第4章<診断する>アクセラレーション・センター
1.アクセラレーション・センターとは
3つの主要なアセスメント手法のどれをとっても、成長の加速に必要な洞察を得ることができる。だが洞察だけでは十分ではない。人材開発を加速するためには、経営陣と学習者本人が自信を持ってリスクを負うことができるようなやり方で、その洞察結果をはっきりと伝えなければならない。面談によるアセスメントや多面(360度)診断は、主に過去の出来事や行動に基づき、仕事ぶりを診断するため、将来の状況に関連するリスクを測るという点では効果が不足するだろう。
洞察だけでは十分ではない。人材開発を加速するためには、経営陣と学習者が自信を持ってリスクを負うことができるよう、その洞察結果をはっきりと伝えなければならない。
アクセラレーション・センターは人材開発の加速化に非常に重要なものであり、それは、芝居や映画の配役にオーディションをしたり、スポーツ選手の入団テストをしたりするのと同じだ。俳優が芝居や映画の中である役を演じているところを想像することはできても、オーディションで実際に演技を見ない限りは本当に判断できない。判断のために録画された過去の演技や試合を見ることができる場合が多いが、それだけでは足りない。未来は流動的で、なおかつ俳優や選手は進化する。最終的な準備度アセスメントを行い、成功に必要となるコーチングやスキル強化を判断するのに、オーディションや入団テストは欠かせないのだ。
2.事例
このことを解明するために、あるハイポテンシャル・リーダーの戦略的思考力について経営陣の間で交わされる会話の例を挙げよう。このリーダーの名をキャット・スミスとする。
✅面談と多面(360度)診断のデータを見て:
キャットは、賢明で戦略的思考力のある人と見られている。前年のビジネスを分析する際にも良い仕事をしたし、成果のプレゼンテーションでも経営幹部を感心させた。わが社の業務を深く理解していて、顧客や提携先との間に強力なネットワークを築いてきた。
✅戦略的ビジネス計画立案のシミュレーションの結果を加味して:
自分のビジネスユニットの戦略計画の中で、彼女は財務分析に依存しすぎており、現在直面しているコストとマージンの問題を他の要素から切り離して扱っている。この問題に対処する計画は立てているが、そこには売上増や新市場への進出につながる顧客対応の取り組みが含まれていない。完全に内部に焦点を当てており、ビジネス環境に対する考慮に欠けている。彼女の戦略はコストと効率性の問題は解決するかもしれないが、ビジネスの成長には結びつかないだろう。
あなたがキャットに相応しい次のステップを決める立場にあったとして、面談と多面(360度)診断のデータを使うだけだとしたら、まったく違う判断を下していただろう。シミュレーションによって彼女をより複雑な計画立案が必要な環境に置いたために、彼女の現在の傾向が、未来の状況の中でどのように行動に現れるかが明らかになった。この観察結果と他の重要な要素(もともと彼女が上位概念で物事を考える能力を持っていることや、いかに学習指向があり自己洞察に前向きかなどを示す性格診断のデータなど)と組み合わせれば、彼女の戦略的思考力の理解をさらに深めることができるだろう。
キャットは、本格的な戦略計画の立案を必要とする職務への準備度は期待していたほど高くなかったかもしれないが、それなら、そこに重点を置いて能力開発を進めていけば良い。あるいはリスクが高すぎるなら、そのような戦略的思考が必要な職務を避けることもできる。これは、行動特性を通したリスク軽減であり、これがないと経営陣はさらにリスクを回避する傾向になることが、われわれの経験からはっきり言える。
図4.2はこの行動特性を具体的に表している。シミュレーション、行動面談、性格特性など、アクセラレーション・センターにおけるキャットの結果のダッシュボードである(図4.2は経営幹部に向けた報告書であり、キャット自身はより詳細な結果報告を受けることになる)。この報告書はインタアクション・スキル、コンピテンシー(行動)、性格的な促進要因や阻害要因、組織が見定めた将来のビジネス状況(ビジネス・ドライバー)でリーダーになるための準備度などに関連する結果である。
シミュレーションや面談から得られるコンピテンシーのパターンは、性格パターンを診断することで、より明確になる。一部の行動がなぜより多く見られるのか、理解できるようになるからだ。そうした見方(読み方)が追加され、最終的にそれらすべてが、キャットがリーダーとして職務を遂行するにあたって習熟する難しさが他よりも大きい、または小さい分野についての理解を深める。参加者とその上司が、これらの独自の情報について話し合い、それをキャットのパフォーマンスの情報と統合することで、a)彼女が実施する準備ができている(あるいはできていない)ビジネス・ドライバー、b)強みを活かしつつ、成長が必要な分野における能力開発の最善の方法について、貴重な洞察が得られる。
もうひとつ、管理しなければならないのは、キャットが負うべきリスクの度合である。キャットがアセスメント・プロセスを評価的だと感じ、結果データとその重要性を信じられないと思うなら、彼女は思い切った能力開発目的の任務に就きたいとは思わないだろう。
アクセラレーション・センターは現実的であるため、より深い、個人に合わせた学習体験を得ることができる。それが、最高のリーダーシップ施策について考えることを可能にし、参加者に新たな選択肢を与える。典型的な手法では、キャットはプロセスの説明を受けた後、シミュレーションを体験する前に性格診断テストを行う。シミュレーションは決して「訓練」の場ではなく「体験」の機会であり、キャットは、分析力、決断力、立案力、コーチング力、コミュニケーション力、影響力、その他のスキルを必要とするリーダーシップ職務を通じて自分の道を切り開く。アクセラレーション・センターで経験した役割は、上司か上級管理職か経営幹部か、あるいはCEOだったかもしれない。実際のライブアセスメントだったかもしれないしバーチャル・アセスメントだったかもしれない。だが、つまらないものではなかったはずだ
アクセラレーション・センターは現実的であるため、より深い、個人に合わせた学習体験を得ることができる。それが、考えることを可能にする。
アクセラレーション・センターが包括的でなければならないのは、リーダーシップが仕事ではなく役割であるためだ。シミュレーションでは役割全体を網羅しなければならない。キャットのシミュレーション体験では、その企業の歴史と進化の過程、製品とサービス、組織構造、顧客、競合、経営陣について把握し、普段の職務よりも責任の重い役割があてがわれる。シミュレーション当日はさまざまな課題――業務上の難しい意思決定、担当組織(製造チームだったり会社全体だったり)の計画の立案、提携先や部下、顧客とのタフな話し合い、プレゼンテーションなど――に直面する。実際のリーダーが働いているように、すべてがひとつの流れになっており、ときに非常に忙しく、次々と対処していかなければならない。
リーダーシップは仕事ではなく役割である。シミュレーションでは役割全体を網羅しなければならない。
訓練を受けたアセッサーがキャットの反応をまとめた後、最新の仕組みでは、図4.3のような報告書が作られる。これは紙ではなくオンラインで閲覧できるウェブページで、報告書というよりは自己発見のためのツールと言えるものだ。キャットは好きな方法で自分の仕事ぶりに対する他者の観察結果を閲覧できると同時に、自分の思考や能力開発計画を構築するために、結果を活用できる。データをソートして、さまざまなキャリアについてのシナリオを想像したり、自分の強みを活かすことを優先させたり、能力開発課題に舵を切ったりすることができるのだ。
3.おすすめ人材アセスメントソリューション
①コンサルティングソリューション
②オンラインシミュレーションアセスメント&アセスメントシステム
③オンライントレーニング&ディベロップメント
4.DDIとは
DDIは、世界最大手の革新的なリーダーシップ・コンサルティング企業です。1970年の設立以来、この分野の先駆者として、リーダーのアセスメントや能力開発を専門としてきました。顧客の多くは、『フォーチュン500』に名を連ねる世界有数の多国籍企業や、『働きがいのある会社ベスト100』に選ばれている世界の優良企業です。
DDIでは、組織全体におよぶリーダーの採用、昇進昇格、能力開発手法に変革をもたらす支援をすることで、すべての階層において事業戦略を理解し、実行し、困難な課題に対処できるリーダーの輩出に貢献しています。
DDIのサービスは、現地事務所や提携先を通じて、多言語で93カ国に提供されています。また、同社の研究開発投資は業界平均の2倍であり、長年にわたる実績と科学的根拠に基づいた最新の手法を駆使して、組織の課題を解決しています。
◆DDI社の4つの専門分野
DDI社は、4つの専門分野を中心に、長年の実績と科学的根拠に裏付けられたソリューションと、より深い洞察を提供し、優れた成果を生み出しています。
5.会社概要
会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント
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