読書記録83 2024年9月の本まとめ
涼しくなってはいないけど、読書の秋ということで本を読む手が止まりませんでした。
今月は読んで良かった本が大量です。早速紹介します!
1.『生きのびるための事務』(2024)坂口恭平
小布施の図書館で新着本で置いてあり、なんとなく手に取ったのが出会い。一言、とても面白かった。
今まで夢を持とう、好きなことを仕事にしようという本は数多あれど、ここまで「じゃあ結局何をしたらいいのか」を噛み砕いた本は珍しい。しかも漫画ってかなり優しい(易しい)。まず最初の方(最初はお金の計算)にやるべきとされる1日の活動の数値化は、受験時代や院試勉強の時期にやってすごく効果があった。自分で時間割を決めると、意外とそれを信用してできてしまうので、時間の見える化は非常に重要だと思っている。
一方で、結局「一生やりたいほど好きなこと」が思い浮かばない人も多いのではないかと思う。漠然とした夢があってそれを実現する道を考えるのは結構やりやすいけど、そもそも夢や理想がない人はどうするのかというところまでは、残念ながら答えてくれていない。
2.『世にもあいまいなことばの秘密』(2023)川添愛
文章は如何様にも読み取ることができ、それゆえ誤解され、違った意味で伝わっていくということがひしひしと伝わってくる本。
具体例が盛りだくさんで、「なるほど、こういう意味にも読み取れるのか」と学びが多い。自分が書く言葉も曖昧なんだろうなと自省した。ロバートの「シャーク関口ギターソロ教室」とか、中川家のネタとか、アンジャッシュのすれ違いコントとか、ちょいちょいお笑いのネタが具体例として上がっていて、にんまりした。
3.『あのころ』(1996)さくらももこ
さくらももこのエッセイは定期的に読みたくなる。トイレを我慢する/心配するくだりが多くて、自分の小さい頃を思い出した。
圧倒的に文章の運びが上手い。
4.『植物に死はあるのか 生命の不思議をめぐる一週間』(2023)稲垣栄洋
図書館でいつも行かない生物学の棚をふらついていたら見つけた本。図書館は全然知らないジャンルの本も物色できるのが良い。
1週間月〜日曜日まで1問ずつ質問が学生からメールで送られてきて、それに生物学の教授が考えながら答えるという形式で、とても読みやすい。
特に土曜日が興味深くて、生物は進化の過程で「死」というシステムを手に入れたという話。「死」は発明であり、効率のいい/都合のいいシステムなんだという新たな発見があった。他の曜日も知らなかったことだらけで、とても面白かった。
5.『君を守ろうとする猫の話』(2024)夏川草介
灰色の男たちが図書館の本を燃やしている?!から始まり、本が大好きな中学生の少女が立ち向かう物語。『神様のカルテ』や『スピノザの診察室』と同じ作者なのだが、少し文章がまどろっこしい感じがした。物語の筋は単純なのだが、途中で過去の名作の作中人物が助けに来たり、そもそも灰色の男たちと主人公の女の子の関係は『モモ』のオマージュだしと、本好きはニヤニヤする仕掛けが多い。
6.『本とはたらく』(2022)矢萩多聞
装丁家のことが知りたいと思って調べていて見つけた本。中学校を辞めてインド暮らしというぶっ飛んだ経歴の持ち主で、絵描きから装丁を手掛けるようになった。装丁という前に、人生そのものの話が面白く、ぐんぐん読んだ。途中で妙蓮寺の「生活綴方」が出てきて、すごく印象に残っている本屋さんだったのでここでつながるんだ!と嬉しくなった。
7.『ごきげんになる技術』(2024)佐久間宣行
佐久間さんの最新刊。来年から社会人の身として勉強になることが多かった。社会人になったらこの本を読んだことを忘れていそうなので、その時にもう一度読み直したい。
8.『入門 山頭火』(2023)町田康
『林修の初耳学』に米津玄師が出ていて、「さよーならまたいつか!」の歌詞「しぐるるやしぐるるや」が種田山頭火の詩から取ったと知り、気になったので読んだ。
今まで山頭火について「分け入つても分け入つても青い山」ぐらいしか知らなかった。詩人がどんな人生を歩んで、どんな状況でその詩を読んだのか知ることは、とてつもなく大事なのではないかと思った。山頭火がこんな壮絶な人生を送っていたとは、全く知らなかった。
9.『六月のぶりぶりぎっちょう』(2024)万城目学
京都×時空歪み系(歴史偏重)は絶対面白いのですよ、と読む前からワクワクした。『八月の御所グラウンド』も面白かったが、この本は清少納言と本能寺の変がテーマなので歴史好きとしてはホクホクだった。分量としては、表題作「六月のぶりぶりぎっちょう」が全体の2/3以上を占めるのだが、清少納言をテーマにした「三月の局騒ぎ」も短い中に京都の上澄みみたいな空気が詰まっていてとても好きだった。
10.『増補 広告都市・東京』(2011)北田暁大
昨今ブームになっている昭和レトロの街並み(遊園地など)に、なんとなく違和感を持っている人に読んでほしい本。THE都市社会学といった内容で言い回しが独特なので、私は知識不足ゆえに苦戦した。というか途中からちょっとよく分からなくなってしまったので、読書メモを書いてなんとか理解した。
11.『ミライの源氏物語』(2023)山崎ナオコーラ
初めて聞く出版社(淡交社)だったので調べたら、主に茶道関連の本を出版している会社だった。本を読んでいると本当にたくさんの出版社が存在していることに気が付く。
この本は源氏物語関連の本を読み漁っていた時期に図書館で予約した。やっと順番が回ってくるほどの人気だ。単に源氏物語の内容を紹介するのではなく、ジェンダーの切り口で解説をしているのでその視点が面白かった。