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2024年8月の記事一覧

水面が静物だとしても
底が連想できたなら

少し波が立つだけで
怯えては強張ってしまうのを
弱さと言い換えたくはなくて
浮かんできた水紋をそのままに

どれだけ思いやっても
許せないものがあったとして
否定の素振りを見せてしまったら
残る物は何だろう

剥がしていった愛という言葉に
陳腐さより誠実さを載せることは
滑稽じみたものなのかな

汚い心ばかりになってきても
湖は深く控えていて
全てを飲み

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トーチ

地面が吊るされた蛍光灯を揺らして
ぼんやりと見ていても
僕は分かりきれなくて
泣いてる人が波に映った時は
涙が虹に変わるなんて
都合のいいことばかり

笑うのは悪いこと
光を灯すのは消えゆくこと

古本屋で見つけた写真集
遊覧船に繋がれたトーチが
一人を導いて進んでいく
カットアップして映画にするより
このままでいいって書いてある

笑うのは悪いこと
光を灯すのは消えゆくこと

街を理解できずに瓦

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くだらない

暗がりの中で朝を求めて
柔らかさを失った腕に触れていると
僕の顔をした蛇が
君の涙腺を泳いでいて
どんな表情をすればいいか
悟られないよう壁に目を向ける

この部屋は殺風景で
優しさは長居しない
でも時々君が持ってくる雑貨が
恨めしそうに積もっていて
なんかいいなって
そんな風にしか言えないけれど

言葉を超えたものを感じながら
愛おしさを伝えた気になって
それもいいかって諦めながら
また一緒にパ

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こわばり

そっと視線を伏せながら
頬を撫でて行くと
柔らかさの実体が確かにあって
見えない管に繋がれた気持ち
首筋に運ぶ湿度に体は強張って
二人の距離は少し遠くなった
君の中にある色んな疑念や不安を
背中をさするだけで吐き出せるかな
決して高くはならない声の真ん中に
全ての愛おしさが詰まっていて
喉の奥にもそれが伝播してくる
素敵な勘違いをしたおかげで
僕の人生は思ってたより長く続きそう
振り回される午後に

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Let there be love

別離が昨日僕らを窓際から呼んでいた

それは変わり映えのない秋の午後

コップに張った表面が震えて

来るべき寒さに毛布を被せる

湿った落ち葉が最後をちらつかせても

レコードは歌い続けるよ

「そこに愛がありますように」
「そこに愛がありますように」

高いビルの上から見知らぬ人を覗いても

同じように温かい心を持って

例え戦火が頭上を覆っても

腐植土は消えないで輝くから

「そこに愛があ

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My room

My room

綺麗にしまいこんだ手紙
茶色のケースにはシミなんてなくて
人知れず埋まったまんま
積み重なった文の輪郭は
形を保とうと必死そうで
ビールで浸したら
どんなになるかな
シャッフルで流したラッドに
感情なんて乗らなくても
CDラックをどこかに探してる

My room isn’t mine anymore
My room isn’t mine anymore
鷹が降りてくる小説を読みながら
そんな曲を

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綺麗なはずだった景色を
色んな絵の具で汚していって
何が残ったんだろう
もう見れなくなったものが多すぎて
考えることもできないんだ

ここに来たかったはずなのに
なんだかうまくバランスがとれない
たぶんここを目指してた
誰に言われたわけではなくても
割と頑張ったと思うんだ
そうやって夜の街を歩きながら
自分を慰めても何にもならないけど

疲れ果てて空に溶けていきそうでも
川のせせらぎはまだ聞こえる

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美しいもの

平凡に暮らしていても
くだらないものが多すぎるよ
上を向いて進んでいくだけならば
永遠にそんなこと繰り返してればいい
そこにはなにも求めるものなんてないから
俺はひと足先にドロップアウトするよ
champagne supernovaのフレージングより
胸を振るわすものなんてどこにもない
薬物中毒のフロントマンが歌う
売れないバンドの一節が
命を救ってくれる夜もある
メロディと言葉の抱き合わせで

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開かれたランボーの詩
永遠を海に見るより
布団を被せる手に力を込めて
苦しそうな寝言
妖しい壁紙の色
この陶酔から醒めないよう
ゆっくりと目を閉じる

大鷲に連れ去られる詩を映画にして
抜け殻を焼却場へ運ぶ
階段を登っていくつま先が
鼻にかかる声につまづいても
いつかの寝室へ戻っていくよ

「walkin’ on the rainbow」
鼻白む一節に皮肉以外をあたえて

もしもし

家に帰ったらのど飴をなめよう
たくさん歌ったから喉が痛くなりそうだ
身体は人より丈夫にできてるけど
風邪ひかないようにしないと

声は枕に冷たくして
返事なんかしない
歩いていた頃より
上手くなったかな

朝起きたらやっぱり喉は腫れている
こぶのように膨らんで
熱を僕に着せてくれた
薬はどこにしまったっけ

声は暖かいけど
返事なんかしない
運転していた頃より
上手くなったかな

副作用でうとうと

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Paranoia

肺に溜まった汚れが
体を分解させていけばいい
明日も陽を浴びる資格なんてないから
ビルの上から受難めいて落ちていくよ
弱者が目を伏せながら笑っている
その頭上を皮肉って金を稼ぐんだ

ここは楽園だった
(また嘘をついた)
ここは楽園かもしれない
(また嘘になった)

牧場に並んだ牛たちに少年が並んで見える
餌をやっている右手が自分の口を塞いでは
自らの首輪を知覚しないで隣人に鞭を打つ
美しい夕暮れ

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High and dry

むせかえるような拍手を受けて
硫酸を一杯飲めば頭は冴えていく
十字架に住む概念よりも早く
映画の中の悪魔はその命を投げ出すから
ソフィーの影を切り取って棺に寝かせていく
秋はただその側で立ち尽くすほかない
立てかけた鏡に映る巨人の足が
気がつくと宣教師に扮して僕にこう囁くんだ

ああヒールに睨まれている
(僕をおいてかないで)
ああヒールに嫌われていく
(僕をおいてかないで)

巻き戻して見せた画

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ホモソーシャル

チンチロの鐘が教会で鳴っている
どっかの風刺画にそんなんあったけ?
おいそんなんしてないで早く寝ろよ
起きててもいつまでも本読まないんだから
お前が見てる言葉の98%は
ほとんどビール工場で作られてる
バイクの後ろに座り風を感じた気になって
そっと転げ落ちるための準備をしている
前の車を追い越すためじゃなくて
自分のエゴを埋葬するために車輪を回してる
隣の県の山肌に集まったネックレスの群れ
ぽつん

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ミニマルミュージック

国道4号線の先の方へ目を凝らす
壊れたワイパーがくたびれて
泡のように浮かぶ水滴を擦っていた
脇を通り過ぎていく
固有名詞を持たない人たちと
グレーにしか見えない住宅街
想像していたよりもずっと
核シェルターに向かう道は険しく遠い
揺れるネイルと落ち着いたブラウス
またどうせ繰り返すことを知りながら
分かったふりをして愛を囁く
何の味もしない蝶の放物線が
音と共に流れるが君には見えない
一面に広が

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