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星空コーヒー【短編小説】扉⑪

キーワードでつないでいく連載短編小説。
小説と小説をつなぐのは何かのキーワードと人物です。
11話目のキーワードは、好きなこと、コーヒー豆、プラネタリウムです。
基本1記事読み切りで、次の主人公にバトンを渡していきます。
お楽しみください。

となりの扉⑪

「ただいま〜」

ドアを開けると、微かな爪の音ともに
前から愛しい人が歩いてくる。

フワフワでクリーム色の大好きな彼。

会うなり、ふんわりとした体を抱きしめる。

「会いたかったよ〜」

「そう思うなら、もう少し実家に帰ってきたら、どうだ?」

実家で飼っている愛犬ゴールデンレトリバーのセンスを抱きしめている私を見下ろしながら、父の創一郎が言った。


「私だって、いろいろ忙しいんです」
家を出てから、小言しか言われない、ちょっと嫌にもなってくる。
「お父さんは、のんびり星でも眺めてたら、どうですか?」
ちょっと嫌味っぽい拗ねた口調をしながら、持ってきたコーヒー豆を渡す。

「誕生日プレゼント」




娘からの誕生日プレゼントはいいものだ。

親だから、もらえるとも思っていない。
今でも、楓は与える相手でしかないと思っている。
それが、わずかながらに残る親子の絆でもあるような気もする。

悲しいもので、そんなことでもないと、娘の嬉しそうな顔を見ることもできないような気がしている。

そんな中、受け取ったコーヒー豆だ。


「イケメンの店員さんのオススメだから。私はあんまり飲まないけど、あの店のコーヒー美味しいって、みんな言ってるし」

イケメンの店員さん。
頭がクラクラする。
いやでも、まだそんな仲でもないってことか。

「それは楽しみだな。山での楽しみが増えたよ」
気持ちを立て直し、コーヒーに集中する。

山で飲むコーヒー、それが私の楽しみだ。
静かな時間の中で向き合うコーヒーとの時間。




家で食べるごはんはいい。
座っていて出てくるごはんなんだから、
家でも外でも変わらないでしょって、
女性からは嫌味を言われそうだけど、
やはり良いものは良いと思う。

たまに自分でも家族に振る舞うが、
その時もやはり良いなと思う。

月並みな表現だが、
愛情がこもっているようで、
懐かしさと素朴さも加わって
やはり美味しいと思う。

外で食べるのが味気ないわけではないが、
気持ちの入り方かな?
やはり美味しいと思える。


癒される場所で、
楽しめる空間だ。

それだけでも、
結婚したことに
家族に
とても感謝している。


「午後からさ、プラネタリウム行かない?近所にできた、新しいやつ」


楽しそうに笑う娘の姿に、

それ以上の幸せなんてないと思う。



sub title 創一郎の幸せのコーヒー


🔚



前作↓


書き溜めているお話を出しつつ出しつつ、相も変わらずキーワードが散らばりがちです。

じゃあ、なんでキーワードにこだわるのか?
と言われると、
何かでしばっちゃった方が書きやすいかな?と思ったからです。

春で一句!みたいなイメージで書いてます。
何もお題がないと面白さというか、頭をひねらないから、余計文章を書かないかと思い、

小説、短編小説、連作、キーワードで自分をしばってみたんですね。
なので、ここまで書いてきちゃうと、自己満足の世界です。

とはいえ、何かを生み出すということは、結局どこまでいっても自己満足でしかないのかなと思います。

詩を書き、本を読み、物語を考えているわけで、私の人生の余暇の選択肢につながっているわけなので、私的には正解だと思います。


あとは、ひと雫の楽しいといいなと思っている気持ちをくみとっていただけるようになったら、きっとうれしいんだろうなと思います。


楓ちゃんのお話はここから↓

続き↓

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