/exhibition/6384/


▶︎訪問のきっかけ

5階にある看板

無印良品のXで、展覧会について知りました。1)企業の「ライター」「コピー」全般に興味があった、2)無印良品の独特なコピーに興味があったため、私にとって、とてもツボな展覧会でした。

▶︎「良品には、わけがある。展-無印良品 徳永美由紀の仕事-」感想

フライヤー(コアラかわいい

それぞれ商品の「わけ」をキャッチコピーとして商品タグに込めています。本展では、長年にわたり無印良品のタグコピーに携わってきた徳永美由紀の仕事に焦点をあてます。彼女は2001年から良品計画社内にて商品開発の視点や工夫などを簡潔に伝えるための養成所、コピー工房を監修し、膨大な数の商品に対する途方もない量の仕事を一つの文化として育て、無印良品が発する言葉に対して力を尽くしてくれました。

公式サイトより
展覧会の名前もセンスが良い

どんな企業の広告にも「ライターさん」がいます。無印の場合、徳永美由紀(2023年2月没)がそれに当たります。彼女がコピーを書いたり、無印の社員が書いたコピーをチェックする仕事を担っていたようです。

50音順にコピーがたくさん並んでいます

私は「ライター」という仕事を尊敬しています。句読点を一つ付ける、付けない、言葉の順序を入れ替えるだけでも伝わり方はガラリと変わります。「本質」を理解し、読者を念頭に置きながら、すんなり頭に入る言葉で表現する。言葉は無限の可能性があるからこそ、力量が試されるお仕事です。

「安い、おいしいとうたうメーカーは多いけれども、なんで安いのか、なんでおいしいのかといったことの裏付けはないでしょう。私がきちんと書きたいのは、その裏付けの部分。それを書くには、オーバーな表現は不要で、正直でまっすぐな言葉だけでいい」

「くらし中心 特別号」より徳永美由紀の言葉

この展覧会の存在を知った時、とてもうまい企画だと思いました。無印のブランド理解も促進され、坪効率を下げても実施する意味のある展覧会だと感じたからです。

メインビジュアルに使われている「コアラパン」。
なぜこの商品なんだろう?

無印の商品タグには数行で45文字以内(文字切りを考慮するともっと少ない)のコピーが書かれています。無印といえば、この独特なコピーを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?ブランディング上も重要な要素になっており、私はその裏側を知りたいと思いました。

昔は格好いいと思っていた「壁掛式CDプレイヤー」

しかし、ウキウキして訪れてみると、実際は少し残念でした。そこには、コピーと商品を並べてあるだけ。あまりにも芸がなさすぎると思いました。ライターの方の紹介などは一切触れられていません。一部の展示を潰して、ライターの方を紹介するスペースも作れたと思います。

この辺の展示は潰して、ライターさんの紹介にしては?

無印のアパレル特別ラインである「MUJI labo」。そのデザイナーは、N. ハリウッドの尾花大輔が務めています。しかし、デザイナーの名前は戦略的に一切出てきません。今回の展示もそのような背景があるのでしょうか。

私は、徳永美由紀のバックグラウンド、コピーを書く時に気をつけていたこと、具体的な作成秘話、過去・現在の無印のコピーをつくる体制やプロセスなどを知りたかったです。

「パイン材ユニットシェルフ」は我が家で愛用しています

「ご好評につき配布終了」したため、会場には「くらし中心 特別号」が1冊、閲覧用として置かれていました。私はこれが一番読みたかったです。展覧会の展示とセットでこの冊子を読まないと、展示の意味はほぼゼロです。pdf形式でHPに掲載すべきではないでしょうか。

じっくり読みたかった「くらし中心 特別号」

「コピーは、商品の魅力を最大限に伝えることが目的で、言葉だけで飾り立てて実質以上に良く見せようとしても無理」

「くらし中心 特別号」より徳永美由紀さんの言葉

この展覧会は巡回するそうです(銀座以外の旗艦店でしょうか?)。その際は、今の展示物に加えて「くらし中心 特別号」の内容を盛り込んだパネルなどを設置すべきだと思います。

また、海外に654店舗(国内を上回る52.2%、2023年8月末時点)を運営する良品計画の、日本語のコピーだけでなく、コピーの英訳の裏側も紹介してくれると面白いと思いました。

近年、無印は創業当時のコンセプト「わけあって、安い。」から離れていると思います。コンセプトがブレると、商品やサービスがブレ、お客様は離れます。無印らしさの中で「独特なコピー」も重要な要素だと思います。今後、無印の業績が下がった時=コピーの力量が下がった時かもしれません。

同時開催の「ものたちの誰彼たそがれ展」

当日、「ものたちの誰彼たそがれ展」(2024年2月2日〜3月25日)も同時に開催されていました。

本展では、割れても、歪んでも、それでも残されてきたガラスのオブジェたちと、それを撮りつづけた泊昭雄さんの写真を通して、身近なこわれやすいものとのつきあい方を見つめ直します。(略)人も物も夕闇に溶けて、もうすぐ姿が見えなくなる寸前の世界。そんなものたちの晩年に目を凝らし、寄り添いたい。それは、無印良品が大事にしているものづくりの姿勢でもあります。

公式サイトより
展覧会の様子
ラムネの瓶?
一部は床にも設置しており、
買うこともできます
ホテルが大盛況でカフェエリアが増床していました

▶︎まとめ

いかがだったでしょうか?展覧会のアイデアはとても良いと思いました。しかし、実際の展示はモノをただ並べただけで、そこから得るものはほぼなかったため、残念でした。是非「くらし中心 特別号」をじっくり読んで、無印のコピーの裏側にあるものを知りたかったです。

▶︎今日の美術館飯

★3.3/瑠之亜珈琲 銀座インズ店 (東京都/銀座一丁目駅) - ハニートースト 〜バニラアイスのせ〜 (¥680)、チョコバナナのスムージー (¥850)

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