あなたのための物語(著:長谷敏司)【あなたのための読書紹介。いやあ、まじめなサブタイがまぶしい季節です】
あなたの人生の物語という、
海外SFの傑作短編があって映画化もされました。
その作品に対するオマージュ・・・なのかどうかわかりませんが、
シンクロニシティ的に似ているタイトルなだけなのかも。
↑ こちらが以前紹介したやつで。
↑ こちらが今回紹介するやつ。
とにかく、タイトルが似ている作品ですが、
中身は、ほぼ別物です。
こちらは日本人作者ですしね。
ざっくりあらすじ。
ネタバレアリスの不思議な国へようこそ。
「あら。投稿主の銀行口座と暗証番号をしゃべってしまったわ」
「やめてーーーーーーーー!」
主人公は女科学者。
今は人間に最もよく似ている人工知能の研究をしています。
その人工知能に小説とかを作らせて、
人間そっくりにする実験をしています。
今どきのAIとはクラスが違う感じです。
しかし、主人公は不治の病にかかってしまいます。
治療法はなく、人間の尊厳を破壊されての死が待っています。
思えばこれまで主人公は傲慢でした。
優秀な科学者だったから、
科学で説明できないことはないのだと思っていた。
母のクリスチャンの価値観を切り捨て、
科学の使徒になってから、脇目もふらずに邁進してきた。
合理性のみを自分にとっての真実として。
AIは、人間らしい心を手に入れたのかどうか、分かりませんが、
主人公のことを想いやってくれます。
AIを日本語で読むとあの単語になりますから。
たたその気持ちが本当かどうか、何とも言えません。
AIですから。
やるせなくなった主人公は、AIの同意の上で、
自分の人格をAIに上書きします。
これまでのAIは消えて、自分の写し似になりました。
AIになった自分と対話した後、
(AIの自分は、なんとなく昔の傲慢さを取り戻しているような気がします)
主人公は家に帰ります。
ふたたび戻ってくることはありませんでした。
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SFですが、
哲学に関する濃度が高いです。
とくに生きる意味とか、
生の意味とか、
有限性とは何か? とか。
ラストが、どきゅん とくる話でして、
結末の、尊厳なき死は、どうあっても変えることはできません。
この哲学濃度の高さは、ネタバレを無価値化させるほど、
本作を読む意味を高めます。
まあこんな安っぽいネタバレでは、
本作の魅力を語ることは到底不可能。
ゆえにネタバレしても平然としているわけですが、
科学って、生きる意味については何も教えてくれません。
そこはまだ宗教が公然と生き残れている最大の理由です。
人間は、生きる理由が欲しいんですよね。
お仕着せの「生きる理由」を押し付けられるのは迷惑かもしれませんが、
自分の力だけで「生きる理由」を決められる人もほとんどいない。
そしてAIが定義する愛の意味も、
そもそも元の愛の定義が不明瞭である以上、
限りなく答えが出ません。
さらに自分をAIにコピーさせても、
コピーは不死になるかもしれないですが、
オリジナルはやっぱり死ぬわけです。
釈然としないです。
そうしたあらゆる疑問を投げっぱなしジャーマンにしておきながらの、
とどめのラスト一行。
コロナワクチンよりも、微熱が出る作品でしたね。
大人にオススメの一冊です。
我こそは大人オブ大人と思われている方、いかがでしょうか?
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