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となりの扉【ショートストーリー】

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ちょっとしたワンシーンをつないでみる小説 キーワードでくっつけながらのお題目小説といった感じです。
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#連続小説

メリークリスマス フォーユー 【短編小説】扉①

メリークリスマス フォーユー 【短編小説】扉①

となりの扉①

メリークリスマス

季節外れのこんな時期に何を言ってるんだ。

もう何もかもめんどくさくなって、

部屋の片隅でほこりにかぶったままの

小さなクリスマスツリーを見て思う。

それは11月のことだった。

「ねぇ?可愛くない?」

そういって私はクリスマスツリーを手に取った。

よくある卓上のタイプで

電源を入れるとブルーのライトに光る。

「お!いいじゃん、買おうよ!」

部屋

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スイーツ&スイーツ【短編小説】扉⑦

スイーツ&スイーツ【短編小説】扉⑦

となりの扉⑦

「今年の恋愛運、最高? 期待しちゃっていいのかな? なんかうれしい」

純粋に無邪気わらった楓を見て、

ほっと一息をつく。

占いをしていると思う。
要は本人がどう思って、
何で行動を起こすかということだということに。

楓は大丈夫そうだな。

もともと人受けするタイプだし、ポジティブな性格が清々しくまぶしい。

結果なんて聞いてなかったかのように、
もう目の前に運ばれてきたスイ

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はじまりのハニーラテ 【短編小説】扉⑨

はじまりのハニーラテ 【短編小説】扉⑨

隣のとびら⑨

「じゃあ、僕とかどうですか?」

ケーキ片手に、何言ってんだ。
心の中で思う。そんなこと言えるタイプだった?
いや、言ったの自分だし。

なんでもない風な顔を作ってる内心焦ってる、自分で自分に焦ってる。
涼しい顔で、彼女の目の前にケーキを置いてみる。

今の今まで仕事中だった。
いや、今も仕事中。
喫茶店でウェイターをしている。

入ってきた時から、目を引く美人だなと思った。
顔が

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星空コーヒー【短編小説】扉⑪

星空コーヒー【短編小説】扉⑪

となりの扉⑪

「ただいま〜」

ドアを開けると、微かな爪の音ともに
前から愛しい人が歩いてくる。

フワフワでクリーム色の大好きな彼。

会うなり、ふんわりとした体を抱きしめる。

「会いたかったよ〜」

「そう思うなら、もう少し実家に帰ってきたら、どうだ?」

実家で飼っている愛犬ゴールデンレトリバーのセンスを抱きしめている私を見下ろしながら、父の創一郎が言った。

「私だって、いろいろ忙しい

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うさぎの鳴く声①【小説】

うさぎの鳴く声①【小説】

なぜ私の物語はいつも突然始まるのだろうか?

「お姉ちゃん、トマトが死んじゃう!」

トマトは死なない。
寝ぼけた頭で受話器から聞こえる妹の声にツッコミを入れる。
トマトが死ぬと言うのなら、潰れた時、もしくは誰かに食べられた時。
今日は休みだから、夜に実家に寄るねといらない情報を前もって流しておいたのがよくなかった。
休みの日に夜更かしからの、遅めのモーニングの予定を入れてはいけないのだろうか。

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