多くの人たちに読んでもらいたい一冊。
2020年 入江杏
柳田邦男 若松英輔 星野智幸 東畑開人 平野啓一郎 島薗進
入江杏さんは、「世田谷事件」で妹一家四人を喪った。そして、「悲しみ」について思いを馳せる会「ミシュカの森」を開催するようになった。本書は、そこに参加した6人の講演や寄稿を収録したものである。
はじめに、入江さんだったと思うが、「悲しみの共通の水脈の広がりに気付かされた瞬間、悲しみは生きる力に向かっていったように思う。」と言っていた。人生に悲しみはつきものだ。この不条理の世界で。たぶん人は皆、悲しみから逃れられない。皆悲しいんだ。だからこそ、「ゆるやかにつながり合うこと」「悲嘆を共に分かち合うこと」が大切なんだろう。辛さを分け、心を癒し、そして生きる力に変わる。希望への道。
悲しみと真剣に向き合ってきた経験から語られる7人の言葉は、どれも寛容で、広く優しく包み込んでくれるようだ。学びは多い。特に、柳田邦男さんの二・五人称視点、平野啓一郎さんの準当事者、また「分人」の考え方が新鮮で、人としての器を、視野を、広げてくれる。とは言っても、簡単ではないな。少しづつでも、こういう意識をもって、社会の悲しみと向き合う。多くの人がそうなれば、社会は変わる、か? 悲しみのシェア!
第1章 柳田邦男(ノンフィクション作家)
「「ゆるやかなつながり」が生き直す力を与える」
第2章 若松英輔(批評家)
「光は、ときに悲しみを伴う」
第3章 星野智幸(小説家)
「沈黙を強いるメカニズムに抗して」
第4章 東畑開人(臨床心理学者)
「限りなく透明に近い居場所」
第5章 平野啓一郎(小説家)
「悲しみとともにどう生きるか」
第6章 島薗進(宗教学者)
「悲しみをともに分かち合う」
グリーフケア、griefは深い悲しみや悲嘆。相手に寄り添う姿勢が大切。
グリーフワーク、悲嘆を癒やす営み。
また読み直したい。
本書の皆それぞれの本にも触れてみたい。
素晴らしい読書体験でした!
(^^)/