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【第2回】なぜサッカー日本代表はベスト8へ進めなかったのか?メンタル面からの考察。
この記事は、多くのアスリートをサポートしてきたメンタルトレーナーが心という視点から「なぜサッカー日本代表がベスト8に進めなかったのか?」の考察にチャレンジしています。
興味のある方は【第1回】からお読みください。
【第1回】なぜサッカー日本代表はベスト8へ進めなかったのか?メンタル面からの考察。はこちら
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スペイン戦
コスタリカ代表に負けて、勝ち点を取れなかった日本代表。試合後の選手達を観察すると精神的ダメージが大きい選手、そうでもない選手と差があるように見えました。
次のスペイン戦に向けて精神的ダメージは回復するのか?上手く切り替えることが出来るのか?ここに注目です。
とは言っても今回の日本代表メンバーはメンタルが強い選手が揃っているという印象を持っていたので、それほど心配していませんでした。
コスタリカ代表に負けましたが、勝ち点3を保有しておりまだ優位な位置にいることは変わらないので。
私の予想どおり、スペイン戦前の選手達の表情や身体を見る限りでは、コスタリカ戦で負った精神的ダメージは上手く手放せているように見えました。
森保監督が選手としっかり話し、メンタル面の軌道修正を行ったのかもしれません。
また勝つしかないというはっきりした目標が出来たことで、ドイツ戦の後半のように心が定まった可能性もあります。
目標がはっきりしていると、やるべき事が定まり集中力が自然と高まり、パフォーマンスが上がるのです。コスタリカ戦のように「負けても大丈夫」「引き分けでもいい」と中途半端だと、パフォーマンスは安定しません。
焦りや混乱もなく
試合の立ち上がり、日本の選手達は落ち着いているように見えました。
ゲームプランを最初から明確に決めていたことが関係していたのかもしれませんが、スペイン代表に先制された後も、焦りや混乱もなくきっちり集中していました。
逆にスペイン代表の方に焦りがあったように感じました。前半の途中で日本代表はプレスのやり方を変えたのですが、スペイン代表はそれに対しても焦りや混乱が見られ対応に時間がかかりました。
スペイン代表からすると日本代表が前半の途中で戦い方を変えてくることは想定外だったのかもしれません。
人は想定外の事が起きると、パニックに陥りメンタルが不安定になり、その結果、視野は狭くなり思考力や判断力が低下します。
サッカーに限らず、格上のチームと戦うときは相手をパニックに陥れる奇襲が有効です。今大会の日本代表は、奇襲が上手くハマりドイツやスペインを追い込む事に成功しました。
サッカーの技術やフィジカルといった違うところで戦ったのです。
スペイン代表はメンタルがボロボロ
前半は良いメンタル状態で終えたように感じました。ロッカールームに引き上げる選手たちの顔や身体にも自信がみなぎっていましたね。
そして後半の立ち上がりに続けて2点奪い、逆転に成功します。
改めて試合を見てもらうとわかるのですが、スペイン代表は逆転された後、明らかに大きなパニックに陥っています。選手達を立ち直らせないといけないルイス・エンリケ監督も同じように。
もし日本代表がこの後、ドイツ戦のような攻撃的なシステムに変更していれば、追加点をさらに奪ってここでスペイン代表の息の根を完全に止めることが出来た可能性がありました。
それほどスペイン代表の選手達は強いパニックに陥りメンタルがボロボロだったのです。
囚われが攻撃を単調にさせる
しかしそこはさすがのスペイン代表。10分ほどでメンタルを立ち直らせゲームを落ち着かせます。ヨーロッパの強豪国との試合やチャンピオンズリーグでの厳しい戦いでの経験がここで生きたのでしょうか?
ただそれでも日本の組織的で強固な守備を崩すことが出来ません。
次第に焦りが強くなり、スペイン代表の攻撃は単調になり、日本からしたらさらに守りやすくなったように感じました。
スペイン代表の攻撃が単調になったのは、焦りから生じる囚われが原因と考えられます。
ドイツ代表とコスタリカ代表の試合結果では、もしかするとスペイン代表はグループステージ敗退もありえるのです。焦りが生じるのも当然でしょう。
さきほどもお伝えしましたが、私たちは何かに囚われると視野が狭くなり、思考力や判断力が低下します。しかも自分で気づかないうちにです。
サッカーは思考力と判断力、視野の広さが強く求められるスポーツです。囚われはサッカーのパフォーマンスを大きく低下させます。
もしスペイン代表の選手たちが囚われることなく、最後までメンタルを安定させてプレーしていれば、もっと工夫した攻撃で日本の守備を突破していたかもしれません。
スペイン代表は若い選手が多いため、経験不足からこのような試合展開になった可能性もあるでしょう。
ドイツ戦の勝利に関しては、幸運がかなりの割合を占めましたが、この勝利は幸運ではありません。日本代表の戦術と最後まで切れなかった強い気持ちが勝利の要因です。
スペイン戦は「まぐれ」ではなく勝つべくして勝ったということです。
クロアチア戦
ベスト8を懸けた運命のクロアチア戦。
インタビューなどで選手の顔や声、身体を見る限りではいいメンタルの状態を保っているように感じました。完全に緩んでおらず、緊張もしていない状態です。
ある選手の顔からは怒りや不満が感じ取れました。その原因は起用法なのか?自身のプレーに納得いっていないのか?コンディション不良からくるものなのか?はわかりませんが。
入場直前の選手の数名から強い不安と緊張が感じ取れました。決勝トーナメントですから緊張するのも当然です。
緊張を悪いモノと捉える人もいますが、緊張したり不安になっても問題はありません。試合に入ると同時にそれらを手放してプレーに集中すればいいだけですから。
日本代表の選手は試合に入り数分で、緊張や不安を上手く手放せたように見えました。
決勝トーナメントからは一発勝負です。ここからはメンタルが強い方が勝ちます。ここで言うメンタルの強さとは根性や気合ではなく、囚われない力、メンタルのブレを修正する力のことです。
プレスが甘かったのはなぜ?
日本代表は前半の良い時間帯で先制します。今大会、一番良かった前半だったのでは?
前半終了後の選手達の顔にもそれが表れていました。この時点で日本代表の勝利を確信した人は少なくなかったでしょう。
しかし後半に入ると一転します。原因はわかりませんが、後半10分くらいから日本の選手達が急に弱気になったように感じました。
後半の最初にミスを繰り返したからなのか?
クロアチア代表の圧力が強くなったからなのか?
1点を守ろうという気持ちが強くなったのか?
日本代表の選手達の表情や身体から読み取れるメンタル面が前半とは明らかに違います。
そしてクロアチア代表が同点に追いつきます。
ピンポイントでのクロスと完璧に頭でミートさせる技術が優れていたのは間違いありませんが、日本の方にも原因がありました。
リプレイで何度も見ましたが、クロスを上げたクロアチア選手へのプレスが甘いのです。
この時プレスに行った選手は、判断と動きが遅く明らかに集中力が欠けたプレーでした。この選手は他の場面でも集中力が欠けることが目立ちました。理由はわかりませんが。
一瞬の迷いが判断と動きを重くさせる
プレスでは体力や敏捷性よりも判断力と集中力が大事になってきます。
「プレスに行ってもはがされるかも・・・」と一瞬でも頭によぎると迷いが生じ、身体が固くなりプレスに行く一歩目が遅くなるのです。またその動きが相手選手に読まれやすくもなります。
迷いがなく完全に集中している時はこうはなりません。プレスになりきっていますから。
クロアチア代表の選手は前半途中から動きが重く、コンディションが悪いように見えました。しかしそれでも誰一人、集中力を切らすことなくプレーに集中し、日本代表と互角以上の戦いを演じたのです。
恐らく前回大会で苦しみながらも決勝まで進んだ経験、そしてこの試合でやるべきことがはっきりしていたことなど要因となり、迷いや囚われを手放し集中できたのでしょう。
戦争を乗り越えた経験も関係していたのかもしれません。日本代表とクロアチア代表の差は、技術やフィジカルよりもメンタル面に強く表れていました。その差がPK戦での勝敗も分けることになります。
囚われると相手GKに読まれやすくなる
120分間、両チームの選手はとてもハードに頑張りました。この試合の結末をPK戦で決めるのは残酷とも言えます。
残念ながら日本代表はPK戦で敗れました。南野選手、三苫選手、キャプテンの吉田選手がPKを止められたのです。
私はリアルタイムでこの試合を見ていましたが、南野選手と三苫選手は蹴る前から100%外す(GKに止められる)とわかりました。
なぜなら彼らはそれまでに見たことがないくらい、強い囚われが顔に表れていたからです。その囚われは上半身の強い緊張も生み出します。
上半身の強い緊張はキック力の低下を生みます。また上半身と下半身がバラバラになり、相手からはぎこちなく見えるため「どこに蹴るか?」が非常に読まれやすい状態になるのです。
ここの解説は専門的になるので詳しくは省きますが、南野選手と三苫選手は顔と身体の状態から相手GKに完全に読まれていました。
画面越しで見ていた私ですらどっちに蹴るかわかったくらいですから。
クロアチアGKからすればどこに蹴るかは、手に取るようにわかったでしょう。シュートの威力も弱く、GKにパスしたような感じでしたね。
もちろんPKを決めることが出来なかった彼らを責めることは出来ません。彼らのメンタルが弱かったと言えばそうかもしれませんが、試合全体を見れば彼らだけの責任ではないのです。
それにしてもクロアチア代表のメンタルの強さは恐れ入ります。ブラジル代表もPK戦で破りました。勝負強さは世界一かもしれません。
日本代表がベスト8以上を狙うのであれば、クロアチア代表から多くを学ぶべきでしょう。
【第3回】なぜサッカー日本代表はベスト8へ進めなかったのか?メンタル面からの考察。へ続く。
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プロフィール
西山 純一
大阪マインドフルネス研究所
https://www.mindfulness-lab.com/
メンタルトレーナーとして多くのプロアスリートや経営者、アーティスト、医療従事者、教師や心理士、学生やビジネスマンなど幅広い人にマインドフルネスをベースとしたマインドの使い方やメンタルコントロール、食事改善や運動、ダイエットを指導。
指導歴は18年 1000人を優に超える人達に指導してきた。
20代前半でアメリカのパーソナルトレーナー資格を取得して、大手フィットネスクラブや関西のスポーツ強豪大学や高校でスポーツトレーナーとして活動。
同時期に大学で心理学の単位を取り、心理カウンセラーとしての訓練も受ける。専門僧堂や禅寺でも禅や瞑想を学び実践する。
プロアスリートや年商数十億円を超える経営者をクライアントに持ち、うつ病を始めとする精神疾患やガン患者、難病患者のカウンセリングやメンタルケアも行う。
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