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エッセイ/ 雑記

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星粒のような日(01.19)

星粒のような日(01.19)

いくつかの日が、星座のように繋がっていく気がした。

はじめて詩を書いた日、その詩を好きだと言ってくれるひとに出会った日、10年経ってもその詩を覚えていてくれたと知った日。

出会ったばかりの人に、「書いて生きていきたい」と言ったら、「柚佳ちゃんがスタート地点に立てば、すべて始まるよ」と言われた。その言葉を聞いて、本当にそうかもしれないと思えた日。

昨年出した『すくいあげる日』という本に、1編だ

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本物はあなた わたしも本物

本物はあなた わたしも本物

2025年、どう生きていこう。そんなことを考えているとき、星野源さんが紅白で『ばらばら』を歌いはじめた。わたしは急いでテレビの前へ行き、膝を抱え、そのステージを見つめた。

表情、ギターの音、声、佇まい、静寂。吸い込まれるような時間だった。だれにもふれることができない歌を、いま聴いているのだと思った。

源さんは「本物はあなた わたしは偽物」の歌詞を変えて歌った。

わたしも本物。

それを聴いた

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32歳のはじまりに | 達観しない

32歳のはじまりに | 達観しない

時間は戻らなくて、人生はままならない。そのことを、長い時間をかけて咀嚼している。いつか、「人生はままならないから面白い」と言える粋なひとになりたい。でもいつまでも、かなしいことに素直に涙を流せる可愛いひとでいたいと思う。

11月27日、32歳になった。

12歳のときは「こどものままでいたい」と願った。22歳のときは「若いままでいたい」と願った。そして32歳になって、もう「歳をとりたくない」とは

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 雑記 | はじめてのパリは

雑記 | はじめてのパリは

生まれて初めてのパリ旅行は、カネコアヤノの『タオルケットは穏やかな』を聴きながら、ぶ厚い曇り空の下を歩くこと以外には、なにも出来なかった。

4月のパリは寒くて天気が悪くて、カネコアヤノの泣くような、祈るような歌声がよく似合った。

このアルバムを聴きながら、どれだけの距離を歩いたのだろう。

色々なことが混沌としていた時期だった。なんでも記録したがるわたしなのに、その頃はなにも書けなかった。心が

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蹴伸びする師走

蹴伸びする師走

師走は「待ったなし」の旗を振りながらやって来て、よーいどんのホイッスルを鳴らす。その音が聞こえたら、とにかく走り出さなきゃいけない。ゴールは年末で、仕事納めとか来年の抱負とか、色んなことを考えながらひた走る。

でも不思議なことに、今年は年末に向けて猛ダッシュというより、新年へ、思いきり蹴伸びをするような気持ちだ。まだ12月なのに、もう気持ちが前のめりになっている。

それに、今年は心の断捨離もす

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雑記 | 台北パラレルワールド

雑記 | 台北パラレルワールド

1週間近く、台湾に行っていた。帰ってきて1週間、ずっと飛行機に乗ってるみたいに、どこにも所在してないような、時間がなくなってしまったような、ふわふわした気持ちで過ごしている。

台湾にいるときも、なんだかふわふわしていた。夢の中を歩いているみたいな時間だった。

旅のことは別のかたちで出す予定なのだけど、ひとつだけ、昨日みた夢の話くらい、ふんわりした話を。

台南から台北に移動した夜、ふらりと入っ

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雑記 | 世界に置いておきたい

雑記 | 世界に置いておきたい

昨日、会社の飲み会で、はじめて話したひとに「noteを書いています」と話したら「聞いてもいいですか」「自分は発信をしないのですが」と、ふたつの前置きがあってから「発信するときは、どういう気持ちで、誰に向けて発信しているんですか?」と聞いてくれた。

その質問がとてもまっすぐだったから、わたしもまっすぐ答えたいと思って、言葉を選びながら、こう伝えた。

「発信したいわけではなくて、置いておきたい、と

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雑記 | 秋の忘備録

雑記 | 秋の忘備録

いちばん好きな季節を、残しておかないと。

先週、はじめて金木犀の香りがした。連休は新宿御苑でピクニックをしたり、帰りに伊勢丹でオレンジワインを買っておうち晩酌をしたり、別の日に美味しいタコスを食べに行ったりした。

10月のはじめ、姉と岩手へ行った。津波で更地になった場所に、あたらしい町が出来ていた。記憶が遠くなる前に、早く旅の記録を書きたい。

パリや台湾のことも書きたい。早くしないと、どんど

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生かされてる、とかではなくて

生かされてる、とかではなくて

そのとき私は六本木のDEAN & DELUCAにいて、韓国の詩人ハン・ジョンウォンのエッセイ『詩と散策』を開いていた。

その本を読み進めることは、静かな冬の森を歩くことに似ていた。つめたくて澄んだ空気と、穏やかな水辺の気配が、ページの余白に漂っていた。

だけど同時に、その森の奥深くで何かがごうごうと燃えている気配を感じていた。真っ白な積雪の下に、怒りや憤りに似た強い感情が潜んでいる気がした。

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甘い予感はいつだって

甘い予感はいつだって

雨の日曜、鎌倉のカフェでこれを書いている。

30歳が雨の日曜で終わって、31歳が満月の月曜で始まっていくのは、幸先がよい気がして嬉しい。この気持ちは「幸先が良い」で合っているのだろうか、と気になり調べてみたら、ちゃんと今の気持ちだった。

実際のところ、来年の私は本厄らしい。さらに言えば、私の星周り的には「大殺界」という時期らしい。本厄の大殺界。強そう。でも私にとっては「満月の誕生日」の方がパワ

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長い昼寝のあとで

長い昼寝のあとで

気温が25度を超えた11月の夏日、とろりとした眠気に襲われた。

定時で退勤し、猫のようにシーツに潜り込む。頰にあたるタオルケットの冷たさと、頬からゆっくりマットレスに沈み込んでいくような感覚。なんだろうこの懐かしさ、と思いながら眠りに落ちた。

深夜、目を覚ますと額にはじんわり汗をかいていて、喉がカラカラだった。氷を入れた水をごくごく飲んでいたら、さっき感じた懐かしさの正体は、
幼い頃の夏の記憶

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借金返済計画のエクセルに込められた、愛と未来。(2019年 she is公募掲載記事)

借金返済計画のエクセルに込められた、愛と未来。(2019年 she is公募掲載記事)

タイトルとカバー画像は2019年の6月に「She is」というメディアに掲載していただいた私の書いた記事。もうShe isは運営終了し、私の記事は私の事情で削除申請をして消していただいたので見れなくなっている。(この記事の後半でコピペを貼ってます)

それは当時の恋人について書いた記事で、その人とは結局別れてしまった。でもこの記事はぜひ残していてねと言われた。私の大事な作品だからと。

それからだ

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私たちは流氷みたいな時間のかけらに乗っている

私たちは流氷みたいな時間のかけらに乗っている

今思えば、別れは水面下でしっかりと忍び寄っていた。グレーな日々に無自覚だったから、白や黒として認識出来たときに「晴天の霹靂」と感じただけだ。人間関係は、ある日全部がよくなることも、ある日全部が悪くなることもないのだなと思う。見えなくても気づかなくても、何もかもが常に変化している。

私の心が元気になるまでも同じだった。ある日すっかり元気になりました、なんてことはなかった。調子の良い日と大丈夫じゃな

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日常を綴ることが

日常を綴ることが

愛しい記憶たちを縫い合わせて、大きな毛布をつくりたい。未来の私が悲しい気持ちになったとき、その毛布にくるまって眠れるように。

星野源さんが1月2日のオールナイトニッポンを収録放送から急遽生放送に切り替えていた。不安な気持ちでいる人たちが、少しだけでもひとりじゃない気持ちになれますようにと。生放送では超個人的でくだらないメッセージがいくつも紹介されていて、源さんは「こんなの読ませないでよ、くだらな

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