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ゲルハルト・リヒター
「信仰」などの人智を超えた概念を視覚化すると、眼前の世界になるのだろうか。
昨年の夏、リヒターの作品を前にして僕はこのようなことを思った。
リヒターの抽象画を言葉で説明することはできない。意味の範疇を超えた存在だから。説明できるとすれば、それら作品がいかに人間の認識や意味づけを超えているかということだけだ。
リヒターは、抽象画制作において、絵の具をキャンパスになすりつけるときや、ヘラで塗っ
COMICO ART MUSEUM~③杉本博司、村上隆、奈良美智~
1 ギャラリー4 海景シリーズ 杉本博司
ギャラリー3でタイム・ウォーターフォールを鑑賞した後、別棟の2階に上がると杉本博司の海景シリーズの写真が空間の三方に展示されていた。また、展示室の残りの一方には球体の光学ガラスが設置されており、そのガラスを覗くと、展示室内の海景シリーズの作品が反射されていた。
ここで作り手が表現したいものは、おそらく、江の浦測候所のそれと同じであろう。それは、太古か
COMICO ART MUSEUM~②宮島達夫「タイム・ウォーターフォール~
1 配色と水への違和感
ギャラリー1、2の草間彌生の展示空間を出て、順路の案内に従い、棟の外に出る。すると、進行方向の先から、微かに水の流れる音が聞こえる。歩みを進めると、湯布院市内の水路が控えめに目の前を横切っている。
その水路の上に架けられた小さな橋を渡ると、美術館の次の棟の入り口に辿り着く。その棟の玄関周辺はまたしても黒色の石の上に水が張られており、棟の外観と同じ色で統一されている。
COMICO ART MUSEUM〜①草間彌生〜
1 美術館について
湯布院の観光客用の猥雑な通りから一歩横路に入ると、ほぼ黒一色の外観の建築物が現れた。観光地特有のけばけばしい建物を横目に歩いてきた身からすると、装飾性なく黒で統一された物体はむしろ刺激が強く、目がチカチカしてしまう。
COMICO ART MUSEUM は隈研吾が建築した美術館である。筆者は、建築については入門レベルを絶賛勉強中であり、詳しいことはわからないが、本建
江ノ浦測候所 杉本博司
概説
最寄駅の根府川駅ではタクシーが停車していないとの友人の助言により、隣駅の真鶴駅で下車することにした。真鶴駅は小さく、明らかに街の中心機能を担っていないにもかかわらず、友人の助言通り、駅の玄関口にはタクシーが乗客を待っていた。
江の浦測候所へ向かうのはこれが初めてである。いや、それどころか杉本博司の作品をしっかりと鑑賞することもこれが初めてである。
建築に疎く、杉本博司の作品や思想を追