掌編小説 ブロックの家
「あなたっ」
そのときは突然やってきた。妻の左頬にあるほくろに「僕のお星さま」と軽く口づけ、玄関を出たばかりだった。家が――黄色の直方体が――妻をなかに残したまま垂直にゆっくりと上昇する。とっさに引き留めようと飛びついたが、無常にも振り落とされた。僕を呼ぶ妻の声がどんどん小さくなっていく。やがて、おもちゃのブロックにしか見えなくなった家は西に向かって水平に移動し、雲の間に消えていった。
今や、世界の大半の人はブロックの家に暮らしていた。ブロックを寄せ集めてできた家、というこ