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夏の夜 屋上飲み ピクニック 不安恐れず 楽しき夜を

「へえ、屋上に行けるんですか?」滝谷が先輩の滝畑に連れてこられたのは、大阪府の南東にある河内長野駅前である。駅前のショッピングビルの屋上は長い間閉鎖されていたが、昨年開放されてからは定期的にイベントで開放されている。

「おお、山が見渡せますね」驚く滝谷。「俺の実家近くだからいつも山を見ているから珍しくはないけど、この場所はいいと思う」イベントではナイトピクニックということで、いろいろなお店が販売をしている。ふたりはビールと肴になりそうなものを購入すると、さっそくベンチに腰掛けた。

「ビアガーデンのような混雑もなくていいですね」「だろう、だから連れてきたのさ。まあ大阪市内まで30分で帰れるから、今日はゆっくりしな」と滝畑先輩に言われた後輩の滝谷は少しリラックスした。

こうしてビールが数杯飲んだ頃、ようやく滝谷が悩みを滝畑にぶちまけた。「いよいよ来週なんです」「ああ、国家試験かシェービングの」滝谷はうなづく。
「カットとかは得意なんですが、シェービングがどうしても」滝谷はシェービングに自信がない。滝谷は子どもの頃に顔そりをミスされて耳の近くが切れて血が出たことがある。

それを滝畑に説明すると、「もう一杯飲んでからな」と言ってそのまま立ち上がり、ドリンクを買いに行く。「先輩はどうやってあの剃る実習をうまく」滝谷は悩んだ。技術的なものはわかっている。刃の角度や動かし方で毛以外皮膚を傷つけることなくシェービングできることを。だが本番を前に過去のトラウマが蘇り不安が増幅した。

「剃るべきか、剃らざるべきか。それが問題だ。だったら剃ろう!」大声で滝畑が戻ってきた。「え、剃ろうって」「大丈夫だ。恐れるなということ、一杯おごる。今日は忘れて来週全力を出せ」
 先輩にそう言われて不思議と元気が出た滝谷はドリンクを一気飲みし、短歌を口ずさんだ。

「夏の夜 屋上飲み ピクニック 不安恐れず 楽しき夜を」 
(なつのよる おくじょうのみ ピクニック ふあんおそれず たのしきよるを)

今回は趣向を変えて、青ブラ文学部の企画に参加して短編小説を書きました。

そしてテーマは本日投稿した記事「この夏はノバティながの屋上で夕涼み!ナイトピクニックの初回開催の様子をご紹介します。」をモチーフにしています。

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