チャンスはみんなに平等にあると言えるだろうか~今響く、サラマンカ宣言の言葉~
こんにちは。特別支援学級教員13年目のMr.チキンです。今日も大学院の講義でした。「高齢化する知的障害者は地域で生活できるのか」「”家族支援”をどう行っていくべきか」など、社会福祉の諸課題についてディベートがあり、とても勉強になりました。やはり、教育の現場では触れることの無い”生活”がそこにあり、刺激を受けました。
さて、今日は、子どもたちに、チャンスは平等にあるのだろうかという話をしたいと思います。
甲子園を目指したくても目指せない生徒たち
とても考えさせられるニュースを読みました。
特別支援学校の高等部の生徒が、甲子園をあきらめなくてはいけないという現状に関する記事です。
記事の中で、
という部分がありました。
子どもたちの意欲に対して、学校側の理解を得ることが難しいというケースのようです。高野連の規定としては、特別支援学校の参加は認められているということでしょう。
というわけではもちろんありませんが、その土俵に立つことすらできないということは権利の侵害にあたることがあります。学校側としては、安全管理措置を講ずる責任があるため、一概に学校を責めることはできません。
ただ、誰のための高校野球なのかということを考える必要はあるかもしれません。
子どもたちの進路について調査した時を思い出した
同じようなことを、進路調査で考えたことがあります。
以前、保護者に”子どもたちの進路について、小学部のうちから説明をする”という必要感を感じたことがありました。
上の記事でも紹介した通り、特別支援学級卒業後の進路というものは少し特殊なものになっているからです。その実態が分からなくては、保護者に説明ができません。
同僚と協力し、近隣の特別支援学校高等部の進路担当者に、「高等部卒業後の進路」について片っ端から電話をしました。その時に明らかになったことは
大学入学は、教育課程の編成上、視野に入れていない
進路は、基本的に非正規雇用として入社することが前提である
ということでした。
アメリカではTPSIDというプログラムが創設され、知的障害のある方の大学進学率が増え始めているという報道を受けていたころだったので、今の日本の現状を垣間見た気がしました。(TPSIDについては今後記事を書きますね。)
現在、法的には、特別支援学校高等部を修了すれば大学入学資格は得られます。
教育課程の組み方の難しいところなのですが、例えば大学進学を目指す子どもを優先した教育課程を組むと、生活を豊かにするための学習を優先したい子どもの教育課程を削らなくてはいけないこともあります。
人的にも、資金的にも、環境的にも制限はあります。ただ、その中でも、障害の有無にかかわらず継続して学びの場をもたせるためにはどうすれば良いかということは、教育側が考えなくてはいけないでしょう。
これは、”受け皿となる社会が、障害というものをどう考えるか”や”学ぶということは何なのか”ということを考えなくてはいけない問題です。
今、響くサラマンカ宣言の言葉
1994年。各国の政府や国際組織が、スペインのサラマンカで「万人のための教育(Education for All)」の目的を前進させるために、国際的な宣言を出しました。いわゆる”サラマンカ宣言”です。
その宣言の中の第2項に、”われわれは以下を信じ、かつ宣言する。”として
すべての子どもは誰であれ、教育を受ける基本的権利をもち、また、受容できる学習レベルに到達し、かつ維持する機会が与えられなければならず、
すべての子どもは、ユニークな特性、関心、能力および学習のニーズをもっており、
教育システムはきわめて多様なこうした特性やニーズを考慮に入れて計画・立案され、教育計画が実施されなければならず、
特別な教育的ニーズを持つ子どもたちは、彼らのニーズに合致できる児童中心の教育学の枠内で調整する、通常の学校にアクセスしなければならず、
このインクルーシブ志向をもつ通常の学校こそ、差別的態度と戦い、すべての人を喜んで受け入れる地域社会をつくり上げ、インクルーシブ社会を築き上げ、万人のための教育を達成する最も効果的な手段であり、さらにそれらは、大多数の子どもたちに効果的な教育を提供し、全教育システムの効率を高め、ついには費用対効果の高いものとする。
このサラマンカ宣言は、私が目指す教育目標の一つです。何か判断に迷ったことがあった時には、私はこのサラマンカ宣言に戻ります。
さて、先に挙げた2例は、1994年のサラマンカ宣言の理念と照らし合わせていかがでしょうか。
マジョリティにある子どもたちが、普通に手にする機会に、マイノリティの子ども達が気軽にアクセスできるか。
つまり、チャンスはみんなに平等にあると言えるのか。私たち大人は常にアンテナを張っていかなくてはいけないのかもしれません。
では、またね~!
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