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短い小説のようなもの

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#小説

足が悪い男

男とよくすれ違う。 たとえば道の途中だったり、近所のスーパーマーケットだったり。 男は20…

M.Masako
4年前
3

旅にでる

窓を開けていると、風に乗ってみずみずしい草の匂いが行ったり来たりする。車が走り抜ける音、…

M.Masako
4年前
5

お腹の反対

1年ほど風呂に入っていない。外に出ないので問題はなかった。しかし、ここにきて背中がとても…

M.Masako
4年前
5

わたしのこいは

池で飼っているこいが、ぶくぶく太って、わたしの身長とうとう超えた。「ああ、こりゃいかん」…

M.Masako
4年前
8

愚問の来

朝、目が覚めてカーテンを開ける。窓の外は半透明に煙っていた。先の見えない世界にいざなわれ…

M.Masako
5年前
3

頭の中の砂嵐

頭の中でザーッと砂嵐がなっている。手を頭の中に突っ込んで、砂をつかみ取る。今度は目の前の…

M.Masako
5年前
4

へそ

「あなた昨日、何してた?」 「え!?昨日? 昨日は…普通に会社に行ったけど」 「行って? で、それから?」 「それから、えっと…帰りに1人でご飯食べて…」 「それから?」 「それから? いや、普通に帰ったよ家に!」 「来たでしょ」 「き、来てないよ!何言ってんだよ」 「夢に!夢に来たでしょ!それで…私に説教したのよ」 「ゆ、夢?説教?」 「へそが長いって!へそが長いって!へそが長いって説教したのよ!」 「へーそー…」 「…………」 「そんなことで怒ら

うたかたの木

雨が降っている。空には色がない。灰色の道路には木々が等間隔で植え付けられている。ふと、一…

M.Masako
5年前
7

啼き声

「ねぇ 触って」 そう言って、君は右の頬を差し出す。 思わずポケットに手をしまいこんだ。 …

M.Masako
5年前
3

隣の男

朝早く、ゴミ出しのためドアを開ける。 おなじタイミングで隣の部屋の男性もゴミ袋を片手に出…

M.Masako
5年前
5

炎上猫

オーブンで猫を飼っている。 家に帰ってきたら、まず猫を焼く。オーブンから取り出した猫は焼…

M.Masako
5年前
9

冷蔵猫

冷蔵庫で猫を飼っている。 家に帰ってきたら、まずその冷え冷えとした猫を冷蔵庫から取り出し…

M.Masako
5年前
11

真夜中の手紙

真夜中に一通の手紙が届きました。 その手紙はしっとりと肌触りがよかったものですから、うっ…

M.Masako
5年前
6

絡みあう

インターネットではさまざまな情報が入り乱れ、SNSなどでも気を病むことが多いこのごろです。週に一度は自然豊かなところで散歩して、綺麗な空気を浴びることでようやく精神のバランスを保っているような気がします。 私には秘密の場所があります。そこには立派な木があり、行けば必ずギュッと抱きしめたあと、木皮に軽く口づけの挨拶をします。それから、鬱蒼とした緑のなかの切り株に腰をかけ、鞄から本を取り出し、木々や虫たち、ちいさな精霊たちにも読み聞かせをします。 自然をぼんやり眺めているのは