稚児相撲 女子力の 片鱗を 親と祖父母に 期待背負われ
「女の子なのに本当に大丈夫かなあ?」夫が心配そうに私の実家でつぶやいた。正月でもないのに地元の秋祭りのために実家に来ている。
「孫娘を見せに来たら良いよ。秋には珍しい風習やってるし」と、私の両親に言われて、指定された当日山の中にある神社に足を運んだ。そこまでは良かった。だけど実家に戻ったらびっくりする。私の両親が勝手に、娘を秋祭りで行われる稚児相撲に出場させるという手続きを取ってしまっていたのだ。
「一応女の子なんですが」と、戸惑う夫に両親は笑いながら「まあ、相撲といってもただ目の前の同世代の子どもと睨めっこするだけだ。今年はなりてが不足しているからって、総代さんに頼まれたんじゃ」と事情を知らない夫を父が必死に説得する。
夫は苦笑いを浮かべながら「まあ、いいでしょう」と了承し、一家で神社に来た。山の中にある神社に私が来たのは2年ぶりだろうか?今年の正月は、子供ができてまだ日が浅かったから、実家には帰ったが大事をとって神社には来ていない。
最初は階段を上ったところにある神社拝殿に、人が集まって神事のようなことをしている。拝殿の上には階段があってそこに本殿があるらしい。娘の頭にはすでにハチマキがつけられていたが、娘はどうも私に似ているのか、初めての見知らぬ環境に全くものおじしない。
「絶対に女子力強くなるわ」親という立場を差し引いても、私は妙に娘に期待する。という私に女子力があるかと言われれば、うーんそれはよくわからない。「あれ気になるな」夫が神事をよそに二本立ち並んだ木を見ている。それは境内に立っている夫婦杉だ。
神事が終わりみんなが拝殿から出てきた。そのまま神社拝殿から下に用意されていた土俵に集まる。こうして順番に稚児相撲が始まった。やっていることは土俵の中にふたりの稚児を座らせて、どちらが先に泣くかといったようなものだ。
ほとんどの子どもは知らぬ環境、自分の親以外の多くの大人を前に、すぐにおびえてしまい泣いてしまう。
「さあ、この子の番だ」と言われいよいよ娘の番が来た。他の子と同様に土俵の中に立たせるが、相手の子はあっという間に泣き出して親の元に逃げ込み、あっけなく決着がつく。だが娘はまったく怯える様子もなく、周りを興味深そうに眺めている。
「あれ、まるで周りに見られていることを楽しんでいるようね」と私の母親が一言。「そうじゃ、あの子は大物じゃ将来が楽しみじゃ」と父が夫を見ながらつぶやくと。「そ、そうですね。で、でも女の子だけど」と小さく一言。
「やっぱりあの子には女子力があるわ」私は稚児相撲が終わってから、みんなで頂いたぜんざいを食べながら思った。
稚児相撲 女子力の 片鱗を 親と祖父母に 期待背負われ
(ちごすもう じょしりょくの へんりんを おやとそふぼに きたいせおわれ)
気が付いたら私は短歌を詠んでいた。本当は夫の趣味なんだけど。
今日は、こちら山根あきらさんの「私の思う女子力」という企画に参加しました。
こちらの本日の記事、「秋に稚児相撲を行う河内長野の川上神社」という内容を参考にしました。
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