1人暮らしで転倒を繰り返す高齢男性の事例から老後の多様化について考えた。
また転んだ。
80代男性、一人暮らし。最近は手押し車を使っても足がぐらつき、
歩行介助が必要な高齢男性だ。
看護師として週1回だけ勤務しているデイサービスに朝出勤すると、
「Kさん(上記の男性)が土曜日に家で転んで頭を何針か縫ったそうです。デイサービスで消毒とか処置してもらえるか、ご家族が連絡ほしいって言ってます」
と、申し送りがあった。
またか。
Kさんが転んだと聞いても大して驚きはしない。
これまでももうなんども転んでいるからだ。
1年くらい前には自宅周辺の歩道を歩いていたときに、
通りかかった自転車をよけようとして倒れて意識を失い、
救急車で運ばれたこともあった。
家での転倒はいつものこと。
つい2週間ほど前もわりと派手に転倒し、腕に大きなアザがある。
そのアザもまだ完治しないうちにまた転倒。
頭には大きなガーゼをつけて痛々しい姿でデイサービスに現れた。
何針か縫った以外はそれほど負傷はなく、
足腰の動きもとくに変わりないのが幸い。
子どもとの同居が難しいKさん
頭のケガの処置を午後ゆっくりやっている間、
Kさんといろいろと話をした。
息子や娘はいるけれど、2人とも仕事が忙しい。
出張とかも多くてあちこち飛び回っているという。
本人はお子さんたちと同居したがっているけれど、
なかなか難しいのだろう。
Kさんだけではない。
デイサービスに通う利用者さんの中には、
このようにギリギリのところで一人暮らしをしている高齢者が何人もいる。
単身の高齢者は増え続ける
Kさんのように、実の子どもが二人いる家庭でも、
親の介護が難しい状況がある。
そうだとすれば、この傾向は今後拍車がかかるのは目に見えている。
高齢者の平均寿命は年々伸び続けているのに、
介護する側の人手は増えない。
子どもがいたとしても一人っ子だったり、
そもそも結婚しなくて独身世帯も増えている。
これからの時代は、老後は子どもに面倒をみてもらおう、
などという甘い考えは最初から持たない方がいいと思う。
老人ホームか在宅か
そうなると、最期は施設に終身でお世話になる、というのが一般的だと思うが、これは「自分らしく生きる」ということをかなりの部分で放棄したいといけないことだと肝に銘じておこう。
朝起きる時間からご飯の時間、寝る時間、すべて規則正しく決められている。食べるものも決まっている。
食べることが正義であるので、食べないと病気とみなされあのてこのてで介入が入ってくる。
老人ホームには認知症など様々な症状を抱えた人たちがいるため、そのギャップに驚く人もいると思う。
そもそも、経済的にある一定の蓄えや収入がないと、入居できない。
人が恋しい人、集団生活がキライでない人、決められたことをやることに違和感がない人、そういう人には向いているので、とくに老人ホームと在宅とどちらがいいのか、というとではない。
ただ、私が思うに、今の高齢者は猛烈サラリーマン世代で、戦後、みな同じ方向を向いて会社を大きくしていって、事業を拡大していって、家庭では二人子どもを産んでマイホームを買って、とみな同じようなライフサイクルを経てきた人たちだ。
だからこそ、考え方も似ているし、みなと同じようにすることが安心・安全でいる面も多いと思う。
これからの世代の老後は多様化していく
それに対して、その次の世代はわがままだ。
私も含め、親の介護よりも仕事や自分の人生やキャリアを大切にする、
そういう人が増えているのだ。
親の介護もそこそこにしているのだから、自分の老後はもっと自由にするだろう。
そういう意味で、いろんなタイプの高齢者が、集団生活である高齢者施設には入らず、自宅やそれに近い環境で生活したいという人が増えると思う。
サ高住などという施設形態が増えているのも、「一人暮らしは不安だけどいざとなったらスタッフに頼れる環境で暮らしたい」という高齢者やその家族の希望が多いからだろう。
自活できる経済力、体力、家事力、知力を備えるべし
何も準備しなければ、いきあたりばったりで、経済面でも精神面でも乏しい老後が待っている。
みな、老後資金に関しては必死になって考えているだろうけれど、それだけではなく、いや、それ以上に「健康でいること」が必須だ。
それには、できるだけ健康な食生活をして、節制と断食を生活に取り入れ、炊事洗濯は趣味だといえるくらい、自分でなんでもできるようにしておくことが必要。
今は仕事で忙しいから老後になってからやる、では遅すぎる!
人間、やり慣れたことしか老後はできません。
断食をやったことのない人は1食抜くことから始めてもいいし、『月曜断食』などを参考に1日断食から始めるのもおすすめです。