水の空の物語 第3章 第14話
「この鳥も、引き取って欲しいってことでしょ。今回は例外ってことでいいじゃない」
スーフィアは優しい瞳をして、にわとりのくちばしを撫でた。
「あの、だいじょうぶよ、飛雨くん」
風花は身を乗り出した。
「さっきもいったけど、うちのパパは獣医なの。パパの職場か、それがだめでも、わたしの家で引き取れるから。あの子は精霊に引き取ってもらいたいみたいだけど、パパの職場なら仲間のうさぎもいるし」
「それも他力本願だろ」
飛雨は眉を寄せる。
「風花の力じゃないだろが。無責任じゃないか?」
風花はうなだれた。
……初めて、夏澄くんの役に立てると思ったのに。
「もう、それはいいわよ、飛雨」
スーフィアは、やけに優しげな瞳をする。
「なんだよ、それって」
「それはそれよ。分かるでしょ」
「なんだよ」
「それはそれでしょ」
「わからねーって」
「だから、怒ってるふり。内心疲れているでしょ。無理はやめたら? そんなに説教しなくたって、夏澄はもう境界を越えたりしないわよ」
スーフィアの言葉に、飛雨は瞳をきつくする。
返事をしない。
無表情のまま、スーフィアに背を向ける。
早足で歩き出した。
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