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本の探偵 (月曜日の図書館208)

昔読んだ本のタイトルが知りたい、という相談がきた。小学生のときに読んだ物語。恐竜が出てくるお話で、恐竜が死んでしまった理由を調べる話だったと思う。ヒントとして、石が出てきた。

こういう質問は頻繁にあるわけではないが、図書館でのレファレンスの王道ではある。調べるためのツールをどれだけ知っているか、そしてこれまでにどれだけたくさんの本を読んできたか、司書の能力と経験とセンスが特に問われる内容だと言っていいだろう。

ちなみにわたしは大変苦手である。

一般的なノウハウというのは国立国会図書館が提供していて、一応それらを試してみたもののもちろん見つけ出せず、早々にギブアップしてしまった。質問者は物語だと言っているけど、恐竜について書かれた知識の本かもしれない。そしてその手の本は無限にある。全部調べるなんて、とても現実的じゃない。

そんなときは、他の人に聞く作戦だ。

市内にある全部の図書館に「本の探偵おねがいします」と書いて一斉にメールする。普段は船頭が多くて物事が進まないので困りものだと思うが、こういうときは図書館がたくさんあると心強い。この中の誰かひとりくらい、子どものときに恐竜マニアだったか、児童書が全部頭に入っているベテラン児童担当がいるだろう。

果報は寝て、待つわけにもいかないので、返事が来るまでの数日間、自分でもちまちま調べる。同じ係の人も合間に調べてくれる。K氏が恐竜の本ですらなく、科学実験のシリーズのひとつで恐竜が取り上げられていた可能性もあるんじゃないか、と言う。それが本当なら、選択肢がまた倍増してしまう。U塩さんが、たくさんのふしぎシリーズは見てみたけど違ったと教えてくれた。

N本さんがヒントは石というところに注目したほうがいいんじゃないかと言う。恐竜の中には消化を助けるために石を飲みこんでいた種類もいたらしい。消化つながりで、恐竜が絶滅した理由に便秘説というのがある。これらの説を、物語風に紹介した本なのではないか。

なかなか説得力がある。しかし「児童書 恐竜 便秘」などと頭の悪い検索を繰り返しても正解は出てこない。

この手の質問では、利用者がいかにたくさんの情報を覚えているか、またそれをこちらがいかに引き出せるかも重要だ。サイズはどのくらいか。表紙の絵に何が描かれていたか。どこで読んだのか(家?学校の図書室?)。

今回はあまりにも手に入った情報が少なすぎる。あれこれと可能性が広がってしまい、調べれば調べるほど答えから遠ざかっている気がする。

予想に反してどこの図書館からも返事がないまま日数が経ってしまい、一度ここらで利用者に追加の質問をしてみようかと思っていたところで、館内の別の係の人から「これだと思う」と連絡が来た。

待ってました!

恐竜ものの謎解きシリーズの、5巻。読んでみると確かに恐竜が死んだ理由を推理する内容だった。ただし絶滅した理由ではなく、ある一個体が死んだ理由を調べるという内容で、答えは胃石にしようと飲みこんだ石が大きすぎて窒息したから、だった。ある意味便秘の真逆である。

更には完全に知識の本で当たりをつけて調べていたのだから、正解にたどりつけるわけがない。どうせ物語のはずがないと思っていた。今回の教訓は、利用者をもっと信じよ。

見つけてくれた人に話を聞いたら、パソコンでどんな検索ワードを入れて調べたかを教えてくれた(具体的な内容は企業秘密である)。該当の本が一番にヒットしたので、内容を確かめてみたらドンピシャリだったとのこと。

それにしてもシリーズの5巻目が一番にヒットするなんてすごすぎる。神様が取り計らってくれたとしか思えない。きっと彼女の日頃の行いが良かったに違いない。

もしくはわたしの。

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