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伊賀市・芭蕉翁記念館で展示中の芭蕉真筆!

現在、三重県伊賀市の芭蕉翁記念館「芭蕉と源氏物語」展では、芭蕉筆「かさしまや」句文懐紙が展示されています。公開は6月16日まで、会期中は無休です。今回はこれを現代語訳してご紹介します。『おくのほそ道』の一部と重なる内容です。

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中将・藤原実方(さねかた)の墓は名取郡の笠島というところで、歩いている道から一里(約4キロメートル)ほど離れたところにあった。しかし雨がしきりに降って、日も暮れてしまったのでやむを得ず通り過ぎることとなった。

〈かさしまやいづこ五月のぬかり道〉かさしまやいずこさつきのぬかりみち
(笠島はどこだろうかと思いながら、笠が欠かせない五月雨の季節の、ぬかるんだ道を歩いている)

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藤原実方(?-998)は、平安時代中期の歌人です。宮中での喧嘩がもとで陸奥守に左遷され、そのまま任地で亡くなったという話が残っています。また、実方は馬に乗ったまま道祖神の社前を横切ったために、罰が当たって落馬して死んだのだという言い伝えもあり、こちらの話は『おくのほそ道』に記されています。

『おくのほそ道』では、「五月雨のせいで道がとても悪く、体も疲れているので」、「笠島を思いつつ、離れたところから眺めて通ることにした」とあり、日が暮れたことは書かれてありません。また『おくのほそ道』には「笠島の郡(こおり)」とありますが、上の文章の「名取郡の笠島」の方が正確な表現のようです。さらに、句の「かさしまや」は、『おくのほそ道』では「笠島は」に変えられています。『おくのほそ道』との違いを読むのも興味深いです。

伊賀市「芭蕉と源氏物語」展紹介ページはこちら

伊賀市「芭蕉と源氏物語」展チラシはこちら

(本文は記念館においてあった「芭蕉と源氏物語」展リーフレットに拠りました。展示資料がわかりやすく紹介されている無料のリーフレットですが、どの展示資料紹介にも現代語訳は付けられていません)


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