水の空の物語 第3章 第4話
不老不死……。
「え? 不老不死って、あの吸血鬼とかの?」
「オレは化け物じゃないぞ」
飛雨くんは、歳を取らない。
風花はまじまじと飛雨を見つめた。だが、別に変わったところは見当たらない。普通の人に見える。
かなり日焼けしている肌に、痛みがちな髪。
服は黒いジャケットにジーンズ。そのまま風花の学校に来ても、簡単に生徒に紛れることができるだろう。美形だから、目立つとは思うが。
どうやっても、人に見えない夏澄くんたちとは違う
「お前、オレの悪口思ってるだろ」
「いつからなの? 戦国時代って何年前?」
風花ははっとして、車内を見回した。
バスには、三人乗客がいるだけだ。だが、静まり返っていて、風花たちの会話は丸聞こえだろう。
おもしろい冗談だねー、と、わざと大きい声でいい、風花は飛雨の手を引いて立ちあがった。
一番後ろの座席に移動する。
「なんだよ」
「静かに話そう。ね?」
「お、おう。そうだな……」
飛雨は座席に隠れるように、身を低くした。
「それでー…、戦国時代って何年前なの?」
「五百年前だろ」
「五百年?!」
声をあげてしまい、風花は口を押さえる。
「……五百才って、人間五人分だね。飛雨くん、すごいーっ!」
五百才という言葉に飛雨は眉をひそめたが、ぱあっと笑顔になった風花に、気圧されたように頷く。
「奇跡みたいで、すごいね。夏澄くんの周りはふしぎなことばかりだね!」
「そ、そう。夏澄はすごいんだよ」
飛雨は笑顔になった。
「夏澄がいると、奇跡が起こるんだ」
瞳をきらきらさせる。
「……と、いっても、夏澄の霊力で、不老不死にしてもらったんじゃないけどな。自分の霊力を自分で高めたんだ。……でも、夏澄いなかったら、がんばろうと思わなかった。そうしたら、ここまで強くなれていない。風花もそう思うだろ?」
「うんっ」
風花はすぐ頷く。
飛雨とする夏澄の話は、とても楽しい。
「夏澄がいなかったら、オレなんかとっくに、ただの人として、一生を終えてるよ。……それより前に、あのとき、夏澄が助けてくれなかったら死んでた」
飛雨はさらっと死を口にした。
「……なにがあったの?」
風花は静かに訊いた。
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