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NAK &ひーちゃん
2023年7月9日 01:02
こんばんは!光のひーちゃんだよ!連載小説『魂の織りなす旅路』にタイミングの話が出てくるけど、タイミングはとっても大切ですっ。でもね、無理して自分からタイミングを作ろうとしても絶対に上手く運ばないの。自分を取り巻くあらゆることが整ったときにタイミングは向こうからやってきます。そのタイミングは、自分にとってよい何かをもたらしてくれるものだから、波がきていると思ったら、躊躇
2023年7月3日 09:58
【失明⑷】 今、僕の目は僕に何も見せてはくれない。それでも不自由なく過ごせているのは、この訓練があったからだ。買い物は外出支援を受けているが、日課にしている散歩はいつも一人で行く。 相変わらず独り身の娘は、いつも2階で仕事をしている。僕に手が掛からなくなったので、仕事を増やしたらしい。体を壊さないか心配になるが、本人は楽しくてたまらないようだ。娘にはやりたいと思うことを存分にやってもらいたい
2023年7月7日 10:38
【暗闇⑴】 最近、暗闇と自分が同化しているような気分になることがある。この目はもう光すら感知できないのだ。昼も夜もなくなって時間の感覚が鈍くなり、体の境界線が薄ぼんやりとして、僕は空間と融和する。 「お父さん、私がお腹の中にいた頃のお母さんのこと、覚えてる?」 縁側でお茶をすすっていると、庭いじりをしている娘が話しかけてきた。 「ああ。いつも大きなお腹をそれは愛おしそうにさすってい
2023年7月10日 05:51
【暗闇⑵】 「冗談ではなくて、真面目な話?」 「そう。真面目な話。お母さんのお腹の中にいたときのことよ。私ね、お腹の中でよくお母さんとおしゃべりをしていたの。」 幼い子どもは胎内にいた頃のことを覚えているという。しかし、成長するにつれ忘れていくのではなかったか。もうすぐ40になろうという娘が、それを覚えているとでもいうのだろうか。 「耀(ひかり)はお腹の中のことを覚えているというこ
2023年7月14日 08:31
【暗闇⑶】 「はははっ、そうかぁ。不思議だよなぁ。お母さんは朗らかで清々しくて、とても魅力的な人だった。けれど、お父さんは寡黙というか、根暗というか・・・なぁ?」 娘のクックックッと肩を震わせるような笑い声が聞こえてくる。 「根暗ではないんじゃない? まぁ、寡黙かもしれないけれどねぇ。お母さんは差異が小さいお父さんと一緒にいるのが心地よかったのよ。」 僕は言葉を失った。確かに妻は僕
2023年7月17日 06:38
【暗闇⑷】 「お母さんは、お腹の子は絶対女の子だって、調べる前から言っていたんだよ。調べてもいないうちから、女の子用のベビー用品をどんどん揃えていくんだ。あまりにも確信に満ちているもんだから、お父さんには止めようがなかった。」 「うん。だってお母さんは本当に知っていたんだもの。当然よぅ。」 「お腹の中の耀(ひかり)が、私は女の子よって教えたのかい?」 「うーん。ちょっと違うなぁ。」
2023年7月21日 12:31
【暗闇⑸】 「あのね、変な宗教ではないからね。私が実際に感じているって話なんだから。そういう怪しいのと一緒にしないでよぅ。」 娘の声と水鉢の水の音が重なり合い、その向こう側から妻の声が聞こえてくる。 《魂だなんて変に思うでしょ。でもね、何かの宗教とかいうんじゃなくて、私はそう感じているって話なの。》 僕にどう話したらよいものかと不安げに口を尖らせているだろう娘に、僕は言った。
2023年7月24日 14:22
【目覚め⑴】 《目を開けて》 僕は閉じていた瞼をゆっくりと開く。眼下に見渡す限りどこまでも続く乾いた赤土と、葉もまばらな低木が点在する不毛の地が広がっている。あれからどれくらい経ったのだろう。ほんの一瞬前のようにも思えるし、何時間も前だったようにも思える。 僕は洞窟で目を閉じた。今はどこかの高台にいるようだ。遥か下方に360度見渡す限り不毛の地が広がっている。 なんだろう。何かがおか
2023年7月28日 07:01
【目覚め⑵】 《目を開けて》 ほどなく脳裏に柔らかな声が沁み渡った。僕は両腕を緩めると、その隙間から怖々と周囲をうかがう。足はもう宙には浮いていない。直径50センチほどの丸みを帯びた光が赤土の上に鎮座し、僕の目の前で大きくなったり小さくなったりしながらホワンホワンと光っている。これはさっき遥か彼方に見えた光だろうか。どうやら僕は瞬間移動したらしい。 《触れてごらん》 《触れてごらん
2023年7月31日 06:58
【境目に在る魂⑴】 「気づいたかや。」 男は皮袋の水筒を差し出しながら、赤土の上に横たわる僕に向かって言った。 「思い出したんやねぇ。あっちのことを。」 僕は起き上がりながら皮袋の水筒を受け取り、ぐいと勢いよく水を飲んだ。 「でも、僕にはわからないんだ。どうやら僕は、あちらとこちらの両方にいるようだ。同時にね。」 「そうやねぇ。そういうもんやねぇ。」 男がさも当たり前の