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EP12 尻削り坂

EP12 尻削り坂
心臓の鼓動が逆回転でクドクド脈打っている。
坂を下る時には尻が削れるほど勾配が急過ぎて、その名がついた坂を登っている途中でふと思い出す。
これといって運動に縁ががない10代後半の肉がつき過ぎている尻で便座に散らばっていたガラスの破片の粒を押し潰して小便してしまったために、アラスカみたいに広大な肉の大地の何箇所かに薄ら血が滲んで光っている。
分厚い脂肪の層で堰き止められた10代の痛みを代わりに受けとめながら、俺はその尾骶骨にほとんど焼け糞気味に亀頭を激しく擦りつけ、咳止め薬の匂いがする精液がたるんだ割れ目に虚しく流れ落ちてゆく。
まだ高校生で通じる幼い大学一年生は、俺の個展や友人たちとDJチームを組んで主催していたクラブイベントなどにも欠かさず通ってくるようになり、その熱心な姿勢から、密かに仲間内でグルーピーと呼ばれてい。
そのことを思い出し。
まだ終電も残っている時間帯だし帰れ?
そう言われ傷ついた様子のグルーピーを構わず追い帰し、咳止め薬のシロップを追加で一本飲み干して途中になっていた本のページをベッドに寝転んで。
共産主義ゲリラの奇襲攻撃に遭い東南アジアの孤島に墜落した人工知能搭載型軍事ヘリコプターを先祖代々神と崇める地球最後の人喰い族の末裔たる子供たちが、武装蜂起して日本の原子力発電所を制圧して総理大臣夫人を串刺し集団レ。
したりする、近未来歴史教養小説で。
子供たちは猫とも猿ともつかない動物の皮を剥いで縫い合わせた仮面を被っており、敵対する部族の人骨や仕留めた猛獣の牙を削り出して作った見事な装飾品で目蓋や小鼻や耳や唇や顎、顔じゅう穴を開けて突き刺し着飾っており、その両手には戦闘体制に入ると瞬時に鋼鉄の鉤爪が鋭く飛び出す肉球のついた義手を。
口紅がついたシケモク咥え。
慣れない喪服を着た俺は土と草と生活排水の匂いがする目の粗いコンクリート壁の崖下で。
季節外れの強い紫外線を避けながら。
歪んで錆びついたガードレールに片手を突いて一息入れ。
心地よい潮風も高台のここまではさすがに届かない。
いつも鍵をかけないことにしている玄関の戸が開く音がして、亀頭の先が乾く間もなく今度は球体関節人形を作るのが趣味でカフェイン中毒の彼女。
誰か来てた? いま階段で若い女の子とすれ違ったけど。
俺は飲み残しの缶ビールに。
火の消える音が短くじゅっと。
尻削り坂の十二指腸潰瘍のように厄介なカープの最終コーナーで。
その名も「はだかの鼠」という名の遺伝子組み換え専門の駄菓子屋を兼ねた古書店があっ。
10代の性的衝動的環境侵略SF映画の電子楽器を駆使した映画音楽のアナログレコ。
そこまで来た時ふと気づいたことがあ。
球体関節中毒彼女がよくこんな話をし。
わたしの友達にAV女優の子がいてね、撮影がない時でも雑誌のインタビューやグラビア撮影やサイン会や握手会とかで1日に何軒もビデオ店を回ってその都度除菌スプレーで手と喉を消毒しなくちゃならないし、エイズの検査も定期的に受けなきゃならないから結構大変だし忙しいんだって。
あーそうか。
分かったぞ。
この友人の話というのは要するに彼女自身のことだ。
カフェインの錠剤を手放さないでいたのもおそらく経口避妊薬の副作用である眠気を抑えるためだ。
おかげで俺まで一時期カフェイン中毒になってしまったけどな。
煮え立つプロパンガス式風呂釜で溺死寸前のお前の呼吸器が泡立つくぐもった音を遠く近く聞きな。
もうすぐ見えてくる。
もうすぐ見えてきた。
空を埋め尽くすほどのカラスの大群が飛び交い狂ったチューニングのギター千本を医療用ドリルで掻き鳴らして火花を散らしてアンプに擦り付けて叩き壊した時のような、ノイズで世界を覆ってい。
その下に目指す葬儀社が見。
黒い花輪の列に白と黒の入り混じった鳥のくそ。
通学路の絵表示があるアスファルトの地面に。前後左右にガタガタ震える二層式洗濯機に墨汁を流し込んだみたいに黒い乱気流の渦巻きをえが。
中で出していいよ♡
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