未無月唯

VRChatに生息するたまに考えたまに思いたまに物書く言葉を操る魔法使い。かもしれない。

未無月唯

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    仮想世界の中での愛のようななにかを描き出す物語

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    VRCHATを題材にした恋愛とかの有象無象

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言葉の魔法にかけられたいんだ

詩や小説を趣味や生業としている、未無月唯(みなづきゆい)(旧名:降谷椎)と申します。 普段はVRChatやTwitter(今はXだけど)に生息しながら、詩や小説を書いています。 書いたものはnoteやVRCのワールド「言の葉堂」に置かせてもらっています。 たまにVRCで活動されている方のキャッチコピーやイベント名、文章推敲のお手伝いなどをしているのですが、そこで言われたのが「言葉の魔法にかけられたい」でした。 以前から発表した詩や小説に対して「自分の言いたかったことを言

    • VRD

      「死んでみたいんだよね」  彼は楽しそうに、そう言った。 「バーチャルでリアリティを感じられるなら、死を感じてみたいんだよ。だって現実だと死んだらそこで終わってあの世だとか地獄だとかから帰ってこれなくなっちゃうでしょ。でも仮想現実っていうフェイクの現実なら、そこで死んだって現実では生きてるわけだから、いわゆる臨死体験ができるってことでしょ? やりたいよね」 「やりたいかな……」  彼の言うことは正直よくわからなかった。つまり臨死体験がしたい、ということなのはわかったけど、そ

      • Dreamer

         カタカタとタイピング音が響く。家でも職場でもよく聞くこの音は、ASMRにしたいほど気に入っている。タイピングは文章を生み出す行為だ。それが良いことであれ悪いことであれ、自分の中に積もっている思いや感情を出力するツールとしては最適だ。ペンを持ってノートに書くのも悪くはないが、自分の悪筆が気になってしまうので良くない。こうしてパソコンに向かってキーボードを叩く。それが俺にとってある種の瞑想となっていた。  時計を見ると現在は夜の十時少し前。そろそろ持ち帰った仕事を切り上げてVR

        • #17 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

          「一週間でいいの。ね? お願い」  ノルのフレンドのニナさんは、俺に向かってそう言って手を合わせ首を傾げた。好きだから付き合って欲しい、と言われ、それはできない、と断ると、一週間だけお試しでいいから、と食い下がられた。 「――わかった」  ニナさんには悪いけど、自分から見た恋人という位置づけにいる人間を見て自分を知るいい機会だと思った。 「一週間だけ、なら」  承諾したときの彼女の涙声のありがとうは、俺には響かなかった。 『ねえ、私のこと好き?』『今日遅かったけどどこ行って

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          #16 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

           踏み出すのが、怖いから。 「私、アインさんのこと好きなんだよね」  今の状況に甘えて、何もしなくて。 「ノルちゃんはどうなの?」  でもそれじゃあだめなときはやってきて。 「まあノルちゃんがどうでも、私は告白するから」  恨まないでね、と笑ったフレンドを、やけに俯瞰して見ていた。  イベントで知り合ってたまに会うフレンドというのがいる。ニナさんという人だ。たまにアインさんがいるときにやってきて、本当にたまに話していた。だから、アインさんのこと好きなんだよね、と言われたとき

          #16 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

          #15 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

           久しぶりに心臓がドキドキわかるくらい脈打っている。胸に手を当てると振動しているのではないかと思うくらい。浅くなっていた呼吸に気づいてあたしは一旦呼吸を止め、ゆっくりと深呼吸をした。一度深呼吸した程度ではその息苦しさは解けないが、この息苦しさは今必要な気がして深呼吸をやめた。 「ナナさん」  普段のワールドとは別のワールドにナナさんを呼んだ。確認するためだ。ナナさんが、一体何を考えているのか。何を思っているのか。何を考え何を思って、あたしの傍にいてくれるのか。 「どうしたの、

          #15 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

          #14 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

           カトルがリュウさんと付き合い始めたらしい。らしい、というのははっきり聞いたわけではなくて、見るからに二人の距離感と雰囲気がそういったものに変わったから、おそらくそうだろう、という推測でしかないからだ。今までカトルからリュウさんに近づいて行っていたのが、最近はリュウさんからカトルのところへ近づいて行き、寄り添っている。そして頭を撫でたりなどのスキンシップが増え、かつそれにカトルが照れている。カトルがそんな初心な反応をするとは意外だったが、とはいえこの世界でカトルはかわいい女の

          #14 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

          #13 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

          「私だってリュウさんのこと好きだったのに!」  彼女の高い声がキンと響いた。 「気持ちは嬉しいです。それでも、すみません」 「なんで、だって、相手、男じゃない!」  彼女の声は湿っている。少し鼻声混じりになってきて、ヘッドセットを上げて拭う仕草をしている辺り、泣いているのだろう。 「そういうのは、俺は関係ないので」 「私の方が先に好きだったのに!」 「後先は関係ないでしょう」 「こんなに冷たい人だとは思わなかった!」 「俺は元々、冷たいですよ」 「――っ」  ガシャンと彼女の

          #13 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

          #12 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

           じめじめした季節が去ろうと湿度だけ残した空気の中日差しが強くなってきた頃。この季節になるとVRヘッドセットはつけると暑いから熱中症に気を付けた方がいいよ、とアドバイスを受けたが、まさにその通りだった。まだ初夏だというのに、頭が熱い。  今日は少し早めに仕事が終わったのでさっさと晩御飯と家事を済ませ、ひとりでバリスにインした。夏服、買ってもいいなぁ、と海のワールドでぼーっとしていると、後ろから声をかけられて、私はびくりと飛び上がってしまった。 「ノルちゃん」 「カトルさん」

          #12 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

          #11 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

           目を覚ます。まず感じたのは頭の重さ。あと妙に視界が暗い。ぼんやりとした頭は明らかに酔っているからだった。そこから考えて昨日(今朝?)寝落ちしたのだと推測され、ごそごそと起き上がりコントローラーを探した。その間に動きを検知しヘッドセットの視界が明るくなる。いつものワールドが映り、そして意外な人物が隣で寝ていた。 「……あれ」  リュウくんだ。VR睡眠など、たとえ酔っていようともしなさそうなリュウくんが、隣で寝ている。トラッカーの充電が切れたのだろう手足があらぬ方向に向いていて

          #11 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

          #10 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

           最近、少し前よりこのワールドの雰囲気が和やかだ。というのも、スリーが前ほどアインに固執しなくなったから、と見える。気持ち的にはアインのことを諦めたわけではないようだが、ナナちゃんというスリーにとってのイエスマンができたことが大きく影響しているのは確かだった。ナナちゃんはスリーのことを基本否定しない。少なくとも俺達の前では。ディーさんスリーちゃんのこと狙わないで下さいよ! と冗談めかして言ってきたが、多分あれは冗談ではなく本音だろう。別に狙う気など微塵もないので安心してくれ、

          #10 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

          #09 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

          「こんにちは! はじめまして! ナナっていいます!」 「ど、どうも……」  僕が挨拶をするとスリーちゃんは勢いに押された感じで控えめに挨拶を返してくれた。挨拶の仕方はもちろん人を選んでいる。静かな方がいいだろうと思うときは静かに挨拶をする。 「カトルさんから話聞いて会ってみたかったんだー最近中間テストだったんだって? おつかれさま!」 「あ、はい、ありがとう、ございます」  スリーちゃんの話をカトルさんから聞いてから会ってみたかったものの、スリーちゃんは高校生で中間テスト前だ

          #09 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

          #08 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

          「こんばんはー」  外界に降っている雨の音が微かに聴こえる閉じた雨音の中、ポーンという入室音と共に聞こえた声は、中性的な、男女どちらとも捉えられるくらいの音程が似合う、中性的なアバターの持ち主だった。 「ナナさん」 「こんばんは~」  カトルさんは俺の尻尾をもふもふしながら酔ったふにゃふにゃした声で挨拶をした。この様子を見て、ナナさんはおや、と首を傾げる。ピンク色のショートヘアが揺れ、緑色の瞳が光った。 「リュウさんがそんな距離近いなんて珍しい」 「酔っぱらってらっしゃるので

          #08 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

          #07 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

           季節も雨が多くなり梅雨前線が日本を東西に分ける頃、相も変わらず俺達はバーチャルの世界で、ずっと夜のワールドに集まってはとりとめのない話をする日々を過ごしていた。  そんな中ペンタにDMで空いている日を聞かれたので、金曜の夜から土日にかけてなら空いている、と答えると、じゃあ金曜の夜占うねん、と返信が来た。何を占われるのだろう。まあどうせ恋愛についてだろう。いや、恋愛を含むすべてについて、かもしれない。今自分が何に対して悩みを抱いているのか、何をどうすべきなのか、このバリスでの

          #07 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

          #06 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

           恋愛って、なんだろう。  ぼんやりと、私の頭を撫でてくれている大きな手を見ながら思った。  アインさんの男性アバターは安心する。自分より大きな人に抱擁されているようで。でもそれはきっと恋人に感じるべき感情なんだろう。だからこれは、あまり良くない行為なんじゃないか。他人の好きな人が私を好いているような罪悪感。実際きっとアインさんはモテるんじゃないだろうか。多分、スリーさんとか、アインさんのこと、好きなんだろう。  そこで何もせず、というよりどうしていいかわからず、そのままの状

          #06 #LLVR [a Like Love within a Virtual Realm]

          虚構現実

          じわり とインクが紙に滲む ぼやけた輪郭の文字を書く 人の声を模した電子音 私を連れ去ろうとする ぽつり ぽつりと雨が降る インクがどんどん滲んでく 混じり合って重なり合って 境が曖昧になっていく 私の器に溜まっていく 私の器に響く音 あなたの器に溜まっていく あなたの器で響く音 変換された振動は わたしたちふたり 溶かしてく どろりと尾を引く 泥の沼 仮想の世界に沈むほど 世界は希薄になっていく ただの錯覚 ふたりの間が近づくほど 世界は偽物になっていく ただの幻想