High and dry
むせかえるような拍手を受けて
硫酸を一杯飲めば頭は冴えていく
十字架に住む概念よりも早く
映画の中の悪魔はその命を投げ出すから
ソフィーの影を切り取って棺に寝かせていく
秋はただその側で立ち尽くすほかない
立てかけた鏡に映る巨人の足が
気がつくと宣教師に扮して僕にこう囁くんだ
ああヒールに睨まれている
(僕をおいてかないで)
ああヒールに嫌われていく
(僕をおいてかないで)
巻き戻して見せた画面のコントラストが
ノイズ混じりの睡蓮を白の時代に変えていく
青色をしたユトリロの帽子が宙に舞って
人のいない舞踏会の真ん中に着地した
向かいのアパートに住む窃盗癖のある老人が
こちらを鋭い目つきで見ている
疑念と蜃気楼に共通する色彩に
襲ってくる街のサイレンがまた喋っている
ああヒールに睨まれている
(僕をおいていかないで)
ああヒールに嫌われていく
(僕をおいていかないで)