うつ蝉

感想めもと日記 Filmarks🎥https://filmarks.com/users/utsusemimi

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最近の記事

昭和百年少女:感想文

ムーンライダーズの影響を公言している松永天馬氏だが、最近その影響をとみに感じることが多い。それは内容面ではなくその難解さに於いて。一聴して、意図が汲み取れるというより、聴き手に解釈を問うような幅と詩的な曖昧さを感じさせる。それは単にわたしにとってそうである…という事なのかもしれないが、おおよその意味は伝わりつつも、細かい部分で解釈に迷う事が多い為、一つ一つの言葉を解っているつもりのものも含め自分なりに追ってみた。 唱和…① 一人がまず唱え、続いて他の多くの人たちが同じ言葉を

    • 映画鑑賞記録:ジョーカー フォリ・ア・ドゥ(ネタバレあり)

      「二人狂い」のタイトル通り、現実から目を背けさせる壮大なフィクションである「恋」というテーマはやはり楽しい。アーサーが恋という虚構に嵌り、現実から目を背ければ背ける程事態は悪化し「アーサー」を守りたいと願う人々との決別、破滅へのカウントダウンはじまる。 前作「JOKER」では弱者の覚醒により殺人というカタルシスが引き起こされる犯罪教唆的な結末だが、今作はカタルシスと引き換えにされたもの、偶像として崇められたジョーカーを担った一人の男の苦悩を描いているという点で前作を否定してい

      • 映画鑑賞記録:JOKER(ネタバレあり)

        フォリ・ア・ドゥの感想書く前にFilmarksに書いたJOKER鑑賞時の感想載せておく… 俺が見たいのこーゆーんじゃない…という気持ちに。いや、わかってて見たんだけど。演技が圧巻であることは間違いない。 社会の病理が産んだ偶像としてのジョーカー。ある種の熱狂をもって受け入れられたはわかるけど余りに陰鬱なのと、自分の頭で考えずジョーカーに乗っかるような形で暴徒と化した民衆は、私のイメージするジョーカーが嫌う奴らなのだよな。(ノーランのジョーカーが好きだから) 善意に含まれた悪

        • えーけんのこと

          映画を友人と行く機会もめっきり少なくなった。一緒に足を運んで語るのは配役や好きな場面、演技についてなどだろうか。そこより先、解釈が食い違ったりするとすっと引っ込める。別にそこまで話さなくとも楽しく過ごせるし、相手のフィールドで会話するのも楽しい。会話はチューニングを合わせたほうがスムーズに楽しく会話が弾む。それでも腹の底に沈んで吐き出さなかった言葉が汚泥のように溜まっていて、何となく何処かに吐き出しておきたい気持ち悪さを常に抱えていた。 その気持ち悪さを払拭する切欠を与えてく

          映画鑑賞記録:箱男(ネタバレあり)

          かなりロジカルに組み立てられている印象を持った。はじめに言い訳をすれば、記憶力の限界で台詞の言い回し等不正確なのだが、その曖昧な記憶が読み解くのに水を差してしまいそうなのが申し訳ない。とりあえずA研までに一旦は感想書き上げるぞ!と決意しているので、おいおい再鑑賞して穴埋めして加筆修正します。小説は二十年ほど前に読んだきりで殆ど覚えて無いのが幸いだった気がする。これだけ濃い内容で初回視聴中に原作との比較までしていたら脳みそ混乱しそう… *  *  * 箱男とニセ医者・軍医の

          映画鑑賞記録:箱男(ネタバレあり)

          キミと✕✕✕✕したいだけ

          未婚の頃のお話し。 友人に矢鱈「彼氏と結婚しないの?」と、聞いてくる子がいた。今時はそんな不届きな発言を投げかける人は減ってきていると思う。裏表が無い反面、思った事を何でも口にし、自分の幸せを口に出して確認したいタイプだった彼女からその言葉を聞くのはすこし面倒でもあった。 ただ、その言葉を受け取った時の私が一番強く感じたのは「余計なお世話だ」でも「マウント取られた」でもなく(少なくとも当時の地方都市では配偶者や子供の有無がマウントとして機能していた)「同じ側に来て欲しいのだろ

          キミと✕✕✕✕したいだけ

          映画感想記録:フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン(ネタバレあり)

          アポロ計画の映画ではあるけれど宇宙の物語というよりthe other words ,please be true…というお話だと思った。 アポロ計画の都市伝説的な噂から着想を得たストーリーを軸に、PRというある種の嘘を駆使した錬金術と真実の拮抗に恋愛が絡む物語。後ろ暗い過去を持つPR会社の社長ケリーが、アポロ計画の広報に引き抜かれ、嘘と誇張を駆使してこの計画の魅力をアメリカ国民に売り込んでゆく。 どうしても目につくのがケリーの広報の手練手管の一つとして美貌と色気で籠絡するシー

          映画感想記録:フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン(ネタバレあり)

          映画鑑賞記録:ジョジョ・ラビット(ネタバレあり)

          ポップな色彩と戯画化したようなテンポの世界観は、少年の目から眺めた世界のようにも見えた。そのような作風の中に露骨な残酷映像無しに少年に自爆を促すような戦争の残忍さや吐き気を催すような命の軽視をも描かれていて胸が締め付けられる。 キャプテンKとジョジョ、ロージーとエルサという大人と子供の対比に目を向けて鑑賞した。 敵か味方かわからないキャプテンKの含みを持った問いかけは、最後まで見る事でジョジョを気遣う大人としての行動だという事がわかる。味方だとわかった上でキャプテンKについ

          映画鑑賞記録:ジョジョ・ラビット(ネタバレあり)

          映画視聴記録:そうして私たちはプールに金魚を、(ネタバレあり)

          どこにも行けない人が何処かに行けるのが映画なのかもしれない。結局結局結局、どこにも行けないとしても。 何処にも行けないことを悟ってしまった少女達を見ることであの頃に行くのかもしれない。 この街に通る何処にも行けない国道、何処にも行けないプール、確かにいるはずなのに暗くてよく見えない金魚。 全体に流れるのは閉塞感と諦念、それでもふとした瞬間に煌めくものが生命って感じだ。愉しそうにはしゃぐ姿のすぐその後に入る「つまんないね」というモノローグ。誰かにとって喉から手が出るほど羨まし

          映画視聴記録:そうして私たちはプールに金魚を、(ネタバレあり)

          映画視聴記録:Pearlパール/Xエックス(ネタバレあり)

          とにかくめちゃめちゃ面白かった!とても好き好き好きな作品。これは大河ではないか。映像もシーンの重ね方など美しくて、大好きなのだけど、とにかくストーリーの魅力だけでも…と思い、自分なりに纏めてみた。 シリーズ通してキリスト教的な神を建前とした抑圧からの女性の解放…というのがテーマの大きな部分を占めていると思う。 殺人鬼を描くスプラッタものにしてはどちらの作品も最初の殺人まで時間がかかり過ぎているし暴力描写も過激すぎない(…というか、制作側のフェティシズムを感じさせるような殺害

          映画視聴記録:Pearlパール/Xエックス(ネタバレあり)

          母とルービックキューブ

          母はルービックキューブが好きで、私が子どもに与えたルービックキューブを手に取ると延々とやっている。ので、誕生日にルービックキューブをプレゼントした。ネットにはちょっと検索すれば解き方が転がっているが、自力でそこに辿り着きたいそうで、もう一年以上やっている。あと数ピースで完成までに漕ぎ着け「壊したくないよー」と言いながら壊し、またイチから組み直す。聞けば小学生の頃からそうやって解けるまで算数の問題を考え続けるのが好きだったそうである。 私は数学はからっきし駄目だが似ているところ

          母とルービックキューブ

          映画視聴記録:MEN同じ顔の男たち(ネタバレあり)

          MEN同じ顔の男たち、A24ということで鑑賞。 男性批判であると同時に、一部のフェミニズム批判なんじゃないかと感じた。 彼女ははじめ間違いなく被害者であるのだけど、だからこそ男性だからというだけで相手に同じ顔を見てしまう(≒そのような見方しか出来ない)本来なら個々であるはずの一人ひとりを見ずに、自分の領域を侵犯する加害者としての男性しか見ていない。だから同じ顔なのではないか。村の男性たちから彼女が加害を受けたとき、その理由や原因は個々に違う。が、そういった部分は見ようとしない

          映画視聴記録:MEN同じ顔の男たち(ネタバレあり)

          映画視聴記録:関心領域(ネタバレあり)

          *以下は、映画鑑賞前の自分メモ* 予告見ればこの映画の大まかな主題が予測できる。どう考えても、ガザをウイグルを、私の身の回りにある貧困を、格差を、不幸を、関心に入れず生きている私自身の事を指しているじゃないか。でも、そうでもしないと私のちっぽけな暮らしを守れない。この映画を見て、過去のこととせず、己の関心領域の外にあるものを目に入れて生きてゆく覚悟はあるのか。私にはとてもない。身一つならまだしも、薄氷を踏むような子どもたちとの生活を守ることで精一杯だ。サウンド・オブ・ミュージ

          映画視聴記録:関心領域(ネタバレあり)

          映画視聴記録:異人たち

          ネタバレしてるかも 「外に吸血鬼がいるんだ」という台詞が視聴後もずっと尾を引く。 原作未読だが、河合隼雄が自著でかなり詳しくあらすじを書き精神分析的な読解を試みていたのを読んだので大方のストーリーは掴んでいたが、設定を利用した全くの別物と考えた方が良い。 主人公をゲイにすることで「異人」という言葉が死者だけでなく主人公自身にも掛かるタイトルになり良い改変だと感じた。この映画では性的嗜好だが、誰しもが人に受け入れられない(それを試みようとする事さえ難しい)個人的な葛藤は抱いて

          映画視聴記録:異人たち