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秋デート 陸橋見て 腋という 薔薇が視線に 時計をみつめ

「あ、あれ」彼女とのデートの最中で歩いていたが、突然大声を出して指を刺した。俺がそのほうを見るとそこにあるのは陸橋だが、確かに普段見る陸橋にしては形が違う。

「ずいぶん長くて大きな陸橋だ」俺は直感でそう思った。まるで大空に向かって大きな蛇がジャンプをしているように見えるのだ。「あれって腕みたいだ」と彼女は自分の腕を見比べている。確かに色は人の腕っぽくは見えなくはなかったが、と言ってもあれを腕と見るとは、彼女も独特な感性があると思った。

彼女は腕を動かしながら歩道の前に。この場所から歩道を上がって反対側にも行けるが、俺はその横にトンネルがあり、そちらのほうが近道だと思いそっちに行こうとした。だがどうも彼女は陸橋に上りたそうだ。
「遠回りだけどいいか」俺は腕時計を見ながら彼女の提案に従い、陸橋を選んだ。陸橋に足をかけた時彼女がおもむろに「このあたりは腋(えき)かな」と言い出した。
一瞬解らなかったが、わきの下らしい。「これがわきの下か」彼女につられて陸橋を見ていたら、突然視線に薔薇の花のようなものが見える。俺はびっくりして時計に視線を送った。このとき短歌が頭の中に浮かんだ。

秋デート 陸橋見て 腋という 薔薇が視線に 時計をみつめ
(あきでーと りっきょうみて えきという ばらがしせんに とけいをみつめ)

今回は趣向を変えて、毎週ショートショートnoteの企画に参加して短編小説を書きました。(お題:腋の薔薇時計)

今日はこちらの記事「野外アートのように見えたすばるホール近くの陸橋」をモチーフにしています。

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