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連載小説 魂の織りなす旅路#48/暗闇⑵

光たちからのメッセージ小説。魂とは?時間とは?自分とは?人生におけるタイミングや波、脳と魂の差異。月曜日と金曜日に更新。

【暗闇⑵】

 「冗談ではなくて、真面目な話?」

 「そう。真面目な話。お母さんのお腹の中にいたときのことよ。私ね、お腹の中でよくお母さんとおしゃべりをしていたの。」

 幼い子どもは胎内にいた頃のことを覚えているという。しかし、成長するにつれ忘れていくのではなかったか。もうすぐ40になろうという娘が、それを覚えているとでもいうのだろうか。

 「耀(ひかり)はお腹の中のことを覚えているということかい?」

 「そう。はっきりくっきり覚えているの。」

 「初めて聞くなぁ。そんなことを覚えていれば、子どもなら話しそうなもんだが。子どもの頃の耀は、お父さんにそんな話はしなかったぞ。」

 「話すタイミングじゃなかったのよ。物事にはね、何にでもタイミングというものがあるの。子どもの頃はほんと、言いたくて仕方がなかったんだから。頑張って我慢していたのよぅ。」

 娘の口を尖らせたような声の響きに、僕は苦笑いしながら言う。

 「よく我慢したもんだ。」

 娘は昔から、少し変わったところのある子だった。大人が驚くような含蓄のある言葉を口にし、思索に富んだ深い眼差しをたびたび見せた。精神世界と向き合っているようなところがあったので、新興宗教に出会ったらのめり込んでしまうのではないかと心配になるほどだった。
 しかし、娘は新興宗教に夢中になることも、現実から目を背けることもなく、自分に合う仕事を見つけ自立した。人間が持つ、社会が持つ不条理さや理不尽さ、複雑さを人一倍感じて、人一倍考える子だった。よく社会に適応できたものだと思う。

 「本当に、覚えているんだね?」

 「そうよ。本当のこと。私、嘘つかないでしょ。嘘なんてつけない性格なんだから、本当のことよ。」

 確かに娘は嘘が苦手だ。嘘というごまかしが娘には耐えられないのだろうと思う。多少でも嘘をつけたならもっと楽に生きていけるだろうに、不器用というか、生真面目というか、頑固というか。しかし、僕は娘のそんな気質を愛している。

 「お母さん、お父さんのことが好きで好きでたまらないのよって、いつも言ってた。」


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