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古森 もの
2024年9月8日 16:52
拝啓、みずうみへ。大切なみんなのためにぼくは目とことばを注ぐ 春のみずうみ桜から伸びる両手を頸にかけ ぼくもぼくとてすこしずつ散るどのように切ってもいいよと君が言い ちょきりとずれた夏の遠景おしまいを抱えていつか花束になってしまえる 空が高いねないよりも、あるほうが怖い。わたしたち、だから生きてて夏に似合うね。感情はどうやらぼくを支配したい、頭蓋を脱いで、いま空が高い。
2022年6月30日 21:32
翡翠の少女が長髪を涼ませるその 川下に一輪の花が 咲いた私がそれを摘み取り彼女に見せる と血色のよいすべらかな舌は一枚 また一枚ていねい に花弁をちぎっては喉の奥へ しまい込む刹那心臓へ頬の血潮 が燃え移るのを知覚 したどくどく と止まないせせらぎは驟雨の ようで私は血生臭い世界の裏側 をざらついた感触と ともに垣間見た花弁を失く
2022年5月5日 17:56
時折人はじぶんの影を見つめているそういうとき人は海のにおいをまといどこか遠くまで行ってしまいそうな気配にわたしはとても怖くなる瞳のうちにうろんな火を燃やし星を墓標として汽車に乗った少年たちがいたあの子たちの哀切はどこから訪ね来るのかわたしたちを通り過ぎてなおホームには潮騒が響いてその風を通すのは胸にあいた硝子窓どうしようもなく光が透ってゆくのでわたしたちの感傷は