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第三章 蓮峯山の小さな楽土 ……日本の洪水伝説。 洪水伝説とは、世界中の諸伝説に多く…
今日の飛雨は、人が変わったようだった。人なつこい笑顔で、友達のように接してくる。 鋭…
「えーっとね、蓮峯山の山々の間にある湖には、竜が住んでいる。池に大蛇が住んでいる」 「い…
不老不死……。 「え? 不老不死って、あの吸血鬼とかの?」 「オレは化け物じゃないぞ」 …
聞いても楽しくないぞと、飛雨はつぶやいた。 飛雨は、戦国武将の家臣の家の出身で、生ま…
「……ここまでにしよう」 長い沈黙が続いたあと、ふいに飛雨がいった。窓にもたれていた体…
「おい、風花」 しばらく黙っていた飛雨が、急に言葉を投げてきた。 「お前、今度、霊力の訓練してみるか?」 窓の外を見て、風花に背を向けたまま冷たく続ける。 車窓の風景は、いつの間にか植物でいっぱいになっていた。 まばらにあった人家もなくなり、木々の間を山中特有のカーブばかり描いて、道は伸びている。 まだ春の初めなので、葉を落としたままの朽葉色の木々が多いが、まばらに常緑樹の深緑が目に映る。 山を優しく包むようで、風花の心を和ませた。 「え、霊力?」
少女は中学生くらいだった。 かわいらしいという表現がぴったりの子だ。かなり華奢で、長…
飛雨が降りたのは、木々の間に点在する岩の中で、一番大きな岩だった。 彼は『重かったー…
一本杉は、木々がまばらになった笹原の中にあった。 まだ若葉をつけていない木々の中で、…
風花たちは、森の東を目指していた。 飛雨は忍者のように、枝にぶら下がったり、幹を蹴っ…
ふしぎそうに見つめる風花たちに、彼女は黙って微笑む。 ……この仔は親からはぐれた仔です…
空気が痛い……。 風花たちは、山頂に続く坂道を歩いていた。 さっきまでは、笹原や枝…
「この鳥も、引き取って欲しいってことでしょ。今回は例外ってことでいいじゃない」 スーフィアは優しい瞳をして、にわとりのくちばしを撫でた。 「あの、だいじょうぶよ、飛雨くん」 風花は身を乗り出した。 「さっきもいったけど、うちのパパは獣医なの。パパの職場か、それがだめでも、わたしの家で引き取れるから。あの子は精霊に引き取ってもらいたいみたいだけど、パパの職場なら仲間のうさぎもいるし」 「それも他力本願だろ」 飛雨は眉を寄せる。 「風花の力じゃないだろが。無責任