「美術」への眼差し
佐藤道宣「<日本美術>誕生」を読む。
美術という言葉は、日本において特に明治近代期に造られた「官制用語」であった。工芸と美術の境目というものは当初曖昧であり、無論今日的な意味で芸術家を指す、アーティストと職人の境界も曖昧であった。佐藤は日本美術史そのものが近代の所産であり、それは美術の言説であるともいう。
美術という言葉と概念は日本の近代化と歩みを同じくして生まれたものである。そして、そこには日本という国へのナショナリスティックな眼差しも多分に含む。美術というものは、国威発揚