モノクロの季節に。
桜に桃にチューリップ。菜の花に雪柳。
春ってこんなに花が咲くんだ。
こんなにカラフルになるんだ。
それは久しぶりに感じた感情ではなく、初めて感じた感情だった。
引きこもってた4年間は季節の移ろいを感じることもなく、部屋の中から外を眺めていた。
室内の温度に洋服を薄手にしたり厚手にしたり。扇風機を回して夏を感じたり、こたつを作って冬を感じた。
1日1日を生き抜くのに必死で、気がつけば1週間が過ぎていた。
今日も過食しちゃった、
今日は何事もなく無事に過ごせた、
ODして何日間も記憶がない、
今日は何月何日?
そんな風に過ごしていた時間は、中身のないただ薄っぺらい時間だった。
後ろを振り向くと1ヶ月が過ぎていて、カレンダーをめくる日にはこのまま私という日々も捨てたくなった。
桜の開花ニュースを見ると、世間に置いてけぼりにされている自分自身に悲しくなり、熱中症情報を聞くと室内で死ねないかと考え、クリスマス年末なんて言葉を聞くと、今年も生きてしまった自分に悲しくなった。
一年の四季の移ろいは、時の残酷さを引きこもってるわたしに知らしめた。
変わりゆく季節に変われない自分。
可愛らしい花に緑になっていく木々。
紅葉で色鮮やかになった自然の姿。
真っ白くなった世界。
私の世界はモノクロなのに、カラフルな形に変わりゆく姿が憎かった。
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昔からずっと死にたかった。
「季節の移ろいを感じる前に死ぬ」
それが新しい季節の始まりに思うことだった。
強制的に大人への階段を登らされてる春が嫌いで、キラキラした時間を過ごせない夏が嫌いだった。誕生日がある秋は世界で一番嫌いで、1年の締めくくりの冬には、生きている事実に症状が悪化する。
「好きな季節はなに?」
こんな質問に答えられない自分が嫌だった。
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引きこもる前から嫌いだった四季。
今年はそんな四季の「春」を感じた。
かわいい色鮮やかなチューリップをたくさん目に焼き付けて、黄色の姿がかわいい菜の花を見た。友達のおかげで雪柳の素晴らしさを知り、桜の開花ニュースをいつもより楽しみに見れた
歳を重ねること。
若さには勝てなくて、代謝も落ちる。
痩せにくい体に変わって、生きている意味を毎日見失う。
でも、今年はたくさんお花を見れた。
モノクロの世界に少し色をつけれた。
「きれいだね」
そんな当たり前の会話を友達とできたんだ。
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