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【料理エッセイ】今年もアンドレさんと梅祭りに行って、ゴッホにとっての青色だったり、三島由紀夫の死から小泉今日子デビューまで12年しか間がないことだったり、あれこれと話したよ。家に帰ってからは梅ソースを使っていろいろ作ったよ。

 今年もペペ・アンドレさんと梅ヶ丘で梅を見てきた。

 アンドレさんは元祖日の丸軒という中級ユーラシア料理店のマスターで、去年に引き続き、梅祭りに行ってきた。

 飛梅が相変わらず綺麗で、みんな、写真を撮っていた。菅原道真の飛梅伝説の「飛梅」である。本来は太宰府名物なんだけど、梅ヶ丘という地名にちなんで寄贈されたもの。もちろん、わたしも写真を撮った。

 その後は茶室を見てみた。公開目的の撮影禁止と書いてあった。茶室そのものは予約利用者がいるので見れなかったが、フロントの応接セットは休憩所として解放されていたのでのんびり座ることにした。

 天井にぶら下がっている照明がイサム・ノグチのデザインだねって話になった。そこから日本と西洋の美術の違いについて展開していき、わたしはちょうど最近読んでいた『なんで人は青を作ったの?―青色の歴史を探る旅』について紹介した。

 すると、アンドレさんが西洋にとって青色は聖母マリアの色だから重要なんだよってことを教えてくれた。ゴッホはひまわりが有名だけど、補色という意味でも対比となるようにアイリスの絵をよく描いた。あれは一見すると単なる花だけど、宗教的な思いが込められているとのことだった。

 キリスト教における色彩の関係をわたしは知らなかったので、とても興味深かった。そういうコードを共有できるようになれば、いわゆる静物画も動きを伴って感じられるようになるのかもしれない。絵を鑑賞するとは綺麗とか、上手いとか、素朴な楽しみもある一方で、その画家が生きた文化圏に基づくメッセージを読み解く魅力もあるのだろう。

 落ち着き次第、屋台が出ている場所へ向かった。りんごが安く売られることで有名なのだけど、朝、すぐに売り切れてしまったらしい。

 ただ、ありがたいことにアンドレさんが早起きして、わたしの分を買っておいてくれたとのこと。すごく嬉しい。他には就労継続支援B型事業所のお店でアップルパイを買った。また、去年、美味しかったしそねり梅も購入した。

 お昼はアンドレさんの家でご馳走になった。肉まんを蒸してくれた。熱々で最高だった。

 ほふほふしながら、日本近代文学館でやっている三島由紀夫展に行ってきたという話を聞いた。アンドレさんの世代にとって三島由紀夫は青春で、その衝撃は未だに忘れ難いとのことだった。

 三島由紀夫が市ヶ谷の陸上自衛隊東部方面総監部で割腹自殺をしたのは1970年のこと。それから12年後、1982年に小泉今日子がデビューしていることを考えると、あの12年で日本は劇的に変化したと懐かしんでいた。青春の色彩がまるで映画『オズの魔法使い』さながら白黒がカラーに飲み込まれるような衝撃があったに違いない。

 いま、この12年間を振り返り、そんな劇的なことがあるだろうか? もちろん、様々なことがあったにはあった。アベノミクスが始まり、東京オリンピックが決まり、コロナ禍が発生。東京オリンピックは延期となり、電通の不正が発覚。安倍元首相は凶弾に倒れ、ジャニー喜多川は「人類史上、最も愚かな事件」を起こした人物となり、自民党清和会は解体。フジテレビも終わろうとしている。劇的過ぎるほど劇的だ。

 それでも魔法がかけられたような華やかさはどこにもない。坂を登っていくような高揚感はどこへやら。むしろ、下り坂を制御の効かぬまま滑り落ちていくような途方もなさに満ちている。ここまで来たら落ちるところまで落ちてしまえと坂口安吾の声が聞こえる。

 帰り際、アンドレさんの新作を見せてもらった。谷中、浅草、増上寺の風景。東京の名所を自分なりの視点で切り取っているらしく、どれも可愛らしくてクセになる。一通り揃ったら個展を開きたいとのことだったので楽しみだ。

 帰宅後、夕飯に梅祭りで買った梅ソースを使うことにした。卵焼きや焼鳥を作って、味付けに使った。串打ちは面倒くさいけれど、やっぱり、焼鳥は串に刺さっていなきゃ雰囲気が出ない。

 〆にはおにぎり。梅と言ったらおにぎりだよね、なんてたって。

 とってもいい日だった。




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