展覧会レポ:ATELIER MUJI「良品には、わけがある。展-無印良品 徳永美由紀の仕事-」
【約2,900文字、写真約20枚】
無印良品銀座店のATELIER MUJIで開催された「良品には、わけがある。展-無印良品 徳永美由紀の仕事-」を鑑賞しました。その感想を書きます。
※この展覧会は既に終了しています。
結論から言うと、少し残念でした。会場には商品とコピーがただ置いてあるだけ。展覧会のアイデアは素晴らしいと思いましたが、実際の展示方法に芸がありませんでした。来場者は、コピーの裏側にある情緒的な部分を知りたかったと思います。
▼過去に訪れたATELIER MUJIの投稿
▶︎訪問のきっかけ
無印良品のXで、展覧会について知りました。1)企業の「ライター」「コピー」全般に興味があった、2)無印良品の独特なコピーに興味があったため、私にとって、とてもツボな展覧会でした。
▶︎「良品には、わけがある。展-無印良品 徳永美由紀の仕事-」感想
どんな企業の広告にも「ライターさん」がいます。無印の場合、徳永美由紀(2023年2月没)がそれに当たります。彼女がコピーを書いたり、無印の社員が書いたコピーをチェックする仕事を担っていたようです。
私は「ライター」という仕事を尊敬しています。句読点を一つ付ける、付けない、言葉の順序を入れ替えるだけでも伝わり方はガラリと変わります。「本質」を理解し、読者を念頭に置きながら、すんなり頭に入る言葉で表現する。言葉は無限の可能性があるからこそ、力量が試されるお仕事です。
この展覧会の存在を知った時、とてもうまい企画だと思いました。無印のブランド理解も促進され、坪効率を下げても実施する意味のある展覧会だと感じたからです。
無印の商品タグには数行で45文字以内(文字切りを考慮するともっと少ない)のコピーが書かれています。無印といえば、この独特なコピーを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?ブランディング上も重要な要素になっており、私はその裏側を知りたいと思いました。
しかし、ウキウキして訪れてみると、実際は少し残念でした。そこには、コピーと商品を並べてあるだけ。あまりにも芸がなさすぎると思いました。ライターの方の紹介などは一切触れられていません。一部の展示を潰して、ライターの方を紹介するスペースも作れたと思います。
無印のアパレル特別ラインである「MUJI labo」。そのデザイナーは、N. ハリウッドの尾花大輔が務めています。しかし、デザイナーの名前は戦略的に一切出てきません。今回の展示もそのような背景があるのでしょうか。
私は、徳永美由紀のバックグラウンド、コピーを書く時に気をつけていたこと、具体的な作成秘話、過去・現在の無印のコピーをつくる体制やプロセスなどを知りたかったです。
「ご好評につき配布終了」したため、会場には「くらし中心 特別号」が1冊、閲覧用として置かれていました。私はこれが一番読みたかったです。展覧会の展示とセットでこの冊子を読まないと、展示の意味はほぼゼロです。pdf形式でHPに掲載すべきではないでしょうか。
この展覧会は巡回するそうです(銀座以外の旗艦店でしょうか?)。その際は、今の展示物に加えて「くらし中心 特別号」の内容を盛り込んだパネルなどを設置すべきだと思います。
また、海外に654店舗(国内を上回る52.2%、2023年8月末時点)を運営する良品計画の、日本語のコピーだけでなく、コピーの英訳の裏側も紹介してくれると面白いと思いました。
近年、無印は創業当時のコンセプト「わけあって、安い。」から離れていると思います。コンセプトがブレると、商品やサービスがブレ、お客様は離れます。無印らしさの中で「独特なコピー」も重要な要素だと思います。今後、無印の業績が下がった時=コピーの力量が下がった時かもしれません。
当日、「ものたちの誰彼展」(2024年2月2日〜3月25日)も同時に開催されていました。
▶︎まとめ
いかがだったでしょうか?展覧会のアイデアはとても良いと思いました。しかし、実際の展示はモノをただ並べただけで、そこから得るものはほぼなかったため、残念でした。是非「くらし中心 特別号」をじっくり読んで、無印のコピーの裏側にあるものを知りたかったです。
▶︎今日の美術館飯
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