冬午後に ツノに見えたし 東館 依り代の名も 幼子見ると
「はぁ?東館にツノがあるって何それ?」私は意外な情報に一瞬目を疑った。直後に笑いがこみ上げる。これは幼稚園から戻ってきた娘の一言だ。駅前にある集合住宅に引っ越して1月余りが経過した。私は夫と幼い娘の3人暮らしであり、先週から娘が通える幼稚園も見つかって一息ついた矢先のこと。少し寒くなってきた午後に駅へ娘を迎えに行ったら、娘が私の顔を見るなり「ヒ、ヒガシキャンにツノがある!」と言い出したのだ。
西館に住んでいる私は東館のことをあまり知らなかった。とはいえ東館が最も駅に近いためすぐ近くを通る。今日も東館の前を通ったけれど、住宅にツノが生えていたらすぐに気づく。おそらく娘はアンテナか何かと見間違えたとは思うが、東館にそんなものがある記憶が無い。
「あれ、ほら、つ、ツノ!」娘と東館近くに来た時に、娘が指をさしたのを見て私はようやく意味がわかった。「あああ、確かにツノみたいね」それは東館の前というより駅前広場にあるオブジェで、先が上に伸びえているからツノに見えなくはない。
「そうか、やっぱり子供はね」私は子供だからこそ気づいたのかなと思った。駅前のオブジェなど大人はいちいち気にしないだろう。だが何事も新鮮に映る子供にとっては、ツノに見えるオブジェにはインパクトがあった。それがたまたま東館の前にあるというだけで。
「へえ、意外に面白い形している。芸術家の先生のことはわからないけど」私は思わず娘が「ツノ」と称するオブジェを見る。オブジェには正式の名前があり、依り代と書いてあった。「よりしろか」私はタイトルに不思議な感情を持つ。だから趣味の短歌を口ずさんでみる。
冬午後に ツノに見えたし 東館 依り代の名も 幼子見ると
(ふゆごごに つのにみえたし ひがしかん よりしろのなも おさなごみると)
今回は、毎週ショートショートnoteの企画に参加して短編小説を書きました。(お題:ツノがある東館)
ちなみに今日はこちらの記事「富田林駅北口のオブジェ」をモチーフにしています。
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