アイカワタケシ 虫けら艦隊【補完版】

絶望や虚無、死神にすら見放された、虫けら以下の薬物中毒記を書き殴った自伝小説『虫けら艦隊』の発刊から25年 現在の視点からあの頃の自分にケリをつけるべく再びペンを握ったアイカワタケシのラストラウンド Reboot版ガレージ小説の書き下ろし連載がついに始動 (artアイカワタケシ)

アイカワタケシ 虫けら艦隊【補完版】

絶望や虚無、死神にすら見放された、虫けら以下の薬物中毒記を書き殴った自伝小説『虫けら艦隊』の発刊から25年 現在の視点からあの頃の自分にケリをつけるべく再びペンを握ったアイカワタケシのラストラウンド Reboot版ガレージ小説の書き下ろし連載がついに始動 (artアイカワタケシ)

最近の記事

虫けら映画評03 『甘い汗』(1964年)

虫けら映画評03 『甘い汗』(1964年) 生活ゴミや廃材の山に堰き止められたドブ川にぷくぷく泡立つメタンガスを銀色に捉えた映像が美しく、そのドブ川を潰してショッピングセンターを作ろうという都市計画のために立ち退きを迫られている一杯飲み屋がある。 そんな戦後でも高度成長期でもない時代の谷間に落ち込んでしまい、もがき格闘する女の物語。 劇中「36にもなってこの界隈でうろちょろしているんじゃあんたもおしまいね」 というような台詞があるが、現代語訳するなら 「46歳にもなって大久

    • 虫けら映画評02 『ゴジラ-1.0』

      虫けら映画評02 『ゴジラ-1.0』 頭を丸める覚悟もない特攻隊員の神木隆之介が七三分けで仲間を見殺しにした自責の念からか失った男性機能をゴジラをやっつけることで取り戻して不死身のナチュラルメイク♡浜辺美波とめでたく結ばれるまで。 ゴジラは遂にバイアグラの役割を演ずるハメに。 博士役の吉岡秀隆は完全にコントでジェットジャガーも飛んで逃げるだろうし、佐々木蔵之介の醜悪さにはヘドラも降参だ。 #ゴジラ #マイゴジ #アカデミー視覚効果賞 #山崎貴 #神木隆之介 #浜辺美波 #吉

      • 虫けら映画評01『PERFECT DAYS』

        虫けら映画評01『PERFECT DAYS』一文字の大きさ  臭い、汚い、といった台詞や描写は入念に排除されている。 ただ一箇所だけ、役所広司扮するトイレ清掃員の男と一緒にいた幼い我が子を見つけた若い母親が、息子の掌を除菌ティッシュで拭く場面にのみ、ある種の抵抗感が表現されている。 ヴィム•ヴェンダースが監督した本作に登場する公衆便所の中には例えばスタンリー•キューブリックの近未来SF映画に出てきそうな、おしゃれにデザインされたハイテク仕様のものまであるので少し驚いた。 俺が

        • EPilogue壁/逆騒69

          EPilogue壁/逆騒69 壁はすべての希望を打ち砕くほど高く、途切れることなく絶望的なほど堅牢に作られている。 その遥か天辺の有刺鉄線越しに、故郷で目にするものとは明らかに異なる光の激しさを持つ青空がどこまでも広がっているのが見える。 有刺鉄線にはビニール袋や衣類の切れ端や、女の長い髪の毛なんかが引っ掛かっており、時折、風になびいて揺れる。 空気は常に汚くて、それは砂埃や火薬や腐り始めた血肉の臭いを含んでいるからだ。 逆光の中シルエットになった無人偵察機の翼が眩しく煌めく

          LAST EP Goo GN

          LAST EP Goo GN 2010年9月11日(金) 「じゃあね」と妻、ではなく元妻が、地下鉄の改札口から吐き出される乗客たちの流れに半ば飲み込まれてゆきながら、少し硬った声で言う。 俺は目も合わせず無言でうなづくと、もう背を向けて、二度と振り返らないという強い信念だけを頼りに足早に歩き出す。 ガードレールもない歩道のすぐ脇を、唸りをあげて走り過ぎてゆく産業廃棄物を満載した大型トラックが巻きあげるガス臭い熱風に煽られながら、街灯もない夜道を黙々と進む。 分厚い雲に覆われど

          EP21 怪猫素股Mix−夏

          EP21 怪猫素股Mix-夏 この掛け軸が怖い、と土星座生まれの女がいやらしく開いた両足の指先を依然反り返らせたまま、乱れた浴衣を直そうともせずちょうど枕元の先にある床の間に視線をちらと走らせながら、藪から棒に言う。 女の膣圧により押し戻された精液の塊が糸を引きながら滴り落ちて、真新しく糊の利いたシーツに濃い染みを作ってゆく。 以前は連れ込み宿だったに違いない古い民宿の、雑草が生い茂る石積みの崖に面した畳敷きの部屋で、赤い裸電球の灯りに誘われ蛾が何匹も群がり網戸に鱗粉を振り撒

          EP20 ジャミラは首吊り自殺ができない

          EP20ジャミラは首吊り自殺ができない シャンパンタワーの滝壺に溺れ 札束でケツを叩かれ尻尾振り 無価値なパンチラお勃ち台 『別の惑星での出来事』 地球最後のカリ首族の女がさも愛おしそうに我慢汁が溢れ始めた俺のペニスを握り絞め、さすが毎日オナニーしているだけあって、あんたのカリ首しっかり張っているわ、私の中で引っ掛かるからすごく気持ちがいいの、と褒めているのか馬鹿にしているのか不明なことを言う。 続けて女はこう愚痴をこぼす。 あんたと別れてから交際し始めた歳下の彼氏が長さは人

          EP20 ジャミラは首吊り自殺ができない

          EP19 YSKpm10

          EP19 YSKpm10 俺の恥骨を齧るな胎児。 重油を積んだ担架の心臓部と似た形をしたジュークボックスが苦渋に満ちた男の泥を吐くような嘆きで店内をどす黒く染め。 俺はひとり、結局は愛と平和と戦争とSEXがすべてだと主張している落書きで一面賑やかに埋め尽くされている壁に凭れ、これで何杯目かの南部の癒しの69を飲み煙草を吸っている。 ビキニを脱ぎ捨て夜の海綿体を泳ぐ女を狙って勃起した男根と人喰い鮫を合体させた感じのイラストの竿の部分には、U.S.NAVYと誇らしげに刻まれており

          EP18 じゃ銃か?

          EP18 じゃ銃か? 犬の小便みたいな雨が短く降った後に顔を出した太陽の強い日差しに照らせ不快な暑さの中、日焼けした古い物件情報が張られたガラス扉を開けると風鈴の音が耳障りに響く。 2年前、契約更新に来て以来だろう。 東京大空襲で焼け落ちた民家の下敷きになり片脚を切断したという店の親爺はアロハシャツに松葉杖で、深く皺の刻まれた顔を上げると人を値踏みするような目つきで髪を長く伸ばした俺を覗き込むように見、おや随分と絵描きさんらしくなったじゃないか、そう皮肉ともお世辞ともつかない

          EP17 無駄な愛

          EP17 無駄な愛 気がつくと俺は、駅のホームのベンチで長々と横たわり、一晩寝明かしてしまったらしい。 脳内麻薬強制分泌の重低音テクノの絨毯爆撃で踊り続け、今も消化しきれていない酒とコデインの影響が残る目にせわしなく乗り降りする通勤通学客たちの、足元が映り、それが何の変哲もない朝の日常という俺とはまったく無縁の恐ろしい現実の塊となって襲いかかってきて、思わず飛び起きた。 何百と交錯する靴音に混じって、列車の発着音と構内アナウンスがやかましく繰り返されている。 毎日決まって行く

          EP16 BAR天国

          EP16 BAR天国 んな場所はない。 金のために踊れ。 俺はあんたの昔の女だよが出て行った際に、実家にもっといいのがあるからと言って残していったベッドに寝転び受話器を耳にあて、あなたって悪魔よね(以下、たって魔んなと略す)の声を聞いている。 先日たまたま高級スーパー正常位Cでいかにもあなた好みの珍しいモルジブ産濁り酒を見つけたので冷蔵庫で冷やしてあるわ、あとこれは既に何度も伝えてあることだけど、とたって魔んなはここで少し間を置くと、電話回線が火花を散らしてショートするくらい

          EP15 頭蓋骨とおしゃべり

          EP15 頭蓋骨とおしゃべり 野鼠が巣篭もり。 真夜中過ぎに。 舞っ。 その後、あなたって悪魔よねからは何の音沙汰もなく、チタン貫通ドーヌデルモの連絡先など最初から知らず。 俺はひとり孤独にゲリラの迫撃砲に直撃された塹壕のように荒れ果てた部屋で、寝ても覚めても絵と格闘する日々を送っていた。 絵筆を手に真っ白なキャンバスを前にすると、まるで両手両足を縛られ自殺岬の突端に立たされたような気分に襲われた。 思い描いたとおりに完璧な1本の線を引く、それがどれだけ困難なことであるか。

          EP14 StayHungry(PART.2)

          続EP14 StayHungry(Part2) 何度かこの3人で雑魚寝したことがある。 つまり俺と、俺のことを評して悪魔だと言った女友達と、彼女の親友だというチタン貫通ドーヌデルモのトイバをしている女の子とで。 1度目はあなたって悪魔よねの部屋で。 狭い玄関を上がると電子キーボード。 洗濯籠の中には意外と大人びた趣味の蜜の光沢を放つ絹のTバック下着。 俺は見逃さない。 しばらくするとチタン貫通ドーヌデルモが喘息の発作を起こして激しく咳き込み始め、何処かへ姿を消して、俺も目が

          EP14 StayHungry(PART.1)

          EP14 StayHungry(Part1) 過去に俺のことを評して悪魔だと言った女友達がいる。 あなたって悪魔よね。  ちょっと魅力的な女の子にふとそんなことを言われてしまったら、男なら誰だって心くすぐられてしまうに決まっている。 あなたって悪魔よね。 マスカラ濃いめの上目遣い。 ニッと口角を上げ、真っ赤な唇を脱糞寸前の充血肛門みたいに窄めてキュッと尖らせて。 その仕草が魅力的かどうかにチカチカ疑問符が点滅したってさ、溢れ出る色気さえあれば、いくらでも誤魔化せるという確信

          EP13 ウォッチヒルズ

          EP13 ウォッチヒルズ はらりと落ちてくる。 東京で見るよりずっと大ぶりのカラスの羽が。 まるで女の長い髪が頬を撫でるように、美しく紫色に艶めきながら。 死んだはずの父親が俺に詰問する。 毎回お前が大事なときこそ遅刻するのは周囲の注目を一身に集めたいからか、いい加減にしろよ。 これは実際には祖母が亡くなったときに、通夜の席で言われたことだ。 中で出していいよ♡の彼女が今日はお尻に入れて♡♡と尻尾を振る子猫のように、身をしならせ求めてくるので尻に入れてやる。 やがて尻に入れた

          EP12 尻削り坂

          EP12 尻削り坂 心臓の鼓動が逆回転でクドクド脈打っている。 坂を下る時には尻が削れるほど勾配が急過ぎて、その名がついた坂を登っている途中でふと思い出す。 これといって運動に縁ががない10代後半の肉がつき過ぎている尻で便座に散らばっていたガラスの破片の粒を押し潰して小便してしまったために、アラスカみたいに広大な肉の大地の何箇所かに薄ら血が滲んで光っている。 分厚い脂肪の層で堰き止められた10代の痛みを代わりに受けとめながら、俺はその尾骶骨にほとんど焼け糞気味に亀頭を激しく擦