別れたあとで、やっと返せた
かずくんは、2回告白してくれたから付き合った。
そんなことで?と思うかもしれないけど、わたしとってそれはとても大事なことだった。
駅の改札の前、人がたくさん行き交うなかで、2回目の告白をされた。深く頭を下げて想いを告げるその姿を見て、漫画の1シーンみたいだと思った。もしくは恋愛リアリティショーの告白のシーン。
そうやってどこか客観視する自分のことがわたしは嫌いだった。自分もそのなかに入りたかった。気がついたら「うん」と返事をしていた。
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「今日の朝1回下見に来たんだ」そう言って2回同じメニューを食べるかずくんを、すてきだと思ったこともあった。
でも、「次の休みは旅行に行きたいね」と未来の話をするかずくんにはうまく返事ができなかったし、観覧車のてっぺんで近づいてきたかずくんからは顔を背けた。
ああこれはだめだなと思っているうちに、わたしの誕生日がきた。予約してくれたお店でプレゼントをもらって、家に帰っていちばんに確認したのはかずくんの誕生日だった。
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わたしの誕生日から1ヶ月が経ち、かずくんの誕生日をお祝いをしてプレゼントを渡した。「なんでそんな気を持たすようなことしたの」って友だちには怒られたけど、気持ちに応えられないならせめて、物だけは返したい。それがわたしなりの誠意だった。どれだけ祝っても、プレゼントを渡しても、全然返せた気はしなかったけど。
そのしばらくあと、別れ話をした。晴れた日だった。空を見上げて聞くかずくんの横顔を、しっかり見つめて話をした。ちゃんと顔を見たのは、この日が初めてだったかもしれない。
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別れ際、駅の改札の前で「直接会って話せば踏みとどまってくれるかと思ったんだ」そう言ってかずくんは少し笑った。わたしも少し笑って、それぞれ反対方面のホームに向かった。
ホームから見える空はすごくきれいで、かずくんの横顔を思い浮かべながら、しばらく見上げた。そのときになってやっと、気持ちを少し返すことができた気がした。
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