見出し画像

【展覧会レポ】東京都写真美術館「アレック・ソス 部屋についての部屋」

【約2,900文字、写真約20枚】
東京都写真美術館(以下、TOP)で開催中の「アレック・ソス 部屋についての部屋」を鑑賞しました。その感想を書きます。

▶︎ 結論

アレック・ソスは、マグナム・フォトに所属する実力派のカメラマン。来場者は、若者、外国人も含めて多くいたことから、人気ぶりを再認識しました。アレックのオシャレ写真は、現代の私たちにも共感できる部分が大きいのではないでしょうか。普段の撮影にも参考になると思いました。

おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★★☆☆
混み具合:★★★☆☆
展覧会名:アレック・ソス 部屋についての部屋
場所:東京都写真美術館 2F 展示室
会期:2024.10.10(木)—2025.1.19(日)
休館日:毎週月曜日
開館時間:10:00~18:00
住所:東京都目黒区三田1丁目13−3 恵比寿ガーデンプレイス内
アクセス:恵比寿駅から徒歩約10分
入場料(一般):800円
事前予約:ー
展覧所要時間:約30分
撮影:すべて可能
URL:https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4820.html 


▶︎ 訪問のきっかけ

TOP前の通路

同日、TOP3階展示室で「現在地のまなざし 日本の新進作家」を鑑賞した後、2階でこの展覧会を鑑賞しました。

▼ 同日に訪問した、TOP3階展示室で開催中の展覧会

▶︎ アレック・ソスって誰?

アレック・ソス(画像引用

アレック・ソス(1969-、アメリカ・ミネソタ州生まれ)は、国際的な写真家集団、マグナム・フォトの正会員であり、生まれ育ったアメリカ中西部などを題材とした、写真で物語を紡ぎだすような作品で、世界的に高い評価を受けてきました。

公式サイトより

「ドキュメンタリー写真の手法を継承しながらも独自の詩的な静謐さを湛える作品で、現代美術シーンにおいて高い評価されている」らしい(参照)。

"写真を撮るとき私が目指しているのは、その瞬間を生きること。ある意味では頭を空っぽにすることを求めているのかもしれません。頭を使うのは、シャッターを押す前後だけにするようにしています"

アレック・ソスの言葉

TOPでは、マグナム・フォトに所属する写真家の展覧会を定期的に開催しています。私の中で「マグナム・フォト」といえば、ロバート・キャパ、アンリ・カルティエ=ブレッソン、エリオット・アーウィットが思い浮かびます。

TOPの外壁(中央)にロバート・キャパの写真(2020年1月撮影)

また、直近では、ユニクロとマグナム・フォトが協業し、写真展を開催したことは、記憶に新しいです。

▼ ユニクロのPEACE FOR ALLに関する展覧会

▶︎ 「アレック・ソス 部屋についての部屋」感想

展示作品数は60点

選ばれた出品作品のほぼすべてが屋内で撮影されているように、「部屋」をテーマにこれまでのソスの作品を編み直す、当館独自の試みとなります。(略)ソスの作品に登場するさまざまな部屋や、その空間にたたずむ人々に意識を向けることで、果たして何が見えてくるのか。

公式サイトより
《Herman’s Bed, Kenner, Louisiana》
《New Orleans, Louisiana》《Crystal, Easter, New Orleans, Louisiana》
《Two Towels》

ソス曰く「ポートレイトや風景、静物などを定期的に撮影しているが、最も親しみを感じるのは室内の写真だ」とのことです。

室内での撮影は、本来の色味が出せないため、私は不得意です。一家言をもつ写真家は、一味違います。そのような技術的な問題では関係なく、ソスは部屋の中で撮影することにより、被写体の情緒的な一面を映し出そうとしたのでしょう。

《Tunnel 02》《Tunnel 03》《Tunnel 05》
《The Flechs》
室内の様子
《Untitled 05》《Untitled 07》

全体を通して、とても「シュッとている(=洗練している)」印象を抱きました。それは主に、アメリカを含む海外を写しているからかもしれません。もし、日本でも同じ題材を撮ると「生活臭」が漂うのではないでしょうか。ソスが撮影した作品からは、なぜかそれを感じません。

《Home Suite Home, Kissimmee, Florida》
《La Cuisine d’Azzedine Alaïa, Carla Sozzani & Azzedine Alaïa》

食卓を写した写真からも、何だかオシャレ感が漂います。平行線は無視しているし、何人かの顔はブレている、一人だけ妙にカメラ目線のおっちゃんがいる。ソスの根っこ部分には、梅佳代的な精神があるのかもしれません。しかし、そんなソスの作品からはウィットさえ感じます。

一見して、普通過ぎる光景の作品です。しかし、私は上記の理由により、この食卓の作品が最も気に入りました。

《Park Hyatt Hotel, Tokyo》
《Bellring Shojo Heart, Tokyo》《Park Hyatt Hotel, Tokyo (mirror)》
《Cammy’s View, Salt Lake City》

作品の色味に関しても、とてもアメリカらしい、パキッとした色使いを感じます。こんなオシャレな窓辺、日本にある?

アメリカ人に、小津安二郎や植田正治のような感性がないことと同様に、作品に対する美意識には、宗教観や国民性が表れると思いました。

《Sari, Tokyo》
《Irineu’s Library, Giurgiu, Romania》

来場者数は、若い方、外国人も含めて、多かったです。来場者は、スマホでバンバン撮影していました。若い女性の二人組は「キレ〜、ステキ〜」と言いながら、ほぼ全ての作品をスマホに収めていました。

私も「普段の撮影に色々参考になるなぁ〜」と思いながら鑑賞していました。ソスのスナップのような、どことなく映える写真は、身近に感じられることに加え、今風で惹かれるものがあります。まさに美術手帖曰く「独自の詩的な静謐さ」に、来場者は魅了されるのでしょう。

《Anna, Kentfield, California》
《Amalia》《Anatomy Figure》

なお、展示室内にベンチがないことが気になりました。TOPで行う展覧会はベンチがあったりなかったりしますが、必ず一脚は入れていただけると嬉しいです。ずっと立ちっぱなしで作品を鑑賞すると疲れることに加え、複数人で来ている場合、ゆっくりと感想を言い合うことができるためです。

展覧会をキュレーションする際のチェックリストに「ベンチを置く」を追加してはどうでしょうか。手話や英語キャプションなどの対応に加えて「ベンチを置く」ことも、重要なアクセシビリティの要素だと思います。

▶︎ まとめ

チケット

いかがだったでしょうか?マグナム・フォトに所属するアレック・ソスが30年かけて撮影した作品を、TOPがキュレーションした貴重な展覧会。日本人には見られない、ソスのパキッとした作風は、現代のSNSにおけるスナップ撮影でも参考になるかもしれません。来場者が多いことから、ソスの作品に対する人気と、作品への共感性の高さを再認識しました。



いいなと思ったら応援しよう!

Naota_t
Thank you for your support!