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信じることでしか変われない
たぶん。いや、たぶんなんかじゃない。私は他人と線を引いてきた。いつからかは分からない。高校生かもしれない。中学生かもしれない。はたまた小学生かもしれない。何かをきっかけとして、では無かったものの、いじめを筆頭に他人からの評価を無意識に気にしていた節がある。いつからか「嫌われたくない」「裏切られたくない」「独りになりたくない」という思いが募り、いつしか誰にも何も期待しなくなった。全部自分で管理できれば楽だった。そんな日々は今思えば退屈だった。
わたしは生きることがへたくそだった。
誰かに理解されたい。必要とされたい。いつもそう願っていた。けれども人と密に関わることは避けていた。それは「嫌われたくない」からで、例え相手から理解したいと思われていても、私はそんなことを知らずに心を閉ざし続けていた。理解してくれる人を切望しているのに、信じられず、距離をとる。その人に依存してしまうことが恐ろしく、依存は私を私で無くしてしまう気がして、とてもじゃないけどそんなことはできなかった。それに「また裏切られる」と私は暗示をかけていたと思う。
会いたい時に会いたい。
話したい時に話したい。
そんなことすらなくてもいいから、ただそばにいてくれる。何も求めないでいてくれる。そんな心地の良い人は、いつになったらできるんだろうかと考えていた。なにがあっても心は繋がっていると感じられるような、絶対的な何かを感じられる人なんて本当にあるのだろうか。あるのなら出会いたい。けれど結局はそんなもの夢物語だと私は諦めていた。いつからか願うことも無くなった。
今日あったことを聞いて欲しい。
「ここに行きたい」「あれ食べたい」とか誰とでもできるようなことをしながらも、理解し合えて尊重し合えて、この人となら、私はわたしのままでいられるいつか出会えると信じながらも、そんなことはないと絶望していた。
私は夢物語が夢では無いことを知ったのは、つい最近のことだ。
「信じてみたい」そう思える人が22歳にしてはじめて現れた。信じることは他人に自分の身を半分任せるということだ。私は自分に関わる全てを自分で管理できる状況でいたかったから、信じるなんてごめんだった。でもその時、「この人を信じなかったら私は一生誰も信じないだろう」と直感したのだ。
この人になら裏切られてもしょうがない。それは私が甘えたからいけなかったんだ。誰かを信じるなんてしなければ良かったんだ、この人に裏切られたら、私は死んじゃうと思う。そう予感した。
出会ってからは1年くらいの時間が経っていたけれど、話し出したのはほんの数週間前の人を、私は信じることにした。その人を信じてから人生が目まぐるしく変わっていった。価値観、考え方、常識…私の持っていたものでは通用しない、常識なんて初めからない世界にやってきた。常に私の真意を問われた。「あなたはどうしたいの?」それだけをひたすらに考え続けた。その渦中、どこかで裏切られたと感じていたら、たぶん私はここにいない。
そうして今ここにいる私は、まだ不安定で頼りないかもしれないけれど、私の意思でここにいる。誰にも流されず、左右されず、私の価値観で物事を決め続けている。
研究のために勉強してきたのに、合格通知を捨て、大学院進学は辞めた。自分へ問い続ける日々を過ごしながら就活し、新卒の会社を15日目に辞めた。また私は自分へ問い続ける日々を過ごし、転職した会社で1ヶ月の時間が経った。なんとなく続けるのではなく、私の意思で続けている。今日も私が行くと決めたから、行く。
転職先は新卒の社会人経験の無い私にも、仕事を任せて、ある程度自由にやらせてくれる。私にも責任がありつつも、最終的な責任は先輩が取ると言っていた。やりたいだけ、やりたいように、やればいい。こんな私も今、信じてもらいながら仕事をしている。こんな新卒ペーペーを信じるなんて、恐ろしいはずだ。でも信じられていると私は分かっているから、私は私なりにできることを頑張るし、だから私は育ててもらえてると感じる。
それは私が信じることの怖さと信じることでしか得られない何かを知ることができたから、その会社に出会えたのかもしれない。現にこの会社は新卒採用はしておらず、私が新卒の会社を秒で辞めたから出会えたのだ。
人を信じてから、私の人生はまた動き出した。ものすごい勢いで回っていく。退屈だった日々にまた新たな風が吹いた。私は知らない場所に来ている。今までのひとりぼっちの私では来ることができなかった場所に、私は居る。
信じる対象は2つある。
ひとつは目の前にいる相手を信じること。信じて自分の身を半分渡すこと。自分の身を渡さないことには何も始まらないし、生まれない。まずは差し出す。話はそれから。
2つ目は自分を信じること。「相手を信じること」を選択した自分の直感を信じること。疑心暗鬼では相互理解なんてできない。まずは相手を信じること。
何かを変えたかったら、何かに困っているのなら、必要なのは誰かを信じることなのかもしれない。
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