マガジンのカバー画像

京都・ピアノサロンオーナーのちょっと気になるミニコラム

49
運営しているクリエイター

#ピアノ

ハイドン不朽の名作 Hob.XVII:6 をめぐって

ハイドン不朽の名作 Hob.XVII:6 をめぐって

ハイドンといえば、「明るく元気で茶目っ気たっぷり、パパ・ハイドン!」というイメージが先行するかもしれませんが、悲痛な響きに満ちた不朽の名作 Hob.XVII:6 については、少々趣を異にしているように思います。ハイドンの作品には珍しいヘ短調 f-moll が選択されているところも特殊でしょうし、終盤の壮大なコーダのドラマティックな表現も、ロマン派時代の魁であるといっても差し支えない気がします。この

もっとみる
ソロリサイタルを終えて

ソロリサイタルを終えて

今年最後の大きなイベントであったソロリサイタルが終わりました。

お時間を作ってご来場いただいた皆さま、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。お運びいただきまして、まことにありがとうございました。

また、今回のリサイタルについて、各種運営は全て主催者の方で対応いただきました。大変お世話になりました。厚く御礼申し上げます。

【プログラムについて】

プログラムノートとしてお配りした文章、ご紹介いたし

もっとみる
シューベルトの幻想曲(四手)および最後の三つのソナタをめぐって

シューベルトの幻想曲(四手)および最後の三つのソナタをめぐって

【シューベルトの最晩年】

シューベルトがモーツァルトよりも短い31年で生涯を閉じたのは1828年11月19日、それは楽聖ベートーヴェンが逝った翌年のことでした。早世の天才の最晩年にあたる1828年は、まさに音楽史上の「奇蹟」としか言いようがないほど、豊かな実りに満ちています。ミサ曲第6番(変ホ長調・D950)、弦楽五重奏曲(ハ長調・D956)、連作歌曲集「白鳥の歌」(D957およびD965A)と

もっとみる
動画審査とホール審査 ― ピアノコンクールの審査動画収録の現場実感

動画審査とホール審査 ― ピアノコンクールの審査動画収録の現場実感

コロナ禍を機に増えたであろう動画提出方式によるピアノコンクール、「実際のところ動画審査ってどうなの?」という素朴な疑問をお持ちの方に対して、小学一年生から最高峰クラスの国際コンクールコンペティターまで、数多くの審査動画の収録・作成を手がけてきた私自身の経験を通じた感想をご紹介しようと思います。

あくまでも、私個人の感想であることをご承知おきください。

【動画でもある程度のことは分かる】

沢山

もっとみる
あなたの耳 大切にしていますか ― 騒音性難聴リスク対策の重要性

あなたの耳 大切にしていますか ― 騒音性難聴リスク対策の重要性

練習時間が増大すると、それに伴って種々の故障リスクも増大します。よく知られたところでは、腱鞘炎等の手指の故障リスクの増大ですが、気を付けなければならないのはそれだけではありません。特に、加齢に伴ってリスクが増大するのが、聴力の問題です。

騒音性難聴という言葉を聞いたことがある方も多いかもしれません。「騒音性?私がやっているのは騒音ではなくて音楽だから!失敬な!」と仰りたいその気持ちはよく分かりま

もっとみる
その手指の痛み ― ミス・マッピングが一因かもしれません

その手指の痛み ― ミス・マッピングが一因かもしれません

数年前から、私は断続的に親指の腱鞘炎と疑われる症状に悩まされてきました。「疑われる」という表現を用いたのは、スポーツや音楽分野における故障の専門医(整形外科)の先生から、「現時点では最も疑われるのは腱鞘炎でおそらく初期症状である」という診断ではあったものの、同時に「スポーツの場合の診断は一瞬で出来るが、音楽家の場合は、実は診断が難しく、何度かやっていくうちに段々問題を突き止めることになるケースも多

もっとみる
ピアノ演奏時の視覚情報 ― あなたは目をつぶってピアノを弾くタイプですか?

ピアノ演奏時の視覚情報 ― あなたは目をつぶってピアノを弾くタイプですか?

私が、ピアノを弾く方に広く聞いてみたいと思うことの一つに、「あなたは目をつぶってピアノを弾くタイプですか?」という問いがあります。皆さまはいかがですか?

私の場合は ― 多数派であるかどうかは不明ですが ― 「目をつぶって弾いた方が、落ち着くし、音を聴きやすい、むしろ、視覚情報は基本的に邪魔!」と感じるタイプです。少なくとも私は、伴奏・連弾等、見て弾く本番、と決まっている場合を除くと、譜面を見て

もっとみる
真似という学び

真似という学び

皆さまは、「真似をする」という言葉に対して、どのようなイメージをお持ちでしょうか。

ひょっとすると、最近では、個性を重視する立場から、真似をすることを嫌う人々も多いのかもしれません。あるいは、「猿真似」という言葉があるように、やみくもに他人の真似をすることに対しては、必ずしもいいイメージは与えられていないようです。

また、真似をすることの負の側面として、盗作・盗用といった事象も残念ながらありそ

もっとみる
本番あるある ― 手指が冷えて思うように動かない

本番あるある ― 手指が冷えて思うように動かない

寒中お見舞い申し上げます。

手が冷えてすぐには弾けない ― という季節の到来ですね。

ところで。

今の季節に限らず、「本番、手が冷えて思うように弾けない」と訴える演奏家の方、案外多いようです。

多くのアーティストさんを見て来られた調律師さんも、先般「≪手が冷えて動かない!≫と、直前カイロをせわしなく揉んでみたりする人も本当に多いですよ」という話をされていました。

人によっては「カイロを持

もっとみる
【あ~あ 残念なピアノ弾き 楽屋でこんなことやっていませんか?】

【あ~あ 残念なピアノ弾き 楽屋でこんなことやっていませんか?】

久しぶりの「あ~あ 残念なピアノ弾き」シリーズです。

本日のお題は ― 「楽屋でこんなことやっていませんか?」 

本番前の楽屋で、思わずこんなことをやってしまう方、結構多いのではないでしょうか。

● 試験前のように楽譜と睨めっこしてしまう
● 失敗したときの言い訳を予め口に出してしまう
 ・「この頃暗譜できなくて」
 ・「練習時間がなかなかとれなくて」
 ・「緊張したらなかなか上手くコントロ

もっとみる
本番あるある ― 環境へのとらわれ

本番あるある ― 環境へのとらわれ

人前でピアノを弾く機会がある方の場合、「舞台上の椅子の高さや鍵盤の状態、ペダルの踏み心地」等が気になる経験をお持ちの方も結構多いのではないでしょうか。

普段とは異なる環境でのパフォーマンスの場合、普段は意識にものぼってこないようなことが案外気になったりするものです。いつもとは異なる何かに違和感を覚え、それが気になってしまうこと自体は、ある意味自然なことでもあります。ペダルの硬さや鍵盤の重さといっ

もっとみる
ピティナ「ピアノ曲事典」公式採用動画作成をお手伝いしました!

ピティナ「ピアノ曲事典」公式採用動画作成をお手伝いしました!

嬉しいお知らせがありましたので、ここでちょっとご紹介したいと思います。

友人でピアニストの前田美和さん、この度ピティナピアノ曲事典オーディションにおいて公式動画採用となりました!!

審査結果は、こちら。

前田美和さんの公式動画採用は、スクリャービン、ブルーメンフェルトに次いで今回で3作目ですね。本当に素晴らしい演奏をされる方で、私も大ファンです!!!

しかも、今回のオーディションで公式採用

もっとみる
【あ~あ 残念なピアノ弾き 「イメージはあるけれども、技能が伴わない」 ― それ本当にそうでしょうか?】

【あ~あ 残念なピアノ弾き 「イメージはあるけれども、技能が伴わない」 ― それ本当にそうでしょうか?】

ピアノに限らず、楽器を学んでくると、その習熟度に応じて、更なる課題というものが現れます。

私が拝見したところ、ある程度の年数学習を続けてきた人であっても、例えば以下のような課題を抱えている方は結構多いのではないかと思います。

・抑揚を適切かつ自在に表現することができるフィンガーコントロールが身についていない
・その楽器が有する最もふくよかな響きを引き出すことができない
・喜怒哀楽を切実に表出す

もっとみる
老化と向き合う・変化を受け入れる・何かを補う身体

老化と向き合う・変化を受け入れる・何かを補う身体

この頃、実感するのは、同じことをしていても、以前とは同じというわけではないということです。

例えば、「一晩寝れば元気回復」が当たり前だったのに、「一晩寝ても疲れが抜けない」とかいったこともそうですし、同級生たちよりも十年ほど遅いと豪語してはみるものの、最近「老眼かも…」と思い当たるシーンが増えてきました。

常々、「『トシだから』を免罪符にしない」とは思いつつも、身体の変化は受け入れて行かなけれ

もっとみる