水の空の物語 第3章 第13話
空気が痛い……。
風花たちは、山頂に続く坂道を歩いていた。
さっきまでは、笹原や枝葉があって足を踏み入れる隙がなかったが、山頂近くになって、急に辺りが開けた。
風花たちを取り巻く空気は、ぴりぴりしていた。
飛雨が放つオーラのせいだ。
「ルール違反だぞ、夏澄」
また飛雨の小言が始まった。
「自分の手に負えないことは、引き受けない約束だったろ?」
「ごめん……」
夏澄は腕の中のうさぎを抱きしめる。
さっき、ワンピースの少女に頼まれて、引き取ったうさぎだ。
ワンピースの少女は精霊だった。半泣きで、うさぎの貰い手を探していた。
自分で世話はできないのだが、夏澄はすぐにうさぎを引き取った。
それを見て、飛雨の小言が始まった。
風花は少し驚いていた。
いつもは夏澄を尊崇している飛雨が、こんな風に彼を叱責することがあるのだ。
「スーフィアだって、もっとしっかりしてくれないと困るぞ」
飛雨はスーフィアを睨む。
「どうして夏澄を止めなかったんだよ」
「わるかったわよ、ごめんなさい。でも、あんな小さな子に泣きながら頼まれてたら、断れないでしょ?」
「大体、なんだよ、その鳥」
スーフィアの肩には、にわとりが止まっていた。 ワンピースの精霊に、つき歩いていたにわとりだ。
そのワンピースの精霊は、帰り際にこっそりとスーフィアを指さした。
すると、にわとりスーフィアに突進し、肩に乗って離れなくなった。
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