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Yo la tengo

透けていく海が売られ
空っぽなのは誰だったのか
二十分と示すナビ
景色は静かに取り壊される

映画の中のガンマンが
首を掻き切りながらこう言うんだ
「堆積は死にゆくよりずっと卑怯なこと」

縄張り争いをすればいい
永遠にいつまでも
愉楽の林間で

幻覚

ドラッグをやった後みたいな
清涼剤が僕を撫でて
昨日の玄関に
毒素は笑いながら消えていった

飛躍と逃走に横たわる窪地
実際のところどこまで遠かったのか
知る由はないことを
オパールの瞳 工事せずに

首を絞めて
お願い 嘘だから
首を絞めて
どこか 見えないかな 

パッチワーク

My pain、吊られて
抜け出せない ここは汚れた

森 晒された縄よ
狼 硯に伏さないで

ゴム製と書かれた 
締めて 閉めて 絞めて 「絞めて」

瓜 こういうふうに
My pain、吊られた後で

無伴奏

あ き
とめず
けせ ないと?
あ こわせばだいじょうぶ

かれは つれないよる
ころされない
ながれきった す み 
いいまちがえ 澄み

ちぢれるきのう の
しじんはわらう つみかさなり

とびはねて 
とびはねて
かっぱのびょういん

滑空

誰かのために生きるため
誰かの広さを限定して
歯車は嘆いてる
同じように想えないこと

君の色を否定した
極彩色で力強いその繊維
何にも変え難くあるべきだったのに

背中を知らずに押して
地面を考えることもせず
お座なりの綺麗事を
吸っては吐いてとめどなく

首を寄せて木々に潜む
沈んだ底は心地が良くて
溺れていてもいつかは同じに

地質時代

寄りかかった石畳
消えない匂いを感じて
胎盤に粘りつき
タールを同化した躰

重複するような淡光は
本当にあったと言えるのかな
ただ粘土質の廃墟のつれづれで
纏った殻は静かなように

見渡す限りの灰色海岸には
懐かしい網膜があり
揺られている潮目が浮かんで
一人静の海は暗さを踏む

水が模した焼却炉
肌色の血管が透けて
肩を緩くなぞったpaleと共に
歴史はその身に気づくだろう

供物

指 凍えてしまい
それでも腕は同じ色
鯨の体内に鎖骨が飾られて
腐った果実酒 羽が付き

眼窩に暖炉の火が注がれて
百合が輸血をする横で
この音には差異があった
祭壇は次のシーシュポスを求める

熊になった者よ 徒然なるまま
この部屋を去ってはくれないだろうか

メールが溜まるたび
外に出るようになって
枝分かれした駅と
バランスが取れるから
寝込んだ側には
今度は良い熱が

君と暮らせる事
君と上手く話せる事
君が素敵な事
随筆のように包装できたら

雨が傘と虹を入れ替えて
腫れっぽい喉には以前が
タイマーを止め忘れて
過去へ少しだけ潜ったら

君がいない事
君と上手く話せない事
君が素敵だった事
忘れては行かないようで

川の底へ佇む白魚と
話せる人が

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黒と白

目覚めたばっかりに
嫌なことと好きだったことが
コーヒーのように混ざらず
ベランダからサンダルが消えて
紐が霞んで根を煽らなくなっても
カレンダーを進めるように僕は

黒が白を責めて
連なる背後を新聞が
離れた黄銅は特徴が見えないから
目を強く閉じる

本棚に沈む論理だけでは
誰彼も澱んでいってしまう
横たわる言葉の距離に
失望してしまわぬように
寝起きの頭で
愛の言葉を練習して

白が黒を脱色し

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水面が静物だとしても
底が連想できたなら

少し波が立つだけで
怯えては強張ってしまうのを
弱さと言い換えたくはなくて
浮かんできた水紋をそのままに

どれだけ思いやっても
許せないものがあったとして
否定の素振りを見せてしまったら
残る物は何だろう

剥がしていった愛という言葉に
陳腐さより誠実さを載せることは
滑稽じみたものなのかな

汚い心ばかりになってきても
湖は深く控えていて
全てを飲み

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トーチ

地面が吊るされた蛍光灯を揺らして
ぼんやりと見ていても
僕は分かりきれなくて
泣いてる人が波に映った時は
涙が虹に変わるなんて
都合のいいことばかり

笑うのは悪いこと
光を灯すのは消えゆくこと

古本屋で見つけた写真集
遊覧船に繋がれたトーチが
一人を導いて進んでいく
カットアップして映画にするより
このままでいいって書いてある

笑うのは悪いこと
光を灯すのは消えゆくこと

街を理解できずに瓦

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くだらない

暗がりの中で朝を求めて
柔らかさを失った腕に触れていると
僕の顔をした蛇が
君の涙腺を泳いでいて
どんな表情をすればいいか
悟られないよう壁に目を向ける

この部屋は殺風景で
優しさは長居しない
でも時々君が持ってくる雑貨が
恨めしそうに積もっていて
なんかいいなって
そんな風にしか言えないけれど

言葉を超えたものを感じながら
愛おしさを伝えた気になって
それもいいかって諦めながら
また一緒にパ

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こわばり

そっと視線を伏せながら
頬を撫でて行くと
柔らかさの実体が確かにあって
見えない管に繋がれた気持ち
首筋に運ぶ湿度に体は強張って
二人の距離は少し遠くなった
君の中にある色んな疑念や不安を
背中をさするだけで吐き出せるかな
決して高くはならない声の真ん中に
全ての愛おしさが詰まっていて
喉の奥にもそれが伝播してくる
素敵な勘違いをしたおかげで
僕の人生は思ってたより長く続きそう
振り回される午後に

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Let there be love

別離が昨日僕らを窓際から呼んでいた

それは変わり映えのない秋の午後

コップに張った表面が震えて

来るべき寒さに毛布を被せる

湿った落ち葉が最後をちらつかせても

レコードは歌い続けるよ

「そこに愛がありますように」
「そこに愛がありますように」

高いビルの上から見知らぬ人を覗いても

同じように温かい心を持って

例え戦火が頭上を覆っても

腐植土は消えないで輝くから

「そこに愛があ

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