見出し画像

【映画】アイ・ライク・ムービーズ I like movies/チャンドラー・レヴァック


タイトル:アイ・ライク・ムービーズ I like movies 2022年
監督:チャンドラー・レヴァック

ポール・トーマス・アンダーソン、トッド・ソロンズ、ヴィンセント・ギャロ、スタンリー・キューブリック、デヴィッド・クローネンバーグといった映画監督の名前や作品が羅列される度に「お前は俺か!」と拗らせ具合に共感というよりも、恥ずかしい部分をくすぐられるような感じ。舞台となった2003年といえば20年近くも昔。日本でも1999年に渋谷のQフロントにTSUTAYAが出来たのをきっかけに、80年代から始まったレンタルビデオの高まりがピークにあったし、渋谷の街も単舘/ミニシアターが多く存在していた時代でもある。本作のレンタルビデオのモデルになったブロックバスターもブロックバスター映画と形容されるほど一時代を築き、90年代後半に登場したDVDがプレイステーション2の登場でVHSから棚に置き換わった頃でもある。
本作ではレンタルビデオ店に置かれているものはほぼDVDで、VHSは学校の課題提出に使われたくらいだったのも、時代の狭間だなと感じさせる。
当時の映像編集についても学校の安価なeMAC(現在までのiMACに連なる廉価モデル)の初期OSXの懐かしいウィンドウが郷愁を誘うが、ファイナルカットプロが家にあるというローレンPのパソコンはおそらくパワーマックG4か5辺りだろうから、ローレンスの家に比べればかなり裕福な家庭と想像できる。ちなみにeMACはDVDは読み込みのみでCDRの書き込みしかできないので、諸々時間と手間がかかる環境だったかなと。
とまあ当時の記憶がよみがりながらも、テーマは現代的な内容を扱っていて、物語の根底にはハーヴェイ・ワインスタイン事件を想起させる過去の性被害の話や、女性にとっての監督や編集などの製作者側の立場が差し込まれる。主人公がこれらの事件や制作に直面した時、映画オタクが高じてこうした問題を跳ね除けてしまう仕草をしてしまう。彼が思い描き目指す映画人のイメージを具現化しようとすればするほど、覆い隠されたジェンダーの問題や友人との軋轢が生まれてくる。物語を思い返すと、主人公と周囲の関係が社会の縮図となっていて、物事の輪郭が浮かび上がってくる。そう考えると中々秀逸な映画だなと後からじわじわと感じてくる。
大学入学までの成長譚というとやはりグレタ・ガーウィグのレディバードっぽいなと思ったら、リファレンスとして名前が上がっていたのはとても納得。

いいなと思ったら応援しよう!