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『屋上のウインドノーツ』 額賀澪 作 #読書 #感想
給前志音は、《みんな》と繋がることができない。幼馴染みの何でもできる親友の影に隠れて、こそこそと生きてきた。しかし、独りぼっちで進学した高校の屋上で、志音は吹奏楽部の部長・日向寺大志と出会う。
「何かが変わるかもしれない」
そんな予感を胸に、志音は吹奏楽の世界へと飛び込む。一方の大志も、胸の奥に踏み越えられない《後悔》を抱えていた。踏み越えられない葛藤を抱えた2人の、コンクールへ向けた日々が始まる。
「ウインドノーツ」は「風の音」という意味だそうで。
吹奏楽部の青春小説。綺麗事だけが書かれているわけでもなく、目を背けたくなるようなことにも真剣に向き合おうとする人たちの姿が描かれている。
多分高校生の頃に読んでいたら、もっと素直に受け取れたんじゃないかな?と思うくらい、眩しすぎる青春小説だった。
額賀さんの吹奏楽に関する小説だったら、『風に恋う』の方が好みかな〜といったところだ。
何もできないと思っていた。何もできないくせに。ひと付き合いも苦手なくせに。自分に自信もないくせに。でも、本当はもっと———上手に生きたい。そんなの、どうしようもないんだと思っていた。
そんなふうに自分のことを思っていた、「変わりたい」と思っていた主人公と、過去をどこかで引きずったまま 同じ失敗を繰り返したくない….と臆病になっていた吹奏楽部部長との出会い。
2人がお互いに感化されて、笑ったり泣いたり怒ったりという感情を素直にぶつけ合っている様を見ると、あまりにキラキラしすぎていて少しだけ目を背けたくなった。
この小説で最も印象に残っている一文がこれである。
「人って、いっつもいっつも自分より弱い人を見つけて、その人を笑ったりいじめたり、助けてあげたりして、自分がその人より高いところにいるって確認して安心してるのかなって」
少し物悲しい一文だなと思ってしまうのだが、、、確かに悪い方に捉えると、この考え方は決して間違っていないな、、と思ってしまう。
この子は私がいないとダメなんだ….って思うような存在って、ある意味自分の承認欲求を満たしてくれるような存在だよね。
自分の良くない気持ちに支配されそうで、怖いなと感じてしまった。
吹奏楽部では金賞でも次の大会に行けない「ダメ金」と呼ばれるものがあって、他の部活とはまた違った厳しさや悔しさがあるんだろうなと想像する。
だって運動部よりも長時間練習しているイメージなんだもん。
人生を全部注いでもいいと思えるくらい頑張ることができる何かに出会えた2人は、たとえ結果がどうであれ 悔しいという気持ち含め価値ある時間を過ごせていた…..そんなふうに捉えて、これをそっと閉じたい。