妄想でイケパラな本屋さんを考えてみました【#本屋さん開店します】
↓本文はこちらから
私が店長を務める本屋「みくまゆbook」は、路地裏の片隅にひっそり佇んでいる。もし私に、もっとお金があったなら、銀座の一等地の場所を確保していただろうか。
いや、人が溢れる街でお店を出したところで、どうせ私のことだ。萎縮してしまい、経営が上手くいかなかったはず。
そもそもこの街は、私が生まれ育った場所だ。ここにはかつて、いくつもの本屋があった。残念ながら雑誌の休刊などが続いたり、Kindleによる電子書籍が流行したなどの背景から、本屋は次々と倒産してゆく。
幼い頃から、本屋に訪れて紙の匂いを嗅ぐのが好きだった。学校で嫌なことがあった日は、馴染みの本屋へ向かう。お店へ、一歩足を踏み入れる。焦げたインクの香りがすると、ああここに来たんだなぁと。私は安堵する。
本屋は私にとって、ふるさとみたいなものだ。頻繁に訪れていた場所=ふるさとがなくなるのは、実に寂しい。もしかしたら、私のような人が他にもいるかもしれない。
そう思った私は、この街で本屋を開店すると決めた。
◇
この本屋で、私はあくまでオーナーの身。私が店舗を訪れるのは、月に1〜2回あるかないか。本業はライター業と、育児である。この芯はブレてはいけない。あくまで本屋は副業なのさ。
そう思っていたはずなのに。本腰を入れ過ぎて、本屋の年商が1億円を突破してしまった。ふぅ、いけない。私の悪い癖である。
何事も一生懸命やり過ぎてしまうので、つい本気を出してしまった。売上が良すぎるあまり、今では月に半分ほどお店に立ち寄っている。
ヒットした理由を振り返る。本屋の中に、簡易型保育サービスを作ったのは大きいのかも。小さなお子さんがいる家では、子どもたちが店内を駆け回ったりするので、じっくり本を見ていられない。
そこでうちの本屋では、本を見ている間は「子供を預かる」という形で簡易型保育サービスを提供している。本屋なので、最新の絵本は全て揃えてある。
ミニスクリーンには、ちびっ子たちが大好きなしまじろう、アンパンマン。みくさんが好きな誠お兄さんこと福尾誠さんもスクリーンに映し出される。
↑NHKエンタープライズより
◇
うちの本屋の売上がアップした理由には、人気スタッフの存在も大きい。
「みくさん。俺さぁ〜。もう帰りたいんだけど、もういい?」
彼は、我がお店の看板スタッフ小西くんである。一見やる気がなさそうではあるが、よく見るとマメに手を動かす働き者だ。売上の1/4は、彼のお陰と言っても過言ではない。
「小西くん。いつも、接客ありがとう。あなたが来てくれたおかげで売上もどんどんアップしていったよ」
「へぇ〜。いっすね〜」
そう言って、彼はケラケラと笑う。給料アップ交渉や、福利厚生の充実など。もっと私に、訴えればいいのに。彼はそれをしない。ついつい私の方から、チップを与えてしまう。彼の脇、ポケットには私からのチップで溢れかえり、重そうだ。
小西くんがそこにいるだけでその場が照らされ、不思議と人が集まる。人徳というものだろうか。
普段は穏やかな彼だが、たまに意味深なことも話す。
「赤信号は、なぜあると思う?その止まった時間は、どこへいったの?」
「さあ。そんなことを聞かれても……」
「もしや、僕らが赤信号の時に使っていた時間は『時間鳥』に運ばれいるとか?」
彼の何気ない呟きに、私はふと足を止める。そういえば、赤信号の必要性なんてろくに考えたことがないや。
彼の話は一瞬なんの話かわからないが、よく考えると実に深い。それにしても、彼の質問にはその都度戸惑う。なんと返すのが正解なのか。
彼は、他にも自らの経験から得た知識を余すことなく教えてくれる。
「滑り台を滑る時は、お尻に気をつけて。挟まったりするから。俺、この前挟まっちゃってさぁ」
小西くんはその他にも、お客さんの質問にも全てそれっぽい回答をする。頭の回転が相当早いのだろうか。そんな彼目当てで訪れるファンも少なくない。彼を雇って正解だと、私は深く頷く。
「みくさん、バイトスタッフの時給計算しておきました」
会計係の彼は、メガネ姿の可愛らしい男性だ。彼の名前は、真威人くん。
↑家事の時給計算されてて、凄いなぁと思いました。
真威人くんは計算が得意なので、会計はほぼ彼に任せきり。奥さんが大好きなので、たまに惚気話を聞いている。
「本屋って、ここに訪れる人たち全員が笑顔で過ごすためにあるんだなぁと。ふと思うんです」
彼はそうポツリと呟き、天を仰ぐ。真威人くんはたまにいいことを言うので、彼から目が離せない。
◇
お店の奥には、サブスクタイプのジムがある。うちの本屋は、このジムとも提携を取り、新たなサービスを共同開発した上で、顧客へ提供を行っている。
サービスの内容は、このジムに設置されたマシーンを利用すると、体脂肪率などのデータを元にオススメの本が紹介されるというものである。
昨今では、健康志向の高い人たちが増えてきた。こちらのサービスは、体の健康維持を求める人たちに大変人気だ。
ジムはガラス張りになっており、本屋からジムで体を鍛える男たちを眺めることもできる。
「いーち!にー!さんー!」
威勢の良い掛け声がこだまする。キリッとした眉に、端正な顔立ちの男性が腹筋していた。男性は、風貌がどことなく俳優の伊藤英明に似ている。
↑フジテレビ公式チャンネルより
彼がここに通っている理由は、オーナーである私が街コンで逆ナンしたからこそ。一目惚れだったのだ。
↑私の逆ナンのくだりは、こちらの記事にて詳しく紹介しています。
男が腹筋をする隣には「兄さんー!かっこいいっすよぉぉ!俺もっ!俺も筋トレ頑張りマッス!!」と叫ぶ若い青年の姿も。
青年は小柄で、筋肉質。細く垂れた目が可愛い。どことなく、俳優の市原隼人さんに似た顔立ちをしている。彼も、オーナーが合コンで逆ナンしてきた若者だ。
↑ネットフリックス公式より
伊藤英明、市原隼人。よく見ると、2人とも顔の系統が少し似てるかも。オーナーの顔の好み、ご理解いただけただろうか?
イケメンのさらに奥には、すらりとした背丈の若者が一心不乱に腕立て伏せをしていた。
彼の名前は、日々木さん。年齢は20代半ばだろうか。彼はナンパではなく、note出会った。
あれは私が、note創作大賞に応募していた頃だっただろうか。彼が「感想書きます」と募集していたので、少しでも作品を読んで欲しい私は、すぐさま応募した。そこからの腐れ縁である。
彼はいつも、颯爽とバイクでこのお店へ訪れる。
↑日々木さんのYouTubeより
「若者よ。筋トレとか、色々がんばるんだよ」
↑色々頑張ってるらしい
腕立て伏せする彼を眺めながら、私はぼそりと呟く。
◇
さてさて。サブスクのジムも大盛況なので、次なるサービスをどうしようか検討中である。ケーキやカフェ、モーニングを楽しめる本屋もいいなぁ。新たな事業を考えている時は、ワクワクが止まらない。
創造は、新たな未来を築く。これからも、楽しむことを忘れずに本屋のオーナーとして頑張りたいものだ。
【完】
※こちらのお話は、すべて私の妄想です。メディアパルさん、思い切り遊んじゃってなんかすみません……。妄想、楽しかったです!