【展覧会レポ】東京都写真美術館「アレック・ソス 部屋についての部屋」
【約2,900文字、写真約20枚】
東京都写真美術館(以下、TOP)で開催中の「アレック・ソス 部屋についての部屋」を鑑賞しました。その感想を書きます。
▶︎ 結論
アレック・ソスは、マグナム・フォトに所属する実力派のカメラマン。来場者は、若者、外国人も含めて多くいたことから、人気ぶりを再認識しました。アレックのオシャレ写真は、現代の私たちにも共感できる部分が大きいのではないでしょうか。普段の撮影にも参考になると思いました。
▶︎ 訪問のきっかけ
同日、TOP3階展示室で「現在地のまなざし 日本の新進作家」を鑑賞した後、2階でこの展覧会を鑑賞しました。
▼ 同日に訪問した、TOP3階展示室で開催中の展覧会
▶︎ アレック・ソスって誰?
「ドキュメンタリー写真の手法を継承しながらも独自の詩的な静謐さを湛える作品で、現代美術シーンにおいて高い評価されている」らしい(参照)。
TOPでは、マグナム・フォトに所属する写真家の展覧会を定期的に開催しています。私の中で「マグナム・フォト」といえば、ロバート・キャパ、アンリ・カルティエ=ブレッソン、エリオット・アーウィットが思い浮かびます。
また、直近では、ユニクロとマグナム・フォトが協業し、写真展を開催したことは、記憶に新しいです。
▼ ユニクロのPEACE FOR ALLに関する展覧会
▶︎ 「アレック・ソス 部屋についての部屋」感想
ソス曰く「ポートレイトや風景、静物などを定期的に撮影しているが、最も親しみを感じるのは室内の写真だ」とのことです。
室内での撮影は、本来の色味が出せないため、私は不得意です。一家言をもつ写真家は、一味違います。そのような技術的な問題では関係なく、ソスは部屋の中で撮影することにより、被写体の情緒的な一面を映し出そうとしたのでしょう。
全体を通して、とても「シュッとている(=洗練している)」印象を抱きました。それは主に、アメリカを含む海外を写しているからかもしれません。もし、日本でも同じ題材を撮ると「生活臭」が漂うのではないでしょうか。ソスが撮影した作品からは、なぜかそれを感じません。
食卓を写した写真からも、何だかオシャレ感が漂います。平行線は無視しているし、何人かの顔はブレている、一人だけ妙にカメラ目線のおっちゃんがいる。ソスの根っこ部分には、梅佳代的な精神があるのかもしれません。しかし、そんなソスの作品からはウィットさえ感じます。
一見して、普通過ぎる光景の作品です。しかし、私は上記の理由により、この食卓の作品が最も気に入りました。
作品の色味に関しても、とてもアメリカらしい、パキッとした色使いを感じます。こんなオシャレな窓辺、日本にある?
アメリカ人に、小津安二郎や植田正治のような感性がないことと同様に、作品に対する美意識には、宗教観や国民性が表れると思いました。
来場者数は、若い方、外国人も含めて、多かったです。来場者は、スマホでバンバン撮影していました。若い女性の二人組は「キレ〜、ステキ〜」と言いながら、ほぼ全ての作品をスマホに収めていました。
私も「普段の撮影に色々参考になるなぁ〜」と思いながら鑑賞していました。ソスのスナップのような、どことなく映える写真は、身近に感じられることに加え、今風で惹かれるものがあります。まさに美術手帖曰く「独自の詩的な静謐さ」に、来場者は魅了されるのでしょう。
なお、展示室内にベンチがないことが気になりました。TOPで行う展覧会はベンチがあったりなかったりしますが、必ず一脚は入れていただけると嬉しいです。ずっと立ちっぱなしで作品を鑑賞すると疲れることに加え、複数人で来ている場合、ゆっくりと感想を言い合うことができるためです。
展覧会をキュレーションする際のチェックリストに「ベンチを置く」を追加してはどうでしょうか。手話や英語キャプションなどの対応に加えて「ベンチを置く」ことも、重要なアクセシビリティの要素だと思います。
▶︎ まとめ
いかがだったでしょうか?マグナム・フォトに所属するアレック・ソスが30年かけて撮影した作品を、TOPがキュレーションした貴重な展覧会。日本人には見られない、ソスのパキッとした作風は、現代のSNSにおけるスナップ撮影でも参考になるかもしれません。来場者が多いことから、ソスの作品に対する人気と、作品への共感性の高さを再認識しました。