ぼんやりと 外を眺める 本のにおい 私が初めて本を読んだ、読了した、と感じたのは小学校の時に読んだ「くまの子ウーフ」です。 今でも覚えているのですのが、明るい小学校の図書室の低い本棚に並んでいたカラフルな背表紙を取って、中を見た時。 「文字が多い…読めるのかな」 まだ文字数の少ない絵本ばかり読んでいた私にとって、それは挑戦でした。 なぜ、読んでみようと思ったのだろう…。 今になって不思議になり、くまの子ウーフの表紙を見てみると、なんとなくわかる気がしました。 とぼけたよう
くちびるの ひびに潜む 我がこころ 寒くなってくるとリップクリームが欠かせない。 食事療法や、日々の生活習慣の改善のおかげで、冷え性はだいぶ改善されて、中学時代から悩まされた酷い生理痛や、季節の変わり目ごとにひく大風邪も引かなくなってきたのですが、乾燥肌だけは年々進行していっている模様。 毎日鏡にむかうたび、保湿しても保湿しても乾燥する肌に苦笑いなのですが、一番潤っていた十代に戻りたいとは思わない。 体はどんなに潤っていても、心はそうではなかった。 年齢を重ね、私という人間
かがやく額 向かい風すら 楽しげに ある風の強い日に、小学生がキャッチボールをしていました。 私から見えたのは女の子でした。 風に髪の毛は乱れて、投げるのもやっとな程の強風、女の子は何か大声で叫びながら投げていましたが、輝く笑顔でした。 「全然飛ばない!」 「場所代わってよぉ!」 そんな声が聞こえてきそうです。 それでも、そんな事すら楽しめる子供達は、本当に遊びのプロですよね。 私の小学生時代の遊びといえば、校庭に石で部屋の間取りを書き、その理想の家で家族ごっこをする事で
鹿なけば 落ち葉ふむ足 止めりけり 鹿の鳴き声を、近くで聞いたことがあります。 私は深い眠りについていました。 あれは真夜中だったのか夜明け頃だったのか、時間は定かではないのですが、けたたましい鳴き声で目を覚ましました。 まるで枕元で鳴いているかのような息づかいで、 私の体は一気にこわばりました。 ベッドサイドにある窓の外に、おそらく彼はいたのだと思います。 肺を思い切り絞り出すように鳴く音から、息を吸い込む際に出る喉をならす音まで、驚くほどクリアに聞き取れました。 彼は確
ぶどう棚 収穫あとの 静けさよ ぶどうの収穫のピーク時には、たくさんの農家の方でにぎわっていた棚も、今はひっそりと朝日をあびて静まり返っている。 ぶどう棚を見ると、私は小学生時代を思い出します。校庭の一角に、藤棚がありました。 そこは教員室に面していて、藤棚で遊んでいると、先生達の姿が窓ごしによく見えました。 ある時、私は数人の女友だちと、藤棚の支柱につかまりながら、一輪車に乗って遊んでいました。 その中の一人の女の子が、とても意地悪な子で、何やら良からぬ顔をしたかと思う
一葉の 語りし色の ものがたり 落ち葉の色が1枚1枚違う。 その時の気温、雨、風、光、気の流れ、様々な条件のもと、色づいたのだろう。 これと同じ事が私たちの中でも起こっているとしたら。 その時の感情や状況によって、少しずつ姿や、声色や、しぐさが変わっていくのだとしたら。 私が今まで生きてきた毎日の一つ一つに、私は育てられ、今に至るのだと。 当たり前なのですが、きれいな落ち葉をながめていると、そんな事を思いました。
ココナッオイ 発音よすぎて 意味汲めず わたしの勤めるお店には、海外の方がよく来られます。 先日、おそらくフィリピン系の方が来店され、何やらキョロキョロと探している様子。 私と目があい、流暢な日本語で、 「すみません。」と声をかけてこられました。 私はすっかり安心し(英語が聞き取れないのです…)明るく返事をしました。 「ココナッオイありますか?」 「???」 ココナッオイってなんだ!? 私は必死に頭を回転させました。 「エクスキューズミー?」 一応、英語でもう一度聞
雨雲よ 山に迫りて 影おとす これから天気が下り坂です。 山に雲がかかっていますが、まるで巨人が手をかけたように見える時があります。 もののけ姫の、デイダラボッチがいたらこんな感じなんだろうか。 さっきまで、暑いくらいだったのに、日がかげると一気に寒くなります。 これからは、雨が降るたびに季節が進み、どんどん寒くなっていきます。 こんな時は、ホクホクしたものが食べたい。 里芋、栗、むかご…。 ひっくるめて混ぜご飯かな。
秋晴れよ かわきし衣 はなくすぐりて 空気が乾燥し、洗濯物が気持ちよくかわきます。 日中の日差しは強いですが、風は優しく、過ごしやすいですね。 私の職場の常連さんが、くしゃみと鼻水が止まらなくなったそうで、相談にやってきました。 「アレルギーはないはずなのよ。」 熱はなく、喉も痛くない。くしゃみと鼻水だけなんだそう。 御本人はアレルギーはないとおっしゃられていましたが、アレルギーは突如として始まるものです。去年は大丈夫だったのに、今年からデビューと言う話はよく聞きます。
虚無の淵 立てど聞こえる ご飯だよ 何をするのも虚しく感じる時、みなさんはありますでしょうか。 ホルモンバランスの乱れ、季節の境目、年齢的なもの…原因なんてたくさんあります。 こんな時、私を虚無の淵から救い出してくれるのは、「ご飯だよぉ。」の声です。 小学校の時、父親と大喧嘩して、夕ご飯を食べそこね、一人でグズグズ泣いていると、頃合いを見て母が私に簡単なご飯をお盆に乗せて持ってきてくれました。この時食べたお味噌汁がなんと美味しかったことか。(たぶん泣きすぎて塩分を欲してい
縮まらぬ 距離もどかしき 今日の月 昨日はスーパームーンでした。 帰り道の車の中から見た月が、雲間から黄金色に妖しく光もれる様子で、思わず二度見してしまいました。(危ないですね) 一番大きく見えるのが8時26分頃という事でしたが、見上げた月は薄曇りに白くぼんやり光る様子で、車から見た月のほうが印象に強く残りました。 月が尋常でない色を持つ時、こちらも尋常でない気持ちになるのは不思議です。 一年で最も地球に近づいた月は、いつもより地球がよく見えたでしょうか。嬉しかったてしょう
朝靄に たわむれ飛び去る 雀かな 朝起きると、靄が立ち込めていました。 朝の冷え込みが強くなってきたからですね。 この靄を山の上や、標高の高い所から眺めると、雲海になります。 私の父がまだ独身の頃、休日に徹夜でどんちゃん騒ぎをした後、友人と一緒に雲海を見に行こうということになり、車に乗り込んで近くの山まで見に行った事があるそう。 気象予報など、何も確認せずに向かったので、本当に見えるのか確証はなく、ただその場のノリで行ったそうなんですが… 山頂に到着すると、見事な雲海が広が
かたくとも いつかは割れる 椿の実 椿の実が熟し、割れる時期となりました。 柘榴の木と、木蓮の木が切られてしまったアパートの敷地。椿は伐採を免れました。 これから割れるんだよなぁと、まじまじ見るのですが、とても割れそうにないくらい硬く閉じています。そう思っていても、気づけばパックリ割れて、種が落ちているのが毎年の事。 どうしても割れる瞬間を見てみたいのですが、定点カメラでも置かない限り、目撃するのは難しいですかね。 植物の根がアスファルトを持ち上げたり、フェンスを突き破った
待たないと 心に決めても 後の月 来ない返事を待つ時、何度携帯を見てはがっかりして、がっかりしている自分をまた自覚して、そして、落ち込む。 待たなきゃいいんだと、カップラーメンだって待つと長いけど、何かしながらだと、あっという間だ!と心に決めても待ってしまう。人間の心は本当に煩わしいですね。 後の月は旧暦9月13日の月の事です。別名十三夜です。名月の次に美しいと言われています。昔の人は、本当に月が好きなんだなぁと思います。月が出るのを、ゆっくりお酒でも飲みながら待っていた
言い方を 柔らかくしたとて 領収書 私がかつて働いていた職場に、かなり厄介なお客様がいらっしゃいました。 彼女はだいたい夜に来店し、外はもう暗いというのに仮面ライダーのような大きさのサングラスを着用して、耳にはイヤホンをしていました。 レジにカゴを置くなり 「領収書。」 と一言。これは沢尻エリカさんが言い放った「別に」と同じテンションで想像していただきたい。 「宛名はどうされますか?」 「……」 イヤホンで聞こえないのかな。 「宛名は無しでよろしいですか!?」 「……」
風は澄み 湿りて肥ゆる 山の土 山の中を散歩していると、この時期はキノコがたくさん生えています。 ホテイシメジ、じこぼう、アミタケ、クリタケ、などなど…私の住んでいる地域はカラマツや赤松がみられるので、その倒木した木からキノコがよく生えています。ただ、野生のキノコは見分けるのが難しく、私は一人でとりに行くことはなく、必ず近所の山の名人と取りに行っていました。(その方でも、かなり慎重に見分けられていました) 一度びっくりしたのが、「これ、どっちかなぁ…たぶん毒がある方だと思う