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恋のはなし

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#エッセイ

さようなら、好きだった人

さようなら、好きだった人

1年半片想いし続けて、最後はあっけなく終わった人にどこか似ていた彼。だから惹かれたし、最後まで彼だけを見ることができなかった。

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社会人になって、上京して初めての一人暮らし。右も左もわからないまま、住む部屋を探しに東京に向かった。たまたま見つけた不動産屋さんに入ると、同い年くらいの男の人が迎えてくれた。それが彼だった。

探し始めた時期が遅かったからか、希望の条件を満たす部屋はその地域では見

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電話が好きな彼と苦手なわたし

電話が好きな彼と苦手なわたし

電話の方が楽なんだよね、そう言って彼は事あるごとに電話をかけてきた。

わたしは電話が苦手だった。

とっさに気の利いた言葉なんて思いつかないし、そのせいで流れるお互い無言の時間がすごく嫌いだった。つまらない奴だと思われているんじゃないかと考えてしまうから。

彼との電話でも、何度も沈黙の時間が流れた。けど電話の向こう側にはいつもと変わらず笑う彼がいた。

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やっぱりわたしは文章でのやりとりの

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彼の目にわたしは映らないから

彼の目にわたしは映らないから

怖そうな見た目でとっつきにくい。彼に抱いていたのはそんな印象だった。

人見知りなこともあって、彼とはシフトが被らないといいなとぼんやり思っていた。そんなわたしの気持ちを知ってか知らずか、彼と一緒のシフトになることはほとんどなかった。

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でもある日、どうしても人が足りないと、彼とわたしの2人きりのシフトが組まれた日があった。自分から話しかけることもできず、時計ばかり見つめるわたしに、彼は柔ら

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くだらない会話の続きみたいに

くだらない会話の続きみたいに

「俺にしとけば」

その言葉に飛び込めたらきっと幸せだった。

大学生の頃、バイト先で知り合った先輩。
最初はとっつきにくい人だと思ってたけど、実は人見知りなだけで、よく冗談を言う、おもしろい人だった。気が合ったし、一緒にいると楽しかった。そのうち、向こうからの好意を感じるようになった。

だけど、その頃わたしには好きな人がいて、先輩を恋愛対象として見ることはなかった。

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しばらくして、好き

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別れたあとで、やっと返せた

別れたあとで、やっと返せた

かずくんは、2回告白してくれたから付き合った。

そんなことで?と思うかもしれないけど、わたしとってそれはとても大事なことだった。

駅の改札の前、人がたくさん行き交うなかで、2回目の告白をされた。深く頭を下げて想いを告げるその姿を見て、漫画の1シーンみたいだと思った。もしくは恋愛リアリティショーの告白のシーン。

そうやってどこか客観視する自分のことがわたしは嫌いだった。自分もそのなかに入りたか

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はじめての彼氏の話

はじめての彼氏の話

中学1年生のときにできたはじめての彼氏とは、3日で別れた。けんくんっていう名前の男の子だった。

けんくんとは小学校も一緒だったけど、特別仲がいいわけでもなかったし、何なら友達の祥子ちゃんの好きな人だったからその相談にも乗ってて。つまりはけんくんのことはまったくそういう対象として見ていなかった。

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けんくんとよく話すようになったのは、たまたま隣の席になってから。メールをするようになったのは何

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