「続ける」とは… 1日10,000歩x365日間やってみました
長いこと、きっかけがつかめませんでした…。
こうした方がいいとわかっていても、実行せずに時間だけが経っていく…。
この時の私の場合、それは体を動かすこと、特に脚を動かすことでした。
時は、2020年、コロナ禍初年度の11月。
長年通ったホットヨガは、感染するのが心配で早々に解約していました。
ジョギングが好きでしたが、「走る時もマスクをしないといけない」空気の中、マスクをしたまま走るのが苦しくて楽しくなくなり、走らなくなっていたのです。
会社勤めもなく、ほとんどの用事はオンラインで解決。
出かけにくい雰囲気もあったため、外出の用事は買い物くらいになっていました。
運動不足…。
せめてウォーキングぐらいはした方がいいのだろうと、薄々勘づいてはいたものの、なんとなく後回しにしていたのです。
そんな私にチャンスが舞い降りました。
人間ドックで、血圧130。
「高めですね、そろそろ気をつけましょう。」
微妙な数値でした。
薬を飲むほど切羽詰まってはいませんでしたが、早めになんとかしたいとは思いました。
お医者さんからは、「体重が減れば血圧も下がる場合が多いので、昨年よりも1キロ増えた体重を、元に戻したらどうか」と言われました。
それに、ちょうど「脚を動かしたら血圧は下がる」という説を耳にしたばかり。
ウォーキングは、体重を減らすためにも良さそうですし、血圧を下げるためにも効果的なようでした。
これはきっと、「今こそ、歩きはじめる時」という、お告げなのだろう、と。
それだけは確信したのです。
さて、「脚を動かしたら血圧は下がる」という説によると、成人なら1日7,000歩以上が目安であり、それを続けることが大事だということでした。
歩くことはすぐにできるでしょう。
でもこれを「続ける」となると一気にハードルが上がります。
こうして私は、歩くことと真剣に向き合い、まずは、どうしたら「続ける」ことができるのか、模索することになったのです。
「続ける」を考えてみた
なかなか歩き始めることができなかったのは、ウォーキングは時間がかかるわりには、効果がわかりにくく、だんだん飽きてしまいそうだからです。
加えて、続けられなくなった時に、「やっぱり自分は中途半端な人間だ」と一気に自己肯定感が下がり、やる気がなくなっていく、というシナリオが頭の中に出来上がっていました。
誰でもできそうで、そうでもなさそうな、「ウォーキングを続けるということ」。
過去にジョギングを習慣化させた経験を土台として、続ける方法を考えてみました。
運動を「続ける」ためには、「強い目的もしくは切羽詰まった状況がある」か、「習慣化させる」か、「楽しめること」にしてしまえばいいのではないか。
でも今回はそれほど、「切羽詰まって」はいないですし「強い目的がある」とはいえません。
長年ウォーキングしている叔父に言わせると、「習慣化させる」には、通勤に取り入れるなど「日常生活に組み込む」必要があるということです。
私には出かける用事はなかったので、その線は無しとなります。
また、「楽しめること」にできれば、習慣化させることも可能ですが、何を楽しめるかは予想がつきません。
例えば、痩せるとか、血圧が下がるとか、なんらかの「いい結果」が出れば、楽しくなってくるのかもしれません。
でも歩くという日常的な動作では、ある程度、続けなければ結果は出ないでしょう。
というわけで「続ける」という振り出しに戻ってしまいました…。
これは、もう、考えていても進まない。
「まずはやってみるか」
何事も始めてみないと始まらないのですから。
試しに1日7,000歩
とはいえ、それまでの私の平均歩数は1日3,000歩くらいだったため、7,000歩は結構な運動となり、毎日行うことはできませんでした。
3日続けられたらいい方、という状況でした。
そんな歩き始めでしたが、「7,000歩にはだいたい1時間かかる」ことや、「家から7,000歩で行ける場所はどの辺りか」など、発見がありました。
また、続けていく程、いいことも起こりました。
歩くための1時間を確保するため、家事等を行う時間の使い方が上手くなっていったのです。
そして、何となく気分が乗らない日でも、外に出て歩いていると、だんだん気分が明るくなり、夜はよく眠れるようになりました。
ウォーキングの脳内における主な効果として、「幸せホルモン」であるセロトニンの分泌があるそうですが、きっとそれを体感できたということなのでしょう。
歩いたことで、良いことはあっても、悪いことは何も起こりませんでした。
そして、変化が訪れました。
それは、1日5,000歩くらいしか歩けなかった日は物足りなく感じるようになり、7,000歩できた日は達成感を感じるようになったことです。
達成感をたよりに
似たような達成感は、他のことでも感じることがありました。
それはゲームです。
隙間時間に、ついついやってしまう、スマホでできるゲーム。
時間の無駄だとわかっていても、なぜかやってみたくなってしまう。
それはたぶん、ゲームにクリアした時に感じる達成感が心地いいからではないか、と自己分析しています。
ゲームにクリアした時と、1日7,000歩目標を達成できた時とは、感じる満足感、高揚感は違うのですが、本質は似たようなものなのかもしれません。
こんなことを考えるようになった頃には、日々1時間を捻出することが、それほど難しく感じなくなっていました。
そして1日7,000歩が可能なら、1日10,000歩も行けるのではないかと思い始めたのです。
なんとなく10,000歩の方がキリがいいから、という、ただそれだけの理由です。
試しに、何度か歩いてみたところ、10,000歩はだいたい1時間半かかりました。
7,000歩の時とは30分の差です。
目標設定を1日10,000歩にするか?
少しきつそうだが、出来なくはない。
これもゲームとして考えれば、ハードルが上がった方が、クリアし甲斐があるというものです。
それに、ゲームであるならば、仮に続けられなくても、「まあ、単なるゲームだから」と割り切れそうです。
時は2020年の年末になっていました。
ちょうどいい機会でした。
元旦から1年間はやってみようではないか。
こうして私は、1日10,000歩ゲームを開始したのでした。
2021年元日、ウォーキングスタート
🚶♀️ルール
ゲームのルールはシンプルでした。
iPhoneのヘルスケアアプリで測る歩数が、1日10,000歩達成すればクリアであり、それを毎日、1年間行うことです。
ところが、ことはそう簡単ではありませんでした。
1月2日、おなかを壊してダウンし、歩くことができなかったのです。
いきなり2日目にして、ゲーム終了か?
でもちょっと待て。
脚にも休日が必要ではないか?
だから1ヶ月のうち1日は休足日を作るというルールにすれば良くないか?
いきなりのルール変更でしたが、「まあ、単なるゲームだから」よしと考えました。
🚶♀️主な攻略ポイント
このゲームを進めるにあたり、最も大きなポイントは時間をどう作るかです。
たかだか1時間半、されど貴重な1時間半でもあります。
一気に1時間半歩いた方が、効率がいいです。
でも難しい日もありますし、連続した10,000歩である必要もないと考えました。
だから、その日の予定や気分に合わせて、時間も、どれくらいずつ歩くかも自由。
忙しくなりそうな日は、朝のうちに軽く30分程歩き、午後に用事が済んでから1時間歩くなど…。
そして、一番大切なポイントは装備です。
健康や運動が目的なのに、体を痛めてしまっては本末転倒です。
だから靴は一番大事な武装ではないかと思います。
自分の足に合ったウォーキング用のシューズで、姿勢正しく歩く、これだけは忘れてはいけない基本です。
私の場合はジョギング用のスニーカーと、日常的に履いていたスニーカーが2足ありましたので、特別に買わなければならないものはありませんでした。
だからゲームを無料で始めることができたのでした。
🚶♀️アイテム
服も大事な装備です。
私の場合は、ジョギングウェアがありましたので、こちらも特に購入するものはありませんでした。
とはいえ、ウォーキング用のウェアって必要なのでしょうか?
例えば、朝、起きてすぐに歩きに行きたい気分の時、日差しの様子、鳥の声、人の往来の程度も刻々と変化してしまうので、身支度はたいして整えずに、勢いで家を出てしまった方が、新鮮で、気持ちのいい歩きができる場合があるのです。
そんな時、私の場合は部屋着でGOです。
コートを羽織って、マスクをすれば、何の問題もありません。
もちろん、お気に入りのスニーカーに合うワンピースで歩きに行くこともあります。
どこまで細かいことを気にするか、何をどう楽しむかも自分次第だと思っています。
だから、服は何でもあり。
玄関あけたらウォーキング、これだけです。
🚶♀️フィールド
ネットの質問サイトで「ウォーキングはどこを歩けばいいのかわからない」という声を見かけました。
「玄関あけたら、全て」と回答したくなりました。
私の場合、街中を、最寄駅から二駅先あたりまで行って帰ってくるとか、公園まで行くとか、電車に乗って行くような用事がある時は、早めに行ってその周辺を歩いたり、など。
繁華街も(この頃は自粛モードもあり、人が少なめだったからですが)散策するのは楽しいです。
なるべく、信号を気にせずに歩くことができて、広々としたところが理想的、と思っています。
でも実は家の中もフィールドです。
廊下を歩くなど、一定の歩く行為があればヘルスケアアプリも1歩としてカウントしてくれます。
といっても、(家の広さにもよりますが、)家の中で歩いたところで、大した歩数にはならないですが…。
私の場合、歩数が少し足りない、という時は、廊下を行ったり来たりするような家事をやります。
すると、不思議と作業がはかどるので、一石二鳥なのです。
夫からは「それってウォーキング?邪道じゃない?」とつっこまれています。
「まあ、単なるゲームだから」邪道で結構です。
🚶♀️障害
大きな障害は天気でした。
ウォーキングをスタートさせたのは寒い時期でしたので、気温、雨、雪に対応する必要がありました。
気温については、防寒対策さえすれば、歩いているうちに体が温まるので、困ることはさほどありませんでした。
そして、小雨程度なら、逆に、公園を歩きに行きます。
もちろん、傘をささなくてはなりませんし、滑らないように靴に気を付ける必要が出てきますが、雨の日に歩く人はあまりいないので、公園を独り占めできて、気分がいいのです。
誰もいない公園で謎の鳴き声を耳にしたので調べたところ、特定外来生物のウシガエルだと判明した事があります。
地面の底から地上に響き渡るような声なので、びっくりしました。
そんな発見もあったりして、面白いものです。
問題は歩けないほどの雨や雪の日です。
そんな時はショッピングモールに行き、その中をくまなく歩きます。
大きめのところであれば、各階をまわり、行き帰りも含めると、1時間半のウォーキングになります。
ついでに、お店をのぞいたり、買い物もできるので、別の楽しさもあるのです。
雨や雪でも、歩く気があれば、歩けるのでした。
🚶♀️6ヶ月目の振り返り
1日10,000歩を毎日(月一回は休息日)というゲームは、半年間達成できました。
クリアする度に感じる達成感は、日を追うごとに倍増していくようでした。
これまでできなかったことが、できないだろうと思い躊躇していたことが、こんなに長く続けられている、ということで、毎日一度は満足感を感じる瞬間があったのです。
また、様々な情報も入ってくるようになり、ウォーキングに詳しくなりました。
1日10,000歩は歩き過ぎ説、歩幅も広い方がいい説、速く歩いた方が効果的説など。
それらを取り入れてブラッシュアップさせていく、という考えもありましたが、自分の身体もこの「1日10,000歩」を楽しんでいるようでしたので、ブレることなく進めることにしたのです。
とはいえ、この先、風邪をひいたり、少し具合の悪い日だってあるかもしれません。
そうなると、休息日が1日だけというのもキツくなってくるでしょう。
そんな不安を感じ始めた時、ふと、ヘルスケアアプリを眺めていると、1ヶ月ごとの平均歩数の表示がありました。
この半年間は各月とも平均歩数も1日10,000歩を超えています。
そこで、月1日だけ休息日を作る、という考えをやめて、1ヶ月ごとにみて、1日平均10,000歩達成できていればいいのではないか、と考えるようになりました。
ルール変更。
例えば、1日3,000歩くらいの日が何日かあってもよく、15,000歩、20,000歩の日があってもいい。
1ヶ月ごとにみて1日平均10,000歩になればいい。
総合歩数はあまり変わらないですが、時間配分の自由度は上がります。
この変更によって、一気に、ゲームが進めやすくなりました。
🚶♀️最大の難関
ほぼ全てが順調にきた半年間でしたが、実は5月の半ばぐらいから、少しだけ異変を感じ始めていました。
歩き慣れてきて身体的にも余裕だったはずが、疲れやすくなったのです。
おそらく原因は、湿気でした。
気温も湿度もそれほど高くなかったとはいえ、何となくジメジメするという違和感を感じ始めたので、季節の変化を体調が教えてくれたようでした。
もうすぐ梅雨の時期も近づいてきます。
連日雨が降る、という可能性も高くなってきます。
毎日ショッピングモールを渡り歩くというのも、あまりワクワクしません。
また、どんどん気温も上がり、次には猛暑がやってきます。
きっと外をウォーキングするなんて無理でしょう。
長年ウォーキングしている叔父に聞くと、夏の間だけはお休みするそうです。
それは妥当な判断だと思いました。
ここで頑張る必要はないのです。
梅雨、猛暑という不可抗力によるものですから、「休むのもありではないか」と思い始めました。
「まあ、単なるゲームだから」ね…
🚶♀️リタイアするか?
数日間、悩みながら歩きました。
休むか?
ゲームだし。
でも、もし3、4ヶ月も休んだら、せっかく慣れてきた身体も気持ちもリセットされてしまいそうです。
それに、もともとは体重や血圧がきっかけで始めたことでしたが、頭の中は毎日「このゲームをどうクリアしていくか」であり、それが楽しみになってしまったのです。
今クリアすべき問題は明確。
要は、雨、湿度にも、猛暑でも関係なく、いつでも室内で歩けるフィールドを見つけるということです。
ありました。
ジムです。
でもお金がかかります。
お金をかける発想はありませんでした。
これはやめよう。
でも、他に方法はなさそう…。
探してみたところ、家から歩いて5分以内の場所に、こじんまりとした、とてもお得な24時間ジムを発見しました。
この難関を突破できる!
やはりゲームは課金をしないと進められないのでしょう。
歩く行為は無料であり、それが「いいこと」のように思っていましたが、状況によっては、課金も正義であります。
というわけで、2021年7月、ジムに入会です。
冷房の効いた中でランニングマシンで歩く、という方法を手に入れました。
長年ウォーキングをしている叔父は、無言で「それって邪道じゃない?」という顔をしましたが、「単なるゲームですから」邪道で結構です。
🚶♀️クリア間近
さて、問題を一つ一つ解決していったので、その後障害になるものは特に見つかりませんでした。
そして、あっという間に、目標としていたゴールが迫ってきた年末。
1年ぶりに人間ドックに行きました。
その結果、体重は1キロ減。
でも血圧はさほど変わらず。
これが現実です。
血圧は、運動だけでは解決できないので、もう少し方法を見直す必要が出てきました。
あまり大した結果がでませんでしたが、「身体にいいことをしている」という信頼があったため、落ち込むことはありませんでした。
それに、歩き続けることが生活の一部になっていたので、特に大きな変化も期待してはいなかったのです。
それは、それ。
と考える余裕がありました。
🚶♀️思わぬ賞品獲得
ところが、お医者さんから、「この1年で何か変わったことをやりましたか?」と聞かれたのです。
人間ドックでは、オプションで内臓脂肪CT検査が受けられます。
これはメタボリスクの程度を調べるもので、へそまわりの腹部の輪切り画像を撮影し、内臓脂肪面積を算出するのです。
男女とも内臓脂肪面積が100㎠以上だとメタボと診断されます。
念の為に受けているのですが、1年前の検査では31.3㎠でした。
私は体重は気をつけてきた方ですし、メタボリスクの観点からは、1年前から「低い方」でした。
だからこそ、これ以上減らすことも簡単ではないとのことでした。
それが、この時の検査では16.7㎠だったのです。
体型も特に変化は感じていなかったので、想定外でした。
「何やったら、こんなに減るの?」
考えられるのはウォーキング以外にはありませんでした。
そして、先生から忘れられない一言をいただいたのです。
「この数値はアスリートの結果でしか、見たことないよ。」
えっ!
内臓脂肪面積がアスリート…
嬉し〜い。
内臓脂肪面積がアスリート…
脳内でこだまが…。
内臓脂肪面積がアスリート…
自己肯定感が上昇する音が聞こえました。
体重はかろうじて減り、血圧は下がらなかったとはいえ、内臓脂肪は減ったのです。
しかもアスリート並みです。
そして私は確信したのでした。
勝った!(何に?)
歩き、辿り着いたその先へ
2021年12月31日、私は1日平均10,000歩を1年間行うというゲームをクリアしました。
内臓脂肪が減ったことは嬉しい出来事でしたが、このゲームは、もはや日常生活に組み込まれてしまっていたので、クリアしたことについては淡々と受け止めていました。
さて、ここで終わっても良いのです。
だんだんと、マスクなしでのジョギングも大丈夫な雰囲気になってきましたし、脚を動かす方法は他にもありそうです。
でも、ここで終わらせる理由もないのです。
生活スタイルの変化や、体力の変化により、この先も同じようには続けられないかもしれません。
その時はまた、状況に応じてルールを変更していけば良いだけの話です。
こうして私は、ゲームを続行して、次のステージへと向かったのでした。
2年半経った現在でも、ルール変更もなく、進行中であります。
追記:公式マガジン「つくってみた・やってみた(総合)」に選ばれ、コングラボードもいただきました!
お読みくださった皆様、ありがとうございました😊
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